ファイティング・スィーパーズ! 壱話
強烈な陣風が奴等を巻き込んだ。
哀れな魔物達が一瞬で消し飛ぶ。
陣風が過ぎ去った後、残ったのは宝石。
手に入れたのは宝石モンスターの為れの果て。
「にょーっほほほっ!これで今回の掃討作戦も完遂!」
ピンク髪のサエが得意満面で拾い集めている。
その脇でピンクの豹が零れた宝石を食べていた。
「完遂って・・・何もサエぽんはしてないだろ?」
作業着とマスクを着けている茶髪の少女が言い募っていますが。
「ミコとは違うのよミコとは!
アタシはちゃんとお掃除してるだけだから!」
ピンクのオサゲ髪を靡かせて、サエぽんは床に落ちた宝石を拾い集めていますけど?
「ミコが散らかしたんじゃないの。
だからアタシが綺麗にしてあげてるんじゃない!」
ビシリと差されてしまったミコが言い返す言葉を失っていますけど?
「確かに・・・サエぽんの言う通りかもしれんな」
同意するのは狐モドキの俺。
いや、今は翔龍状態だったけど。
「モノは云い様だよ、襲って来た奴等が悪いんだから」
やっと返すミコだが、歯切れが悪そうだな。
「第一なんでこんな魔物が襲って来るんだよ、このビルは?!」
腕を組んだミコが周りを見回した。
翔龍状態の俺を元のモフモフ狐モドキに戻しながら。
「大体、依頼は掃除だったじゃないか!
建物の中を綺麗に掃除して欲しいって、雇い主が頼んで来たんだろ?」
ミコの吠えるのも判るぜ。
だって、ここは街の中にある一番大きなビルの中だったし。
どうして街中のビルに居て、なぜ魔物に襲われたのかって?
それを話すには、タストン女史の前に居た時に遡らなきゃならねぇな。
「魔王軍の所在が判ったんですって?」
タストン女史が俺達に訊いて来た。
「そうです。何でもモンブランとか言う村に拠点があるらしいんです」
ミコが受け答えしている通りだ。
ミートの病院で魔物から聞いたところによれば・・・だけど。
「モンブランだってぇ?そんな村なんて聞いた事が無いわよ」
そうなんだよ、魔物達からは方角くらいしか聞き出せなかったんだよな。
本当にそんな村があるのか、どれ位の距離にあるのかなんて分からなかったんだ。
だから、ギルドの情報を頼りにしてたんだが・・・
「モンブランねぇ・・・地図にも無いし、ガセネタじゃないの?」
と、言われる始末。
はっきり言おう。俺達は損だと。損過ぎるパートナーだってね。
「/(^o^)\ナンテコッタイ・・・」
頭を抱えてミコが蹲る。
儲けもなく、ガセネタを掴まされただけ・・・なのかってね。
「モンブランかユーロブランか知らないけど。
アンタ達には稼いで貰わないといけないんだよ・・・ほれ!」
タストン女史が請求書を突きつけて来た。
そこには・・・
「げぇっ?!なんだよその金額は?」
ミコが叫ぶのも無理はない。
1クエストくらいじゃ払いきれない位の0が並んだ請求書。
先ず払いきるには余程の依頼をこなすしかなさそうだ。
「なにってミコ。アンタの連れが借金したんじゃない?」
え・・・俺?
身に覚えがありませんが(硬直)・・・
ミコの眼が痛いんですよ・・・タストンさん?
「リュゥ~トォッ?」
いや、俺じゃないって。信じてお願い!
「俺は知らねぇよ、借金なんて頼んだ覚えもないし、借りた金は何処にあるってんだよ?」
「僕の知らない間に使ったんじゃないだろぉーねぇ?」
おい、待てよミコ。
つかず離れずの俺が何時使うんだよ、そんな大金?!
「リュートには前科があるからね、教えないと丸焼きにして食べちゃうよ?!」
人食い族か、ミコは!
あ、俺・・・狐モドキだったw
「違うったら違う!そんな大金があったなら豪遊してるし、とうに旅に出てるわ!」
そうだよ、旅に出るだけの金が無いから、此処に居るんじゃないか!
・・・・・・ジト。
なに・・・その眼は?信じていませんねミコ君。
「あら、アンタ達知らなかったの?
借金を肩代わりしたんじゃなかったの?」
タストンさん・・・どう言う事?
「サエがミコ達が受けてくれたと書類を出したから・・・違うのかい?」
え?!
「ほら、ミコの筆跡で間違いないわよねこれ?
連帯責任者の処・・・ミコって書いたんじゃなかったのかい?」
ほえぇっ?!
「ど、どういうことなのかを説明してよ?!」
俺に責任はない・・・断じて。
焦るミコに責任がある・・・って、マジですか?
「ほら、これが元の借用書。
未払いになって2か月経つと、連帯保証人に債務が発生する・・・って」
「がぁああ~んんっ!」
真っ白になってるミコ・・・肩を震わせて嗤う俺・・・じゃないわい!
「おいっ!どうなってんだよミコ?!なぜ連帯保証人になんて?」
なったんだよって、言いたかったんだけど。
「損な?!僕がサインした時にはこんな莫大な金額じゃなかったよ!
サエから見せて貰った時には2000ゴールドくらいだったんだよ!」
じゃぁ・・・なにかい?
請求書に書かれた金額が間違っていると?
「それなのに!これには20000ゴールドってあるじゃないか!
しかも十一で利息が付くなんて・・・闇金じゃないかこんなの!」
10日に1割の利息が載る・・・闇金融業者のやり口だとミコは言っていますけど?
「あら?おかしいわね。ミコが20000ゴールドを了解したってサエは言ってたわよ?」
・・・またもや。騙されやがったのかミコは?
「あっ!そう言えば。ずっと金額の最期の部分を押さえていた・・・っけ?!」
・・・間違いない・・・やられやがった。
「ああ~っ?!サエの奴ぅーっ!」
怒り狂うミコでしたが、サエの姿は此処には無く。
「残念ミコ。借金は消えないわよ・・・返さなかったらどうなるか知ってるわねぇ?」
ビクンっ!
思わず俺も縮みあがったよ、タストンさんの一言に。
「エクセリアのギルドに加盟して、借金を踏み倒そうとするのなら・・・」
「ひいいぃっ?!するのなら?」
怯えたミコが仰け反って訊き直すと、世にも怖ろし気なタストン女史が答えたんだ。
「踏み倒した者は直ちに五臓六腑まで売られる事になるのよ!」
「ぴぎやぁっ?!人体売買ですかっ?!」
闇金かよ・・・
「損なぁ・・・騙されたんだから。
訴えて出ても駄目なんですか?証文は無効だって言っても?」
「是非は無し」
・・・マジか?!
「じゃ、じゃぁ!自己破産しますっ!」
「無駄無駄無駄ぁ!帳消しになるのは死んでからよ!」
・・・エクセリアは地獄かよ・・・借金地獄・・・
「・・・そんな、カード破産も出来ないなんて・・・」
おい、ミコ。それは向こう(無効)の話だってば。
「あああ~っ?!誰か救いの手をーっ!」
ミコが完全にトチ狂った・・・
「ほほぉぅ?助けて欲しいんだぁ?」
ニヤリと細く笑むタストン女史。
あ・・・これは完全にヤバイ仕事だぞ、ミコ?
「ちょうど今さっき美味しい話が舞い込んで来たのよぉ。
アンタ達には簡単にこなせられる・・・お仕事なのよぉ?」
い・・・イカン。これにうっかり引っ掛かると・・・
「ホント?!やるやる!借金がなくなるのならなんだってやります!」
あああああああっ?!マジかミコ?
「そう?じゃあ、これにサインを書きなさい」
書くなミコ、罠だ!
さらさら~~~
・・・・書いちゃったよ。
内容・・・読んだ?
「ほぉーほっほっほっ!確かに受け取ったわよ!」
ミコがサインした途端、タストン女史が奪い取ってギルドの契約印を間髪を入れずに押しやがった!
「あ・・・あのぉ?」
今更だぜミコ・・・(涙)
「これでミコの身体は依頼主の物になった!
もはや破棄など出来ないわよ、しっかり弄ばれてきなさい!」
「え・・・マジ?」
タストン女史に死んだ眼を向けるミコ(言わんこっちゃない)。
「マジ!ミコは依頼主の元で弄ばれるのよ!
金は成功報酬だからね、依頼主の機嫌を損ったら天引きされちゃうわよ。
それにこの契約書にサインしてしまったんだから、逃げることも出来ないわよ!」
ギルドの契約書だと思っていたのだが、それは黒の依頼書。
つまりは・・・
「あっ?!魔法印!もしかしてそいつは僕の自由を奪う?!」
慌てたミコが取り返そうとしたが、タストン女史の手の中で契約書が・・・
ボワアアアァッ!
あっという間に灰になった。
と、同時に。
「ぴやあああぁっ?!」
ミコの身体が荒縄で踏ん縛られた・・・灰になった契約書で。
「うっ?!外れないっ抜け出せない?」
そう。
翔龍騎であっても、黒の契約書には抗えない。
「ミレニアさんっ!助けて!」
女神に救援を求めたミコに、腕輪の女神が・・・
「「すぴーすぴー・・・」」
眠っているようですね・・・・
「こんな時に限ってぇ~っ、役立たずぅ!」
身から出た錆びですよ・・・全て。
「と、まぁ。そう言う事でミコ。
あなたはジュダヤの商人に買われたんだから、キリキリ覚悟を決めるのね!」
「損なぁ~っ・・・・」
・・・・と、言う訳で。
俺達は依頼主兼、ビルオーナーのジュダヤの商人に使われていたんだ。
え?!
そこになぜ男の娘サエが居るのかって?
決まってるだろ、俺やミコが許す筈が無いじゃないか。
借金の連帯責任者なんだし、元はと言えばこいつが悪の張本人だからさ。
「これだけ宝石モンスターが出るなら、借金なんて直ぐに返せるわよー!」
イラっと来るんだけど・・・ついでに吹っ飛ばしてやろうか?
厄病神サエぽんW
借金のカタとして巻き込まれた俺とミコ。
しかし、本当にぶっ飛ばしてやりたいのはサエぽんなんだが?!
目の前に現れる魔物には不思議な行動が目に付いたんだ。
それは・・・・
次回 ファイティング・スィーパーズ! 弐話
次回必見!あのナリミィーヤ様がWご出演いただけることになってますW




