舞え!蝶のように 壱話
や! 俺は龍斗。
幼馴染の異世界転移に巻き込まれちまった、損な野郎さ。
ミレニアっていうドジな女神が召喚失敗しやがって。
転移した幼馴染の尊の煽りを喰らっちまったんだ。
辿り着いた異世界エクセリア。
そこで俺はいきなり身体を失っちまったんだ。
目覚めさせてくれたのはミレニアだったけど、そのままじゃあ消滅してしまう危機に陥ったんだよ。
おまけに転移した俺は、消滅の危機を乗り越える為に契約しなきゃならなかったんだ。
誰と?どんな?!
それは・・・言うのも恥ずかしいけど。
小学生くらいの躰になった尊となんだ。
どう見ても女の子になっちまってる尊とだぜ?
たまげるより情けないじゃないか、弟扱いだった幼馴染のシモベになるなんて・・・さ。
女の子になった尊は、白銀の龍を宿しやがった。
エクセリアには龍騎と呼ばれる魔法使いモドキが居るんだが、
よりにもよって尊が選ばれやがったんだ、ドラゴンライダーって奴に。
尊の下僕になっちまった俺は、龍騎の力で存在する事が出来る機械の躰にされたんだ。
空をも飛べる龍の機械。
少女に操られる魔法の龍騎に・・・だぜ?
目覚めた城には、魔王を騙る奴が居やがった。
ミレニアはそいつを倒したら帰れるって言ったんだ。
こんな悍ましい身体なんてごめん被るから、直ぐに幼馴染の尊と戦ったんだ。
勝利を納めて現実世界に戻ろうって。
そしたらどうだ!
勝っても帰れないどころか、契約も解除できない!
俺達はまんまと騙されちまってたんだ。
いや、召喚したミレニアだって・・・騙されていたらしいんだがね。
女の子になった尊と、ドラゴニスになった俺。
そして腕輪に宿る女神ミレニアとの旅が始っちまった。
目的は単純明快!
現実世界に帰るには、<魔王>って奴をぶっ倒したらいいんだ。
少女化した尊が、俺を不憫(?)に思ったのか。
モフモフな狐モドキにしやがったのには参ったけど、慣れりゃそれなりに善いもんだと分った。
なにせモフモフでケモ耳・・・俺が男じゃなかったらなぁ・・・って、思うなよ?!
これでも可愛いシモベを演じてるんだからな。
女の子になっちまった男の尊だけど、馴染みのある<ミコ>って呼ぶ事にしたんだ。
女神ミレニアもそう呼ぶしな。
龍騎のミコは金の腕輪と、ブレスレットを填めているんだが。
右腕のブレスレットには俺の魔力が宿らされているんだ。
白銀の龍によってミコは龍騎に変身出来るんだが、俺を纏う事にもなる。
ライダースーツって奴、知ってるかい?
ミコが変身を求めたら、俺はミコの身体に装着されるんだぜ?
白銀の翔龍騎って奴に変身するミコは、一時的に魔法力を龍から授かるんだ。
俺を纏ったミコだけど、相手に勝る力を手に出来る魔法のスーツを着るんだ。
少女だった身体は大人・・・いや、俺のもう一人の幼馴染<美子>の躰に変身する。
あ、美子は俺と同じ年でクラスメートの高校3年生だぜ?
少女化してるミコは俺より2つ下の高1・・・観えないだろうけど今は。
強力な龍騎の力は、ミコを姉と瓜二つに変えやがるんだ。
おい・・・不謹慎な目で観るな!
着るって言っても俺にはどうしようもないんだからな、誤解ないように。
しかも・・・だ!
少女の躰になっても、中身は男のままなんだぜミコは!
まぁ・・・俺には尊のままの方が善かったんだけど…ごにょ
とっとにかく!
俺達のエクセリアでの旅は始まったんだ。
魔王をぶっ倒して帰るだけ!
簡単だろうと思ったけど、これがまた・・・
旅路の途中で判ったんだが、この異世界にはとんでもない輩が居るんだよ。
<魔物>って奴等が。
そう!みんな知ってるジュエリーモンスターって奴等が!
倒せれば宝石をゲット出来るんだけど、逆に倒されちまったら・・・
一度ミコが戦闘不能にされた時は焦ったぜ?
巨大なミノタウロスにミコが伸し掛かられた時は・・・危なすぎた。
小学生くらいのミコに、狂牛が伸し掛かりやがったんだ。
もし女神ミレニアがトンでも魔法を撃たなかったらどうなっていたか。
強敵を倒した後は、お決まりのレベルアップが待っていたんだ。
経験値が跳ね上がると、ミコに変化が訪れる。
小学生が中学生くらいの躰になりやがった!
少し女の子らしくなって・・・危なさが増えたW
このままレベルアップして行けば、いずれは美子の躰と同じになるんだろうな?
目的を果たす事が出来たら、男に戻れる筈のミコ。
帰れるようになったらケモ耳狐モドキの俺も高校男子に戻れる筈。
新米女神のミレニアも、上級女神に名を連ねられる筈。
そうさ!俺達が魔王を倒した暁には!
そう・・・その筈だ。
だけど、みんなに知っておいて貰わなきゃいけない事があるんだ。
俺達が旅している理由を。
なぁ・・・みんなは知ってるかい?
知っていたのなら教えて欲しいんだ。
「魔王ってどこに居るんだよ?!」
うん・・・知らないんだよ俺。
異世界エクセリアに魔王はいる筈なんだけど。
どこに居るのか誰も知らないんだ・・・
「お願いだぁ!教えてくれぇーっ!」
まだまだ、俺達は帰れそうにないんだな・・・これが。
今日も今日とて・・・
「リュートぉっ!お腹減ったぁ!」
ミコが愚痴てやがる。
「まだ現れないじゃないかぁ!」
野良娘の姿で俺を観やがる。
「もう2日目だぜぇ?いい加減飽きて来たよぉ!」
お前は良い、俺を観ろよ。俺の格好を!
「なんでこんな美味しそうな村娘をカドワカサナイんだよぉ?!」
だから・・・ええいっもう!
「ミコ!お前が辺り構わず魔法を撃つからだろーが!」
青いケモ耳をピンっと張って、俺がミコに吠え返す。
「うっ?!だってぇ~・・・ヒマじゃんか」
おい・・・ヒマで魔法をぶっ放すのかよ?!
「そうでもしないと退屈過ぎるだろ!」
こいつ・・・自分の役割を分かってるのか?
村から少し離れた森の中。
依頼された仕事を遂行中なんだけど・・・
村長がギルドに依頼して来たのは・・・
「村娘達が、オークの群れに連れ去れたんじゃ!
連れ帰して貰わんと野良作業が出来んのじゃ!
もう直ぐ田植えの季節じゃから、一刻も早く連れ戻してくだされ!」
・・・だとさ。
相手がオークということもあり、ハンター仲間は挙って嫌がった。
戦闘能力も高く、おまけに群れだというから普通のハンターには荷が重いとは思うけど。
それよりも依頼料が安すぎた。
村長にはこれだけしか払えないんだろうけど。
「そんなはした金じゃぁ、誰も受けやしないよ」
ギルドに加盟している宿主タストンさんもそう言ったけど。
「まぁ、金欠のこいつ等にはちょうど良いかもしれないがねぇ」
俺達を指名しやがったんだ。
丁度その時、ミコが思いっきりしくじりやがって金欠だったのは認めるけど。
何を失敗したのかって?
それは本人から聴いて貰おうかな。
「ミコ、宿賃の支払いが1週間分溜まってるんだけど?
ちょうど依頼料に相当するんだわ、これがね」
「うう~っ、だって前の依頼でぶっ飛ばしちゃったから。依頼主を・・・」
そうなんだ、ミコの野郎はよりにもよって依頼主の貴族をぶっ飛ばしやがったんだ。
ちょっとキモイ親爺にお尻を撫でられただけで、全治4か月の重傷を負わしちまった。
医療費の請求と、依頼主からの報酬がなくなっちまったから・・・さ。
金欠になっちまったんだよなぁ・・・これが。
だから嫌とは言えなくなっちまったのさ俺達は。
依頼料は前払いで貰う事にして、早速村に向かったんだ。
村長に事情を詳しく聞いたんだが。
なんでも年若い村娘達ばかりが狙われたんだそうだ。
オークの実態は、人間の娘にとっては最悪だった。
ケダモノは産まれて来る全てが雄だという。
子孫を残す為には、他の種族の雌が必要なのだと…
そう考えると、確かに村長の心配は分からないでもない。
連れ去られて子を宿らされる・・・絶望を回避するには。
「分かりました!一週間以内に解放してご覧に入れますから!」
正義心の強いミコが請け負いやがったんだが。
問題はオークのアジトをどうやって見つけるかなんだ。
まず最初に森の上空から偵察したのだが、娘はおろかオークになんて出会えない。
居やがるのは、のほほんとした別の魔物ぐらいなもんだ。
探しあぐねた俺達は、囮作戦に打って出たんだ。
それが・・・今。
「お腹空いたぁ!オークを倒す前にお腹が減って倒れるぅ!」
依頼を何だと思っていやがるんだミコは!
「このままだったら狐モドキを丸焼きにして食べる事になるぅ~」
・・・おい、冗談には聞こえないんだが?
村娘に変装したミコがジタジタと文句ばかり言いやがる。
このまま傍に居たら・・・本当に丸焼きにされそうだ。
「勝手に悶えておけよミコ!俺は上空から辺りを探ってみるぜ」
狐モドキのリュートがミコを置き去りにして羽ばたいた。
モフモフの尻尾をくねらせ、背中の羽根で風を斬る。
「あ~っ!食べ物が逃げた!」
物騒極まりないミコが腕輪を填めている右手で追うが。
「ミコはそこで大人しく捉まってくれ!」
逃げ出したリュートによって放置ゲームに墜とされた。
「ばっきゃろー!食べもん見つけてこい―!」
・・・まぁ、いいでしょうミコはこのままでも。
狐モドキが飛び上がった後に残されたミコが、グチグチ文句を垂れている後ろで。
青黒い目が村娘を見張っていた。
それも複数の・・・獣達の眼が。
怪しい影がミコを狙う?
リュートは知らずによそ見してた?
じゃあぁ・・・あらま。
やっぱりこうなっちゃうんですねW
次回 舞え!蝶のように 弐話
あーっ?!そうなっちゃうんですねぇ?やっぱり・・・Orz