表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/30

白い巨塔はタピオカの味 壱話

挿絵(By みてみん)


今度のお仕事は・・・・

人里離れた山の頂に建つ病院に、朝も早くから患者が運び込まれて来た。


緊急搬送されて来た患者は、声も荒く苦しみを訴える。


「うぎぃーっ、痛ぇ~っ!」


どこがどう痛いのか?

搬送する緊急隊員に担架で運び込まれる声は、確かに痛みを訴えていたが。


「尻尾の付け根が千切れそうだ!何とかしてくれ!」


・・・尻尾?シッポだと?!


担ぎ込まれてくる担架に載せられて、蒼白い獣が人の言葉を喚く。

担架の上に載せられていたのは、勿論人ならざる者。


「大枚をはたいたんだからな!文句を言うなよな」


狐モドキが緊急隊員の白い目に訴える。


「なにも文句なんて言ってはいませんよ」


担ぐ隊員がポツリと返してきたのを。


「いいや、心の中ではそう思ってただろ。俺にはお見通しだぜ!」


人の言葉で嫌味を言う狐モドキに、隊員は・・・


<当たり前だろーが・・・誰が狐モドキなんかを運びたいもんか>


顔に出さないように毒づいた。


・・・隊員君、君は間違ってはいないぞ、多分。



ぎゃあぎゃあ喚く獣みたいな小動物を、受け持ちの医者に携えていく隊員に。


「ご苦労様です、この方が連絡されて来た<ビップな方>ですね?」


病院側の受付が訊ねて来た。


「はぁ?!ビップかは存じませんが。とにかくこちらへ運べとだけことづけられたのです」


担架を降ろした隊員が、搬送先を指定されたとだけ答える。


「伝書ワイバーンで、内容は伝わっておりますので。

 取り敢えずこちらにサインを残して貰えますか?」


受付の事務員が署名を求め、隊員が緊急搬送した事務届に書き込んだ。


「では、私達はこれにて。後は宜しく願います」


担架を担いだ二人の隊員がそそくさと立ち去って行く。


「それではこちらに患者届を・・・」


受付が狐モドキに名を求める。


「何でも善いから早いとこ診てくれないか?」


差し出された書類に目を通さず、狐モドキがサインを終えたら。


「ふふふっ、リュート様と仰られるのね。

 ようこそ我が<シンマ病院>へ、歓迎致しますわ!」


受付の眼が細く笑み、狐モドキがサインした書類をふんだくる様に捥ぎ取った。

書類に書き込まれたリュートの名を指でなぞり確認する。


「リュート様は個室をご所望だとか。

 当病院には個室は2種類ございますが、如何致しましょう?」


「2種類?どんな?」


口元を歪ませた受付が、狐モドキをちらりと見て。


「リュート様は殿方ですわよね。でしたらVIPルームなどは如何でしょう。

 特別な待遇と、特別なサービスがございましてよ?」


「ほほぅ?特別とな?うん、いいね!」


受付がリュートの返事を待つまでもなく、書類に何かを書きこんだ。


「了承いたしました。では、早速ご案内いたします」


リュートの返事も聞かず、受付が呼び鈴を鳴らすと。


「いらっしゃぁ~いっ、それじゃ特別ルームにご案ー内ぃっ!」


看護師にリュートを病室まで運ぶように命じるのだった。


「イの1特別室が空いていたわね。そちらにご案内して」


一枚の書面を出して、受付が看護師に命じると。


「了解です!」


寝台車を押してきた看護師が、ひょいとリュートを載せて一目散に駆け出した。


「おいおいっ?!尻尾を診るんじゃなかったのかよ?」


荷車状態の寝台車の上で、リュートが看護師に訊ねると。


「はいはい、特別室扱いですんで。客室・・・いいえ。

 病室まで担当医が参りますから、ご安心を」


「はぁ?!病室で初診するのかよ?」


それではその病室というのはどんな装備が整っているんだ?

リュートは看護師に訊き返そうと思ったのだが、辞めておくことにした。

なぜなら。


ー 思った通り。依頼通りに胡散臭い病院だぜ。

  それにしてもどんな待遇なんだよ、特別室って所は・・・さ?


リュートは尻尾を振りながら考える。

痛いと言っていたのに、いつも通りにふさふささせて。





_____________





「確かに・・・これは。

 本当に病院なのか?ここが?!」


天井から吊られたシャンデリア。

古代オーク樫で造られたベッド。

木目調の事務机、豪華な椅子・・・クローゼット。


そして病室だというのに、シャワールームや予備の寝室が場違いな雰囲気を増長させている。


「確かにここが病院なのかを疑うな」


リュートが連れ込まれた特別室で、寝心地の良いベットの上で丸こまっていると。



 コンコン 



誰かがノックした。

てっきり担当医が来たのかと思って・・・


狐モドキは病人の真似を執る。


「痛たたたたぁ、早く診てくれよ」


ベットに寝そべり布団の中に潜り込んだ。



 カチャカチャ・・・カラカラカラ



何かを運び込む音がする。



 コトン カチャ 



誰かが近づき、何かを取り出している。


「早く検査するならしてくれよ」


布団の中から、やって来たであろう医者に催促する。


「痛いんだからさぁ、手っ取り早く診てくれよ?」


返事は戻らず、やって来たものが歩み寄る感じだけがした・・・


「うん?!」


物凄く嫌な予感が・・・背筋を奔り抜けた・・・


ーーー ぞわっ ---


身の毛がよだつ・・・狐モドキの身体に。


「でわっ!」


掛け声と共に。

布団が引っぺがされた。


「わぁっ?!」


医者だとばかり思っていたのだが。


「そんじゃー、検温ってやつを執りましょうかねぇ?」


目の前に立つ栗毛の看護師。

リュートの前に仁王立ちする栗毛の女性看護師の手に、体温計が握られている。


「狐モドキの検温って・・・やっぱりお尻の穴で測るんだよねぇ?」


ニヤリと嗤う邪な顔。

緑鳶色の瞳には悪戯心を浮かばせ、見下ろす頬には悪意の塊が。


「ぎゃぁっ?!待てミコっ早まるなっ!

 ・・・って、どうしてミコが俺の担当なんだよ?!」


看護師服を纏ったミコが現れた!


手には手術用の手袋を填めた状態で。

カーゴに載せられてあるのは確かに手術用の医具ばかりだった・・・



・・・これは何とした事?!


リュート、絶体絶命なのか?


「ふっ?!ジタバタするなよリュート。覚悟完了?」


挿絵(By みてみん)


手にした体温計で、何をする気なのか?

そもそも、だ。なぜミコが看護師なんかをやっている?!


「ぎゃぁっ?!ミコっ、何をするんだぁ?!」


逃げ出そうとしたリュートの尻尾を掴んで、ミコが嗤う。


「決まってんじゃん、<検温>・・・・」


尻尾を持ち上げたミコが体温計を尻尾の付け根に番えた!!


リュート、貞操の危機?!


・・・違うだろ?

ああ、ナース?!

看護師たる者、その身を患者に捧げよ・・・・


無理ぽ・・・


今度はナースですが、なにか?


白い巨塔・・・知ってる?


次回 白い巨塔はタピオカの味 弐話

ナースなミコを怯えさせる者?!そいつは・・・パィーン!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ