ファイティング・スィーパーズ! 弐話
掃除人<スィーパー>となったミコとリュート。
現れ出る魔物を駆除する役目を負う、まさに<ファイティング・スィーパー>!
作者注・今回には特別ゲストがご登場です・・・どなたでしょうかね?
ジュダヤの商人・・・
今回の依頼主であるビルオーナー兼商人の名はダヒテと言うらしい。
なぜ<らしい>と言ったか分かるかい?
面識がないからなんだよ、依頼主と直接話した事もないし、顔を見せやがらないからなんだ。
まぁ、依頼主が顔を見せない事は不思議でも何でもないから拘っちゃいないけどね。
だけど、今回の依頼は端から引っ掛かる事が多い。
先ず初めに、ギルドからの依頼が<黒の依頼書>だって事。
一度契約したら任務を遂行しなきゃ解除できない。
依頼主が認めなければ、勝手に放棄できないんだぜ?
まぁ、依頼って奴は、殆どが曰く有り気なモンだけどさ。
次に引っ掛かったのは、依頼がビル内の清掃だってことだ。
掃除なら一般の会社に依頼すれば事足りる筈なのに、何故わざわざギルドに依頼して来たのか。
ビルの中に入った途端に分かったんだけど。
宝石モンスターが居やがる・・・それも半端ない位の量で。
モンスターがどうして居やがるのかを詮索する前に、あらかた始末しなきゃぁならない。
ジュダヤの商人がギルドに依頼して来たのが此処に在るのなら、ダヒテって奴はずぶの素人なんだろう。
でも、俺が引っ掛かっているのはそこじゃあない。
なぜギルドを通してまで<黒の依頼書>を使ったのか・・・
魔物退治なら王国剣士隊や私設の駆除人に依頼すれば事足りる筈なんだ。
しかも大枚を払わずとも雇えた筈なんだから。
俺達が葬った宝石モンスターなら、そいつらで十分だと思った。
でも、俺達が葬ったモンスターは既に数匹に昇る。
いくらなんでもおかし過ぎやしないか?
たった一つのビルに、これだけのモンスターが潜んでいるなんて。
ビルに入るまで、街には弱小モンスターさえも影を現わさなかったというのにだぜ?
いくらなんでもおかしいとは思わないか?
13階建てのビルに、魔物が数匹も居るなんて・・・さ。
今回の依頼には、何かが隠されていると思うのは俺ばかりじゃないだろう?
「リュート、もう直ぐ早朝勤務の人達が出社して来る時間だよな?」
ミコが柱の時計が7時半を指したのを教えて来る。
「ああ、もうそんな時間なんだ。じゃあ、俺達は警備室に帰るとしようか?」
モフモフの尻尾を振って、小さく欠伸をしてしまう。
いくら魔法生物の体を持っているのにしても、睡魔は襲って来るさ。
「そうだねぇ、寝不足はニキビの元って言うし」
・・・そっちかい?ミコよ・・・
同じように欠伸をするミコに、突っ込みたい処だったけど止めにしておいた。
あ、そうそう言い忘れてた。
今回の依頼での魔物退治は、夜間に限られていたんだ。
つまり仕事は夜中だけ、昼間は交代で本当の掃除をこなすって訳。
重労働って訳じゃないが、寝不足に陥りそうだ。
昼間は掃除人、夜中は駆除人。
依頼を片付けるまで躰が保つのかなぁ?
「コ・・・コンコーン」
OLが俺を不審な目で観てやがる。
「あははっ?!ペットの狐モドキなんですぅ」
モップを片手にミコが、薄ら笑いを溢してやがる。
「へぇ~っ、最近の掃除会社はペットの持ち込みを認めてるのね?」
眉を顰めたOLが、俺を汚い物を観るような目で観てやがる。
「はぁ、一応僕の相棒ですので・・・狐モドキは」
言い繕うミコも顔を引き攣らせてやがる。
「相棒ですって?!どんな技術を持っているのかしら?
私には単におかしな獣としか見えないわね」
・・・偏見すぎるぜOLさんヨ?
「そのモフモフの毛を落とさないように気を付けておく事ね。
会社の中にはペットアレルギーの人もいるんだから」
・・・そうですかい、そりゃあすみませんねぇ・・・
思わず人の言葉で言い返したくなった俺だが、
「コ、コーンニャ・・・ロォーン」
途中からコン語に変えて、誤魔化しておくぜ。
まぁ、余計にジト目で観られちまったけどな。
「はぁ、きっちり掃除しておきますから・・・ね」
ミコまでジト目で見下ろして来やがった・・・
OLをやり過ごし、モップを持ったミコが小声で訊いて来た。
「なぁリュート。ここに務めている人達って、魔物が居る事を知らないのかな?」
「そうだよなぁ、魔物が居るのに平然と仕事に精を出してるなんて。
モンスターは夜間だけ出没して、昼間はナリを潜めているのかな?」
魔物が真昼間から出没して来るのなら、こんなビルで仕事なんて出来っこない。
普通の勤め人が魔物と共存出来る訳がない。
知っていて平然として居られるのなら、此処に務めている奴等は余程の強心臓なんだろう。
「そうだよな。魔物が居ると知っているんなら辞めちゃうだろうな」
モップを動かしながらミコも頷く。
「それにしても、誰も不審がらないのはおかしくはないか?
夜中に魔物が徘徊しているんだぜ?痕跡くらいは残ってるだろうに?」
小型の魔物だけじゃなく、人型ぐらいの大きさの奴だって居たんだから。
暴れ回らなくったって、仕事場に痕跡が残される筈だと俺は思うんだ。
「そうだよね、コボルドだって居たんだし。
昨日の晩にはデスクに向かっていたマントールも居たからなぁ」
うんと頷いたミコも見慣れない光景だったと思い出す。
不思議だったが、マントールは書類に向かい合っていたんだ。
まるで残業して、昼間に出来なかった仕事に打ち込んでいるみたいに・・・だぜ?
「それにもっとおかしかったのは、トイレの中で弁当を喰っていた奴が居ただろ?
魔物が弁当を持参してくる?トイレで食べていたりするのかなぁ?」
・・・想像するだけで可笑しい。いや、オカシ過ぎるだろ?
「そんで、そこが女子トイレってのもな」
俺達が見つけた時、ザンバラ髪の腐女子・・・いや、グールは眼を点にしてやがった。
まるで人間の腐女子が痴漢に遭遇したみたいに・・・だぜ?
なんだかバツの悪い感じしかなかったが、ミコは問答無用で始末したんだが。
「なにか・・・おかしいんだよね。このビルの魔物達って」
モップをリソフランに漬け、水気を絞って床に当てたミコが。
「なんだか、人間みたいなんだよな。此処に居る魔物達って」
行き交うサラリーマンを観て、思案している様だった。
狐モドキにいちゃもんを着けたOLがデスクに座ると。
「リン君、この書類だがね明日までに仕上げてくれないかね?」
上司の親爺課長が命じて来た。
「えっ?!今日中に・・・ですか?」
訊き返したリンに、課長は何も言わずに睨んで来る。
「今日は独り焼き肉の日だったのに・・・・」
ぼそりと溢して、机に向かうしかなかった。
机の上には、どう考えても今日中に出来上がりそうにない程の書類が積まれてあった。
必死に書類を片付けている間に窓辺から観える日は傾き、やがては沈んでしまった。
肩が凝る、目が疲れて充血する。
それでもまだ半分くらいしか終わっていない。
「ナリミィーヤさん、お先にぃー!」
「残業お疲れ様ですー」
同僚達がそそくさと逃げていく。誰もが手伝ってはくれない。
もし、仲の良い同僚が居るのなら手伝ってもくれただろうか?
「少しは手伝ってくれても良さそうなのに・・・」
そう溢したリンは横の空席になっているデスクを観た。
そこには仲の良かった同期のOLが居た、つい最近までは。
片付けられていないデスクには、自分と一緒に写された写真楯が置かれたままだった。
「ホントに・・・いつになったら昼間勤務に戻ってくれるのよニャタ?」
手を停めていたリンが、再び書類に向き合う。
「もしかしたら、今晩あたり逢えるかもしれない」
隣の席に居る筈のニャタという名の同期OLが、まだ会社を辞めていないのは間違いなかった。
夜勤で仕事をしているのは、書類やメモの位置が変わっているので分かる。
ただ、仲の良かった友達なのに何も言ってはくれないのが悲しく思えた。
「もし逢えたら、一言文句を言ってやるんだから」
夜の帳が墜ち、残り3分の一くらいになった頃。
リンはやっと人心地がついて手を休める気になった。
気が付けばもう夜の10時を過ぎていた。
「もうひと踏ん張りだわ・・・」
そう思ったリンが、背後に誰かの気配を感じ取る。
「あれ?こんな夜中に誰だろう?」
咄嗟に振り返ったリンの眼に映った者は・・・・
「っ?!」
遭ってはならない者がそこに佇んでいたのだ。
「ナリミィーヤ・リン」 = 成宮 りん 様でした!
成宮 りん 様のページは下記まで。
https://mypage.syosetu.com/858748/
主力シリーズは
https://ncode.syosetu.com/s3504d/
ファザコン中年刑事とシスコン男子高校生の愉快な非日常・シリーズ」
ただ今連載中はこちら!
https://ncode.syosetu.com/n0151ft/
「ファザコン警部補とシスコン巡査の愉快な非日常:その3~
ダイイングメッセージ【CSV】の謎を解け~警察の中の警察に届いた密告状が暴く15年前の真実!
シルバーアクセサリーと失踪美女が明かす連鎖する殺意」
是非!ご一読を!
「成宮 りん」様。
出演依頼を快諾して頂き、本当にありがとうございました。
今しばらく出演して頂きますので宜しくです。
さて、次回には挿絵がつきます。
成宮様ともう一方・・・それは?!
あ・・・名前出てましたね?
それでは次回も宜しくです。
次回 ファイティング・スィーパーズ! 参話
次回はリンの友達が?!さて・・・どなたでしょうかね??




