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蒼翼の修道女 参話

シスターに化けた?ミコ。


周り中を信者たちに囲まれて・・・・

ミコは額に浮いた汗を拭う。


狐モドキの前で、汗ばんだ法衣をバタバタ煽った。


「リュートォ、何だか知らないけど奉られちゃってるみたいだよ?」


魔法を使って汗ばんだ身体を持て余して、幼馴染おれに苦笑いを浮かべる。


「奉られてる場合かよ?!俺達は教団を殲滅するのが役目だろーが!」


ギルドに依頼されたのは教団の壊滅。

それには教祖たる闇の悪魔を倒さねばならない・・・筈であるのだが。


「わぁーてるよ、そんな事は。

 でも、少しくらいは良いんじゃないかなぁーって・・・」


役得を貰っても罰は当たらないだろうと、ミコは思ったようだ。


「此処に居る信者さん達がそうしたいと言ってるんだからさ。

 ボク達に仕えたいって、言ってるんだからさ。

 もう少し、讃えられておこうかなぁ・・・っと!」


汗ばんだ法衣をはだけて、涼を取ろうとするミコに。


「巫女様、どうぞ!」


信者の一人が大きな団扇で仰いでくれる。


「ああ、ありがとう」


はだけさせた法衣に風が当たると汗が退く。


「巫女様、これをお飲みくださいませ。喉がお渇きになられたでしょう?」


お盆に載せたマスカットジュースを差し出されたミコが手を伸ばす。


「ああ、ありがとう・・・美味しい!」


一口飲んで、ミコが笑う。


「おおっ、巫女様が喜ばれた!」


信者達が一斉に歓声をあげて、ミコと共に微笑んだ。


「アクマン様なんて、これ程お喜びになられなかったのに!ありがたやぁ~」


信者の一人が嘯いた。

その一言で、忘れかけていた事を思い出させられる。


「そうだ!そのアクマンとやらはどこに居るの?!」


― 忘れるなよ・・・一番肝心な事だろ?


突っ込みたいのはヤマヤマな狐モドキの俺がジト目でミコを観たが。


「ボク達はそいつに用があって此処に来たんだよ!

 のんびり魔法を使ってる場合じゃないんだ!」


言わなくてもいいミコの一言に、開いた口が塞がらなくなった。


「そいつ?巫女様は教祖様をそいつ呼ばわり出来るのですか?」


忽ち信者達の不審の念が拡がる。


ー そら、観た事か・・・


狐モドキは天を仰ぐ。


「そーだよ!そいつをやっつけるのがボク達の使命なんだよ!

 悪魔の手先を倒すのがボク達の仕事なんだからね!」


ー ミコ・・・お前って奴は。馬鹿正直すぎるぞ?


ギルドの依頼だから殲滅するのは良いとして。

信者が改心するのなら、いらぬ犠牲を出さなくても良い筈なのに。

これでは信者が改心する処の話ではなくなるだろう。


疑われた自分達に送られてくる眼には、猜疑心が浮かんで見えた。


・・・と、リュートには見えていたのだが。


「悪魔が?この神を祀る祠に居るというのですか?」


ー おや?違ったみたいだ・・・


信者達を見詰め直す俺が、ちょっと考えを改めたんだ。


「教祖様に悪魔が宿ったとでも?

 そーいえば最近特に供物物を求められてたからなぁ。

 金品だけに留まらず、肉や卵を良く欲しがってたもんなぁ」


信者の一人が愚痴の様に呟くのを聞き洩らさなかった。


「確かになぁ、何だか人が変わったみたいだった。

 信者の中には差し出せなくなって盗みを働く者まで出たもんなぁ」


それは・・・信者に強制したからなのか?


「だから、教祖様の名を捩られて<悪魔アクマん教団>なんて言われちゃってるんだよ」


・・・アクマン教祖だから・・・悪魔ん教団・・・だと?


「そうそう!他の地域の者達は、挙ってそう呼ぶんだよな。

 もともと祠に集う密教みたいな物だったから、余計に不審がられちゃうんだよなぁ」


・・・なんだと?!


「我々の宗教には神の悪魔も人も、ナンビトも平等にって教えがあるから。

 この逆さ十字に見えるシンボルも、問題があるのかもしれないけどな」


・・・逆さ十字じゃないのか?どう見たって逆さ十字だよこれは!


いちいちツッコミを入れる手間が必要なのだが、頭を抱えるだけにした。


「もしかして・・・何かの間違いって奴なんじゃぁ?リュート?」


訊いていたミコが憂慮する。


「もしかしなくても・・・依頼主の勘違い。

 もしかしなくても思い込みって奴なんじゃ…」


幼馴染は挙って天を仰ぐ。


「でも、しかし。

 依頼は依頼だよね!断ったら依頼料は貰えないんだよね?」


ミコが眼を廻してリュートに訊く。


「いやしかし。

 無実の者を葬り去るのは気が引けるぞ?」


腕を組んで考えてしまうよ、俺も。


「きっとアクマン様には悪い魂が宿っているのでしょう」


救いに船か。

幼馴染は同じ考えに行きついたようだ。


「そうだ!教祖を吹っ飛ばしてしまえば問題無し子!」


・・・お前達の方が悪魔かよ?!


そう思っているのはミコに宿る女神だけだった。



・・・と。



「私を吹っ飛ばすだと?笑止千万!!」


奥の闇から声が掛かる。


「おお、アクマン様だ!」


信者が一斉に平伏せた。


「なに?アクマン?だれそれ?」


ミコが聞かなかった事にする。


「アクマンじゃなくて悪魔ん・・・だろ?!」


他人ひとが訊いたら、単に同じ名であるが。


「教祖様と呼べ、赤法衣!」


奥から現れ出た教祖の格好は、信者と同じ黒のマントを羽織った男。


<ねぇ、リュート。こいつから悪意が溢れているけど?>


ミコは現れた者が、情報通りの者だと認識したようで。


<構わないから吹っ飛ばしてしまおうよ?>


問答無用でやっつけようと言うのだが。


<待てミコ。奴をるのはもう少し待て。俺にいい考えが湧いた!>


何かを考えたというのか、リュートが停めて来る。


「ふぅーん・・・そっか。じゃぁ、任せる」



信者の前に現れたアクマン。

ミコを観る目が怪しく光る・・・



「おいこら、赤の法衣!勝手に我が信者に吹き込みおって。

 私がどんな力を持つ者なのかを見せてやろう!」


アクマンは両手を翳して言い放つ。


「どんな力って・・・鏡と太陽光線を使うのかい?」


狐モドキが言い返す。

アクマンの頬が引き攣る。


「くっ?!なぜそれを・・・い、いいや。

 恐れおののけ!私の力はそれだけではない!

 奇跡の力をみせてやろう!」


アクマンは翳した手を引っ込めると、今度は台座の上に胡坐をかいて座り込み。


「観ておれ!私は宙に浮かべるのだ!」


バタバタと足を動かして言い返して来る。


アクマンの身体が台座から浮かんで見えた。

待っ正面からは・・・だが。


トテテテ・・・・


リュートが側面後方に廻り込むと、そこに観えるのは。


「やっぱりな、こんなこったろうと思ったよ!」


台座の上に透明なガラス版が置かれている。

アクマンが座る前方の方が薄く出来ているから、前から見れば何もないように見えるのだが。


「横からか後ろから見られたら、単に間抜けな格好だぜ?」


「貴様っ?!勝手に横から覗き込むなよ、反則だろーが!」


・・・違うってば。


呆れたミコがジト目で観る。


「空に浮かぶなんてそうそう出来まいが!お前に出来るのか紅法衣!」


アクマンが言って来るのを黙って聴いていたミコが、


「リュート、ちょっと手を貸してよ?」


手招きして幼馴染に何かを耳打つと。

狐モドキは嫌そうな顔になりつつも、ミコの背後に廻り。


「さぁ、信者の皆さん。

 とくとご覧あれ!巫女様の空中浮揚でぇ~すっ!」


一言断ってから・・・



 ふわり 



挿絵(By みてみん)


ミコの身体が空に浮かぶ。


「おお~っ!巫女様が宙に浮かんでいるぞ?!

 アクマン様とは違って、天使の羽根が背に着いている?!」


信者達の驚愕の叫びが祠に充満した。


「「なんですって?!女神ミレニア様を指し除けて?

  ミコが空に浮かんだ・・・ですって?!」」


宿った女神も驚愕し・・・ようとしたが?


「にゃははっ!浮かんだ浮かんだ!さっすがリュート!」


笑うミコに。


「ミコ・・・お前なぁ・・・少しは軽くなれよな?!」


「むぅ。リュートはボクにダイエットでもしろと?」


背中の羽根を羽ばたかせる狐モドキに抱えられて。


「どうだ!これが掛け値なしの空中浮揚って奴なんだぜ?!」


自慢げにミコが言い放った。


「「損な・・・いかさま・・・じゃんか?!」」


女神が、宿るミコに頭を抱えさせられた・・・


いいのか?こんな事をしている場合なのか?!


まぁ、どうでもいい話ですね・・・ええ。


なにやってんだかなぁ?

ミコは信者達に自慢の技を・・・見せるんじゃねぇよ!


手品合戦かよ?!


次回 蒼翼の修道女 四話

相手は?何がしたいのか良く分からんのですが?

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