ファイティング・スィーパーズ! 七話
怒りに任せて経営者側に乗り込むミコとリュート。
ところでサエぽんはどこに居る?
ダヒテの塔に隣接するオーナーの所有のビルには、経営者側に接触しているサエが居る筈だった。
俺達に専務の企みを阻止させたダヒテというオーナーの意志を追及する必要があった。
もしも、オーナーが専務が社員を魔物に変えたのを知っていて駆逐させようとしていたのなら、黙っている訳にはいかないだろう?
少なくとも6人ほどの人間を消しちまったんだからな。
人的保証もさることながら、こっちにもそれなりの慰謝料ってもんを貰わないとな。
狐モドキ状態に戻っている俺は、怒りに燃えるミコの後からオーナーの執務室に向かったんだ。
「おい、ミコ?!サエの姿が見えないけど?」
先に来ているサエの事を訊いたんだ。
「専務の方にかかりっきりなんだろうか?」
事件の発端が専務にあると見切ったんだろうか、あのサエが?
「そうとばかりは言えないよ。
この件はまだサエぽんには教えていないし、実際専務だけに責任があるとも限らないんだから」
ミコは振り向きもせずにオーナー室に足を運び続ける。
「僕達だってそうじゃないか。
本当に専務だけが命じたのか・・・オーナーも一枚噛んでいるかも知れないんだよ?」
確かに、専務個人だけの発案なのかははっきりしていない。
「人間を魔物に変えて囲締めするなんて、並みの人間が思いつくとは思えない。
もしかしたらオーナーが専務に命じたのかもしれないよ?」
実際に知らねばならない・・・ミコは真実を追求してから処分を考えるというんだ。
「まぁ、どっちにしたってぶっ飛ばす事には変りがないんだけどね」
・・・やっぱりか?!ミコらしいと言えばそれまでだけどね。
モフモフの尻尾を振って、俺は同意を表したんだ。
「でも、その前に。法外な慰謝料を請求してやろうって思うんだ。
会社を辞めるリンさん達が、当分の生活に困らない程の金額をね」
なんと?!ミコは自分が受け取らずに、皆に配ると言うのか?
「どうせ、こんなブラック企業なんて粛清しなきゃいけないんだから。
ふんだくったって内部留保から差し出せば良いんだろうからさ」
・・・あるの?内部留保?
「もし内部留保がないのなら、オーナーから搾り取ってやるだけだよ」
・・・なるほど。
一方的に息巻くミコが、ドアの前に佇んでいるサエを観て立ち止まる。
俺達を観て赤毛を掻き揚げる仕草は、間違いなく・・・・
「ほーっほっほっ!やって来たわねミコ。ここから先は通さないわよ!」
指を突きつけるサエぽん。
「ダヒテからの依頼を受けて、この<ピンクの豹>サエが通さないから!」
懐柔されてやんの・・・・
「良いことミコ!ここから大人しく立ち退かないと・・・」
足元に居るピンクの猫が居辛そうに明後日の方を見上げているのとは対照的に、サエぽんは俺達に最後通牒を突きつけ・・・
「リュート・・・どうする?」
「決まってるだろ・・・排除」
間髪入れずに答えてやったよ。
「立ち退かないと・・・どうするんだよサエぽん?」
ミコが上目使いにサエぽんを睨んだ。
「にぃっ?!にゃははははっ、何をそんなに怖い顔をするのよぉミコぉ?」
・・・お前から言って来たんだろーに?
「お生憎様、今の僕は怒りモードなんだよね。
サエぽんの冗談に付き合う余裕なんて無い・・・自制心がなくなってるんだよ」
「にゃぁっ?!マジ?」
ミコにではなく、俺に訊いて来やがるから答える代わりに頷いてやった。
「あ・・・あはは・・・冗談よぉミコぉ?」
今更怖気付いたのか?
「いくらで買収しようとしやがったんだ?
ダヒテか?それとも専務か?どっちなんだよ?」
苦笑いを浮かべるサエが、両手の指を立てて答えるのは。
「どっちもー」
・・・そうですかい。
「リュート、先ずは後門の虎を排除しておこうか」
ずぃっと前に進むミコに併せて俺は白竜の力を顕す。
鋼の機械と化した俺が、サエに飛びかかる真似をすると。
「いにゃぁ?!冗談だって言ったじゃないのぉ?!」
怯えたサエぽんが頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「ほぉ~ぉ?冗談・・・だったのぉ~?」
座り込んだサエぽんに、ミコが冷めた声で訊くと。
「そぅよぉ~っ!全て敵を欺く為なんだからぁ」
・・・嘘つけ。
「で?おいくらだったのかな、阻止するように依頼された額は?」
「成功報酬で2000ゴールド。前金で4000よぉ!」
ふむ・・・悪い額じゃないな。併せて6000ゴールドか。
「前金・・・貰ったんだ?じゃぁ、本気でぶっ飛ばしても文句ないよね?」
「ひぃっ?!返すからぁ、許してぷりぃーずぅ!」
サエぽんの良い処は、馬鹿が点く位の正直さだけか?
それとも、本気でミコが怖かったのか?
「返さなくったっていいよ。
その代わり前金は半分この・・・山分けだからね」
・・・アクドイな、ミコも。
「ひゃあぁっ?!半分?せめて3対1・・・」
・・・じとぉ
俺とミコの眼が、それを赦す訳がない。
「・・・良いです、半分こで」
これで最低限の稼ぎが保証された!今回はタダ働きにはならずに済みそうだ。
内心、俺はミコがせしめた金を全部社員に配るんじゃないかと思っていたんだ。
だから、サエからせしめる2000ゴールドを捕らぬ狸の皮算用したんだ。
「ふっ!それならば。最低保証を受けたに等しい。
これからどうなってもタダ働きは回避できたな!」
・・・そう言うミコも、心の中では皮算用していやがったみたいだ。
唯、サエの奴が顔を引きつらせているのが気がかりだったけど。
「それじゃあ、二人がかりで乗り込むぞ!
専務もダヒテオーナーも、唯じゃあ済ませたりしないんだからな」
「そ、そうよぉ!ミコ。アイツ等から出来るだけ多く巻き上げるんだから!」
顔を引き攣らせたサエの事が、少々(おおきく)気にはなったんだが?
ドアを吹き飛ばすくらいの勢いで開いた。
「どう言う事なのか詳しく話して貰いましょうか?!」
いきなりミコが言い放ちやがった。
「人間を魔物にしてまで囲締めした理由と、僕達に始末させようとした訳を!」
そう。
例え会社の為だとは言え、許される訳もない。
「・・・って?!あれ?」
気負い付いていたミコも、俺達も。
「なんだよ?なぜ喧嘩してるんだよ?」
ダヒテと専務が掴み合いの喧嘩をしているのに目を丸くする。
「専務の分際で儂をないがしろにしおるからじゃ!」
「何を言うか!お前が散在するからだろ!」
銀髪のおっさん二人が殴り合いをしていますが?
「・・・サエぽん?どっちがオーナーで専務なの?」
戸惑うミコが、同じ顔をしたおっさんを観て訊いた。
「えっとぉ、青い服がダヒテ兄でぇ。黒服が専務・・・だったかな?」
思い出すような仕草をしたサエがそう言うと。
「違う!ワシがダヒテじゃ」
黒服のおっさんが言い返しやがった。
「私が次期社長兼オーナーのダヒテだ!」
青服のおっさんが自己紹介しやがる。
つまり・・・なんだ。
「もしかして?二人は兄弟?」
「もしかして?二人で経営してるの?」
兄弟で経営しているのかと問いかけたんだ。
「そうじゃ!何か問題でもあるのか?!」
黒服の兄ダヒテが言いやがる。
「違う!実際に経営して来たのは私の方だ!」
青服の弟専務が否定しやがる。
「いいや!ワシが居ったから経営が成り立っておるのじゃ!」
「馬鹿を言え!兄者は散在するだけだったろ!」
・・・内ゲバ?
「だから私が苦労して会社を切りまわしていたのだ!
それなのに兄者は私が折角苦労したのを無にしようとしたのだぞ!」
青服が言い捲りやがる。
「何を言うんじゃ!
ネクロマンサーモドキを人事部長なんかにスカウトしたのが悪いんじゃ!
気味の悪い魔物を造ったのが悪いんじゃ!」
黒服の言うのも尤もだが?
「それもこれも!兄者がオーナーに託けて仕事しないのが悪いんだ!」
確かに、弟専務の言うには一理ある。
ぎゃいぎゃい言い合う兄弟を観ての感想は。
「駄目だこりゃ」
これじゃあ、どっちからせしめて良いのか分からないな。
呆れ果てた俺達は、仲の悪い兄弟経営者の末路を垣間見た気がしたよ。
「まぁね・・・良くある話だよな?」
天を仰いだミコがニヤリと笑いやがったよ・・・
なんだかなぁ~な、兄弟。
よくある内部紛争に、呆れるミコ達。
やはり血族経営は問題が多いみたいですね?
ま、エクセリアの社会も欲望に忠実という訳ですか?
次回 ファイティング・スィーパーズ! 八話
言い争う兄弟に終止符を!ここはガツンと言ってやらねば?!ね、ミコたん?




