ファイティング・スィーパーズ! 伍話
人間が魔物に?!
その業は誰が行ったんだ?
ニャタさんは俺達を信じてくれたようだ。
経理部の部屋には魔物達が集まっていた・・・物凄い数の社畜な魔物達が。
「いいですね?ここから一歩たりとも外に出たら駄目ですからね。
もしも僕達が戻ってくる前に外に出たら、命のっ保証なんて出来ませんからね!」
魔物達に替えられた社畜な人達に向けて、ミコが念を押したんだ。
「リュート、じゃあ行こうか!」
魔物にされてしまった社員達に背を向けたミコが、俺を翔龍に変身させる。
ボォムッ!
金の腕輪から光が放たれ、狐モドキだった俺を鋼の翔龍に変えた。
「「おおおおぉ~」」
魔物から一斉に驚嘆の声が上がった。
「皆さんに言っておきます。
僕が帰って来るまで、大人しく待っていてください」
俺に跨ったミコが、魔物達とリンさんに念を押しやがった。
「もしも部屋の外で出遭ったら・・・殲滅しちゃいますからね」
半ば脅しともとれる一言を残して、俺達はドアを閉めたんだ。
「さてと、これで無益な殺戮は回避できたかな?」
ミコが俺の背から溢した。
「まぁな、後味の悪い事は無くなった・・・筈だな」
俺が頷いて応えると、ミコは首を振って怒りを露わにしやがる。
「既に6匹ほど・・・6人もの魔物にされた人を滅ぼしちゃったんだよリュート。
僕に汚点を着けた奴を赦しはしないから、後腐れのないように消し去ってやらなきゃ許せないよ」
そうだったな。
このビルに入って初日の晩、サエぽんと一緒に6匹の魔物を滅ぼしてしまった。
まさか魔物にされていた人だったなんて知らなかったから。
そう考えた俺は、とあることに気が付いたんだよ。
「ちょっと待てよミコ。いくらネクロマンサーだか何だか知らねぇけどよ。
魔王以外に魔物を造る事の出来る奴が居るのかよ?」
「そこだよリュート。ボクもそこを確かめたかったんだ。
最上階に居る奴に直接会って確かめたかったんだよ」
階段を登りながら話し合う俺達。
向うは最上階に居るって言う闇の力を持つ者の元。
「もしかしたらだけど、そいつは魔王の端くれかもしれない。
僕達が追い求めた魔王なのかもしれないんだ」
そうだとすれば、最上階に居る奴を倒したら・・・
「魔王だったら、逃がすんじゃないぞミコ。
そいつを倒せれば帰る事が出来るかも知れないんだからな」
こんなビルに魔王が居るなんて思えないけど、まぁエクセリアじゃぁ何が有っても変じゃない。
本当に魔王だとしたら・・・倒せたら・・・
「おい、ミレニア?!どうなんだよ、魔王なのか?」
金の腕輪に宿る女神に訊いてみたんだが。
「「それはない・・・残念ながらね」」
あっさり否定しやがったな。だとしたら誰がどうやって人を宝石モンスターに出来るんだ?
「「人を魔物に変える魔術は存在しているのよね。
特に自らが魔物になるのを認めてしまう者なら、かかりやすいわ」」
ほぅ?!そんな術が存在するのか?
「「二人に言っておくわよ、このアンチョコ本に記されてある通りなら。
最上階に居る奴は呪術師である人間よ」」
ミレニアが教えて来たのは、人が人を魔物と化したのだという事。
女神の教本に書いてあったのは、人が人を貶めたのだという。
「そっか・・・だったら遠慮なしに人をぶっ飛ばしてやるよ。
魔物にも劣る人間に、人権なんて在りはしないんだからな!」
ミコがブちぎれて言いやがるのを、俺は止める気にもならなかった。
むしろミコに同意しちまったぜ。
「ああ、その通りだぜミコ。手加減なしでぶち倒せ!」
「「にょほほぉっ?!二人共怒りに任せて倒しちゃうんだ?」」
言った傍からミレニアが笑いやがる。
「「魔王の居場所を聴くんじゃなかったの?」」
そりゃぁ・・・そうだけどよ。魔王と関係あるのか分からないぜ?
「「も一つ付け加えておくわよ。
人が魔物を造るにしても、宝石が必要なのを忘れているでしょ?
宝石モンスターを造るには、必ず属性のある宝石がいるのよね。
それを誰から、どこから調達したのかを知らなきゃいけないんじゃないの?」」
おお?!損な女神が真面な意見を言いやがった?!
「「ネクロマンサーは人を魔物に変えれる・・・それは間違いないこと。
でも、そこに至るまでには何か秘密が隠されている筈よ?!」」
な、なるほど。言われてみたらその通りかもしれない。
「「だからぁ、吹っ飛ばす前にぃ~、ちょこっと訊き質したらって思うんだけど?」」
分かったぜミレニア。今回は糞女神の言い分を取ってやるぜ。
俺はなるほどと思ったけど、ミコの奴はどう考えたんだ?
「訊くのは聴くけど・・・痛みつけてからでも良いんだよね?
怒りが収まるくらい叩きのめしてからでも良いよね?」
・・・それも一つのやり方ではある。
「だってさぁ、簡単に口を割るかはアイツ次第だから」
・・・へ?!アイツ??
階段を昇り詰めていた俺達の前に、開け放たれたドアがあった。
不用心にも扉が開かれ、中が伺い知れる。
タブン魔物達・・・モトイ、人を魔物に変えた後に扉を閉じなかったんだろうな。
ドアの外からでも、そいつが張本人だって分かるよ。
真っ黒な服を着ていて、怪しげな煙の中で佇んでいる男を観たら。
「お前達はなぜ最上階に来たのだ?!何の用があるのだ」
お決まりの文句を垂れた所からして、間違いないな。
「儂はノルマン専務に依頼されたシャーマン・ドワール!このダヒテの塔の管理者なのだぞ!」
ああ、そうなんだ。
ドワールって名前で、呪術師であることを白状してくれたんだな。
そんでもって訊きたい事があるんだぜ、ドワールさんよ?
「管理者だって?!人を魔物に変えるのが管理なのかよ!」
途端にミコの奴が噛みつきやがった。
あら・・・ミコよ。そっちから咎めるの?
「依頼に沿っただけだ!ノルマン専務は夜勤者を拘束したかっただけのようじゃがな。
辞められたら困ると思ったようじゃが、愚かな事じゃ」
ふむ?!こいつは専務を愚かと言うのか?
「給料の増額と雇用の確保を認めておきながら魔物に変えるなど。
自らの愚かさを認めたに等しいではないか。
これでは次期社長になるなど笑止千万!」
ふむ?!尤もな話だが?
「じゃからお前達を雇ったんじゃろうて、ダヒテオーナーは。
この会社に不必要な人間を魔物として葬り、専務の暴走を止める。
そして落ち度として専務を解任させる気なのじゃろうて」
ふむ?!所謂お家騒動って奴なのか?
「従業員を魔物に変えて働かせる・・・禁忌の術により。
しかる後に口封じさせる・・・あたかも社畜扱いのブラック企業じゃのぅ」
お前に云える事なのかよドワール?
「その人を魔物に変えた奴はどうなんだよ?
お前はなんとも思わなかったのかよ?専務に使われたと言っても許される筈がないだろ!」
ミコが吠えたんだけど、ドワールはニヤリと笑いやがる。
「赦されるも何も、儂は依頼に沿っているだけじゃぞ!」
悪びれないシャーマンに、言ってやったんだよ。
「良心の呵責がないのなら、殲滅対象になるよな?」
「殲滅じゃと?儂がなぜ殲滅されねばならんのじゃ?」
・・・やっぱり、ミコが言っていた手段を執ろう。
先ずは、ドワールを半殺しに遭わせやろう・・・
「ドワール!最期に一つだけ訊きたいんだ。
お前の宝石は何処から、誰から手にしたんだ?」
ミコが右手を突き出しながら訊いたんだ。
「教えなかったら・・・滅んじゃうぜ?」
訊いたというより恫喝だな。
「なぜお前になんか答えねばならん?」
勿論、ドワールが答える筈もなかった・・・
さて・・・と。
ミコが手をパンパン叩いて見下ろしている。
「ねぇ、話したくなった?」
瞬殺・・・というか、たったの一発殴っただけで。
「ドワールさんは、僕達に答えることが一番だと思うんだけど?」
シャーマン・ドワールは翔龍騎ミコの一撃を浴びて吹っ飛んだ。
死にはしなかったけど、それ相応のダメージを受けたようだ。
「ぐふっ?!なんちゅう見境なし娘じゃ?!」
一撃で吹っ飛ばされ、半ば放心状態のドワールに。
「見境ないのはお前だろう?人を魔物にするなんて!
宝石モンスターにした罪は重いんだからな!」
右手を突き出したミコがズイッとドワールに近付き、
「さっさと宝石をどこで手に入れたのか教えろよ!」
白状するように迫った。
「さもないと・・・次はキックで吹っ飛ばすよ!」
・・・キックは駄目だキックは!
奥義を喰らえば人間なんてイチコロだぜ?
「ひぃっ?!近頃のオナゴは殺気立ちすぎる!」
いや、おっさん。ミコは元男の子だ。
「言うの?言わないの?どっち?」
ジト目で見下ろすミコに、頑なに拒んで来たドワールも怯えて・・・
「分かった言う言う!儂の宝石は・・・」
「宝石は?」
ズイッと近寄り嘘を言えば、直ちに蹴り倒すとでも言わんばかりに目を細める。
「宝石は・・・通信販売で買ったんじゃ!」
「殺す!」
怒りマークを頭に載せて、ミコが片足を持ち上げる。
「待て!証拠は・・・ほれ!この領収書じゃ!」
懐から取り出した一枚の紙きれには。
「受領者印もあるじゃろ!宝石モンスター製造用宝石4ダースって書かれてあるじゃろ!」
突き出された領収証には、確かに宝石モンスター製造宝石4ダース96個とある。
金額は・・・なんと38400ゴールド?!
街の年間予算に匹敵する額じゃねぇか!
このドワールにこれだけの金があったのか?!
・・・って、そこは違う。
俺の眼がもう一つの文字を見つけたんだ。
「ドワールに訊く。
ボクには受領者印と名前に食い違いがあるように思えるんだけど?」
「受け取ったのはこれに間違いないんじゃ!偽造なんかじゃない!」
ミコが追及したのには訳があるんだ。
俺もその名には覚えがあるし、何より信じがたい話だと思ったんだ。
だって・・・そこに記されてあったのは。
「美子姉・・・じゃないのか?もしかして?!」
そう。
ドワールの差し出した受領書には、<MIKO>と、魔王の印が書かれてあったんだ。
魔物にされていたのは従業員達だった?
どうして魔物なんかになった?
それは・・・社畜故なのか?!
次回 ファイティング・スィーパーズ! 六話
ネクロマンサーとの勝負は如何に?その前に魔王の情報は?




