異世界のある女の子の話
初めは小さな家の中だった。
こじんまりとした、いわゆる古民家のような。
女の人が小さなバスケットを持って現れた。
女の子がテーブルで絵を描いている。
「◆□###。何描いてるの?」
「わたしとお母さんとおばあちゃん!」
「あら、上手ね~。お父さんは?」
「お父さんはね、これ。」
女の子は他のと比べて小さい物体を指差した。
「ふふ。そうなの」
「これね、おばあちゃんにあげるの!」
「そうね、きっとおばあちゃんも喜ぶわね」
「うん!」
「それなら一緒にこれもおばあちゃんに届けてくれる?」
「なに?これ」
「これはね、お母さんからのおばあちゃんへのプレゼント。おばあちゃんこれが好きだからね。お使い、できる?」
「うん!」
ほほえましい、親子の光景。
少し羨ましいな。
女の子はドアを開けて、走っている。
いきなり、風景が森に変わった。
「・・・めな・・・めんな・・・ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
森のなかで誰かが泣いている。
「大丈夫?」
女の子は声をかける。
そこからは何がどうなっているのか分からないくらい進む速度が速かった。
「・・・◆□###、どうか・・・幸せに・・・」
「・・・おばあちゃん?・・・おばあちゃん・・・お願い、返事して・・・」
女の子も女の子の祖母も泣いている。
あの木も、森も泣いている。
胸が、締め付けられた。
痛い。
お願い、泣かないで。大丈夫だよ。
慰めたい。
なのに、私の声は、姿は誰にも届かない。
女の子は成長し、古い本がたくさんある部屋にいる。
何の部屋だろう。
女の子がその中の1冊を見て、何かを唱え、
光に包まれる。
何これ。
魔法?
魔方陣も浮かぶ。
大きな魔方陣が。
いったい何の魔法を?
ふいに、女の子は私の方を見た。
かぶっていた赤いフードが落ちる。
肩の下で切り揃えた、私より少し青みがかった
黒い髪。濃い青の瞳。
私にそっくりな顔。
そして、呟いた。
「・・・今度こそ、幸せに。みんなと、一緒に」
薄い黒の布が重なっていく。
「待って・・・!」
私は叫んだがどんどん黒に包まれていく。
そして、真っ暗になった。