異世界の薄い緑の少年
その日の午後、私はあの銀杏の木の下で夢について考えていた。
ライラはヴィータさんと話があるらしい。
あの夢はなんだったのだろう。
この木も夢にでてきた気がする。
何か関係があるのだろうか。
「ねえ君、誰?」
上からいきなり声がした。
見てみると、薄い緑の髪の、私と同い年くらいの
少年が微笑んでいた。
誰かの声が聞こえた気がした。
「・・・ただの客人です」
「ふーん」
ぶわっと強い風が吹いた次の瞬間、その人は
いなくなっていた。
「・・・?!」
どういうことだ。
いきなり消えるなんて可能だろうか。
いや、私が知らないだけかもしれない。
ここは私のいた世界ではないのだから。
私の常識が通用しないことなんて、
この先たくさんあるだろう。
夢のことも考えるが、全く終わる気がしないので
保留しておくことにした。
屋敷に入るとメイドさんからヴィータさんが私を呼んでいると聞いた。
足音が響く廊下を歩き、ヴィータさんの部屋へ
向かう。
一体なんだろう。
この3日呼び出されたことはなかったので、
少し緊張する。
ノックをして入ると、ライラとさっきの少年がいた。
「カエデ、すまないね、来てもらって。
少し聞きたいことがあったんだ。」
「なんですか?」
「君、どうやってあの場所に来たの?」
少年が聞いてきた。
やっぱり声に既視感がある。
「別に・・・普通にですけど」
私が答えると3人が驚いた顔をした。
「それが何か?」
「カエデちゃん、その前に少し良い?
この子はね、私の家の使用人のシューキ。
一見優しそうに見えるけど無神経だから
話す時は気をつけて。」
「えー、そうかな?」
「自覚なかったの?!」
まるでコントのようにライラと少年が言う。
「ええと、カエデさん?カエデちゃん?
カエデ?」
「好きな呼び方で良いですよ。」
「じゃあ、カエデ。
君、魔法を使える?」
魔法・・・
「魔法!?」
つまり、空を飛んだり、火を出したりできるってこと?
「知らないの?」
「いや、知ってるんですけど、
詳しいこととか、自分が使えるかはちょっと」
「つまり、使ったことが無いんだね」
「はい。」
すると、3人は難しい顔をした。
「カエデ、明日、魔法鑑定を受けないか?」
そうヴィータさんが言ってきたのは、
夕飯が終わった時だった。