異世界での仕事3
チクチクチクチク・・・・。
布を縫う音、シミ抜きをする音、布が擦れる音。
静かな空間にその音達が響く。
それだけなら良いのだが、隣の机で見るからに不機嫌な表情をしている人がいる。
ミーシャさんだ。
「・・・契約のところ見られなかっただけでそんなに拗ねなくても良いんじゃない?」
シューキ、それだめなやつ!
火に油そそいでるの気づいてる!?
バン!
大きな音がして、恐る恐る見ると、ミーシャさんが立ち上がっていた。
そして、すたすたとシューキの方に歩いて、
「・・・あんたのせいでしょうが・・・。
許して欲しかったら理由を話すか、
王子の情報でもモッテコイ・・・」
と、針山を掲げながら脅す。
こわっ。
表情が般若のように見えるんだけど。
流石にシューキも青くなる。
「いや、それどっちも無理なんだけど・・・。
というか、その針山ちょっとどけて・・・」
「じゃあ、死ね」
「ひどっ」
「というか、そこにいるだけなら掃除でもしろ」
「あ、はい」
箒を持ち掃除を始めるシューキ。
ミーシャさんはシューキを脅して満足したのか元の顔に戻り、椅子に座る。
「んで?
大方魔法が発動する時に何か隠したいことがあるんでしょ?」
「「・・・」」
あからさまにピクっとして、黙る私達。
「図星か。
2人とも分かりやすいね。」
「ミーシャ、このことは・・・」
「誰にも言わないよ。分かってる」
ほっとする。
良かった。
ミーシャさんには今日だけで黒髪のことがばれている。
こんなんで大丈夫なのか。
「はい、この話終わり!
さっさと手を動かす!」
「は、はい!」
「はーい」
「おお、流石裁縫スキルレベル6。
きれいに直ってる」
「趣味でやっていただけなので、プロの人には
全然かなわないですけど・・・」
「いやいや、これくらいできるのすごいって。
しかも、その年で」
「あ、ありがとうございます」
誉められると照れる。
「さて、もう時間だね。
少し早いけどもうあがって良いよ」
「はい」
ライラは1時半くらいに来る。
今の時間ならゆっくり帰れるかな。
持ってきた物を片付ける。
裁縫道具も元の場所に戻す。
「あ、シューキ、もうあがって良いって」
「お、了解」
近くにいたシューキに伝える。
あ、そうだ。
机の上で昼寝している妖精達を見る。
可愛いなぁ。
「ペンタス、私達帰るけどどうする?」
私の声を聞くとペンタスは目をパチっと開き、
少し伸びる。
他の2人も目を覚ます。
『もうそんな時間?
私も一緒に行くわ』
『私も行くわ』
『私も』
「分かった」
ローブを着て荷物を持つ。
「用意できたなら行くぞー」
「うん」
『命令するな』
「してないよ・・・」
「それじゃあ、ミーシャさん、お疲れ様でした」
「お疲れ様ー。また明日お願いね」
「はい」
バタン
ドアが閉まる。
「ライラ驚くかな。
妖精3人も連れて」
麦畑を通る。
黄金色が風に揺れている。
「うん。多分ね。
妖精達はリンハム家にあまり来ないし」
「そうなの?」
「妖精は本来人にあまり関わらないから」
『元々私達が見える人間自体が少ないからね』
『国に5人いるかどうかだし、
50年くらい見える人間が現れない時もあった
わ』
『関わりたくても関われない』
関わりたくて関われない。
声をかけても誰も答えてくれない。
自分を見てくれない。
それは、孤独ではないか。
「寂しくなかった?」
『・・・もちろん寂しかったわ。
だけどたまに見える人間がいるもの』
『ミーシャに会った時は驚いたけどとても嬉しかった』
『ライラに会った時も嬉しかった。
ついでにシューキも』
「ついで・・・」
『シューキはついでで十分』
「それどういう意味?」
『そのままの意味』
「はぁ?」
『カエデがきれいと言ったのも
嬉しくなくはなかったわよ。
ま、当然だけど。』
私の肩に乗って照れ臭そうに言うペンタス。
「私も。
みんなに会えて嬉しい」
元の世界で1人だったのが嘘みたいだ。
ここに来てからいろんな人に囲まれている。
明日はどんな人に出会うだろう。




