蒼翼の修道女 四話
怪しい奴が現れた?!
そうなったら、やっぱり!
脱いじゃえ!
もういいから・・・と。
ミコの奴が促して、地上に降り立たせてやった。
「どう?!あなたにだけ不思議な術が出来る訳じゃないって証明は?」
勝ち誇ったミコが、自慢気に指差す。
「ぐぬぬっ、言わせておけば!」
嘘っぱちの空中浮揚で信者達の気を惹きつけた教祖、アクマンが悔しがる。
「ならば!掛け値なしの奇跡を見せてやろう!」
・・・まだ諦めていなかったか・・・
黒い法衣を纏うアクマンが、何を思ったのか。
「法衣の中に何か忍ばせていると思われるのは癪だからな!」
イキナリ法衣をかなぐり捨て、褌一丁となった。
「わぁっ?!汚い物を見せるなっ!」
ミコが慌てて両手で顔を隠して騒いだが・・・
「おお~っ、アクマン様の言霊遣いが始るぞ?!」
信者達には大受けのようで。
やんやの喝采が向けられてきた。
「こんなのが言霊使いなんかじゃーある筈が無いよ!」
隠した指の間からアクマンを観て、言い募るのだが・・・
「ミコ・・・言霊使いってさ。どんなのか知ってるか?」
訊いた俺に、ミコが簡単に教える。
「言霊使いは神とか霊魂を身体に降ろして、質問に答えるんだってさ」
「ふーん、という事は。
アクマンの野郎に質問すれば教えてくれるんだな?」
咄嗟に何を考えたのかが判らなくて訊き返して来やがった。
「何か企んだの、リュートは?」
問いには答えずにアクマンの元へ行くと。
「言霊遣いに訊く。魔王はどこに居るんだ?」
目的だった事を、いの一番に訊いてやったんだ。
「ふむ・・・魔王とな?」
「そうだよ、魔王!俺達が倒さないといけない奴!」
訊き直したアクマンに、苛立って言い直すと。
「魔王・・・それは嘗て居た者か。それともこれから産まれ出るものか?」
「なに言ってんだよ!魔王は魔王だろーが!
今どこに居るのかって訊いたんだよ!」
答えになっていないアクマンの言葉に、狐モドキの俺が牙を剥く。
「魔王はのぅ・・・ワシじゃよワシ!」
「・・・ほほぅ・・・今ここで死にてぇーみてぇーだな?」
誤魔化すにも程があると。
ふざけるのも大概にしろよ・・・と。
裸同然になる必要が、どこにあったのか。
アクマンに詰め寄ると狐の小さな口を開いて・・・
がぷっ
思いっきり、アクマンの足を噛んだ。
「ぎえぇーっ!宿った魔王は死にました!!」
アクマンがまたもやいい加減な事を言うと。
「おおーっ!狐さんが魔王を倒したそうだぞ!」
信者達がやんやの喝采を揚げる。
「アホかっ!こんな嘘っぱちの教祖を信じれるのかよ?!」
傍から見たら、単なる道化師にも劣る。
いや、傍から見なくても・・・馬鹿丸出し。
「痛てて・・・どうだ!我が奇跡は?
これほど確かな奇跡は有るまいに?」
・・・どこが?
今迄黙って成り行きを観ていたミコが、ツイっと前に出ると。
「そんなの奇跡なんかじゃないって。不思議でもなんでもないから。
いい加減な事を言ってると神罰が墜ちるよ?」
教祖の前に出て来たミコだったが。
「本当の奇跡って言うのを見せてあげる。
神の奇跡がどんな物か・・・見せてあげよう」
アクマンの前。
信者達の前に出たミコが、紅い法衣に手をかけると。
「ボクが神だという事をみせてあげるよ・・・皆さんにだけ!」
バサッ
言うが早いか、ミコの野郎がいきなり法衣を脱ぎ捨てやがった!
「おおぅっ?!確かに神降臨!」
「ありがたやぁ~っ、なまんだぶ」
「若い娘の肌はピチピチ!」
信者からやんやの喝采が・・・違うだろ?
今は単に服を脱いだだけじゃねぇーかよ?
ツッコミ処は満載だが、ここは黙ってミコの素肌を楽しむ事にしたw
脱いだ後には、ブラバンドとホットパンツだけ。
・・・邪魔だな・・・
プルンとした肌を観ながら、狐は悪意を募らせる・・・
・・・リュート・・・危ない奴だな?
「良いですか皆さんっ!ボクがこれから変身しますからね。
しっかり見ていてくださいよ、これが女神の為せる業だって知ってくださいねぇ?!」
・・・なんだと?!こんな所で?変身するのか?
肌に釘付けの信者達には、聞こえたのかも分からなかったが。
「それじゃーいきますっ!」
右手を突き出したミコが、宿るミレニアに頼んだ。
「ミレニア変化!出でよ女神ミレニア。
迷える子羊に神たる姿を表せ!」
「「・・・マジか?!」」
何やら金色のリングがぶつくさ言ったような気がしたが。
シュルン
ミコの髪が靡いた。
ポワン
眩い金色の光で視界が翳む。
シュルルン
何処に咲いていたのか、花弁が舞い散る。
・・・そして。
「はぁ~いっ!呼ばれて飛び出て、じゃんがらじゃ~んっ!」
光が薄らいだ跡には、ブルーのレオタードを着た女神の姿があった。
「・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
信者達は物も言えないのか、黙って女神となったミコを観ていたが。
「どう?私・・・可愛いでしょ?」
・・・そうだね、可愛いね・・・小さくて。
手のひらサイズの女神が宙を舞っている。
ミコがデリシャスなボディーを披露した後に現れ出た女神もナイスバディーだったが。
痛い事に、サイズは手のひらクラス。
ちっちゃ過ぎて、遠くから見たらリカちゃん人形が喋っているようにしか観えない。
「残念過ぎる・・・ミレニア」
狐モドキな俺の口から嫌味が零れる。
「ぶぅぶぅ!」
「さっきの子の方が良いぞ!」
「なんだよ?なにが悲しゅぅーてマペットマンを観なきゃいけないんだよ?」
口々に文句を垂れる信者達。
「((怒))!!!」
ミレニアの眉間に縦皺がよる。
「ぶぅぶぅーっ!」
女神の怒りに触れた者の顛末は?
「一言・・・言っておくわよ。
最期に言い残したい事は・・・あったかしら?」
既に信者達に動けるものなど居はしなかったのだが。
パンパン ・・・ と。
手を払ってから、辺りを睥睨する悪魔のような女神が。
「そんじゃー、こんな所で善いかな、ミコ?」
宿り主ミコに身体を戻しながら、出来栄えに納得したようだ。
「これは・・・無慈悲過ぎやしませんか?
確かに教団を潰さないと、とは言いましたけど?」
なろほど・・・ミコの奴が自分の手を汚さずに決着を図ったのを知る。
ー ・・・なんて手を使いやがるんだ・・・怖ろしい奴。(ぼそり)
幼馴染で宿り主でもあるミコの悪知恵に・・・舌を巻いた。
「これで邪魔する奴は居なくなったよリュート。
本当の依頼を果たさないとね、それに情報を得るのにもこの方が良いだろ?」
ミコが気絶している信者達を観てから、倒れているアクマンを睨む。
「そんな真似をしても、僕とミレニアを誤魔化す事は出来ないんだよ!
馬鹿の真似をしてても、感じられていたんだよお前の力を。
誤魔化したうえで信者達と共に始末する気だったんだろ?」
ミコが金の腕輪に力を込め始める。
「ミコ・・・お前?」
馬鹿者の振りに付き合っていたのかと驚くが。
「ああ、ボクもミレニアさんに教えられたんだけどね?
アクマンの後ろにある逆さ十字に隠れた奴の事をさ!」
アクマンに宿っている者の正体なのか?
「教祖とか言いながら、影で信者の魂を貪っているんだろ?
これだけボケた村人になっているのは、お前が正気を喰らう者だからだろ?」
・・・どこまでが本気なのか。
今迄の馬鹿げた行いは全て悪魔を誘き出す為だというのか?
「女神を後ろから襲う気だったんだろ?
アクマンが忍び寄ったのを気が付かないとでも思ったのか?
信者が馬鹿にしたって、女神が魔法を放つ訳がないだろうに!
全てはお前をという目的を孤立させる為だったんだよ!」
・・・おおっ?!本当なら凄いぞ!
「まぁ、半分は本気で怒っていたみたいだけど・・・ね?」
・・・まぁ・・・許す。
狐モドキ状態のリュートを捕まえたミコが、右手の魔法リングを晒して。
「それじゃーっ、いつものヤツ・・・行くよ?」
殲滅戦に適した状態へと導いた。
そう・・・マジな闘いへと突入する為に。
「リュート!翔龍となれ!
続いて全力戦の準備っ、翔龍騎ミコにチェンジだ!」
おおおおおっ?!こんな真面な展開になるとは?!
・・・本気?
戦いは一瞬でカタをつけるっ!
それが翔龍騎ミコの流儀ですっ!
次回 蒼翼の修道女 伍話
かくして、悪魔教団は潰えるのです・・・って、ミコお前わぁっ!




