異世界での仕事2
「お、戻ってきた」
ミーシャさんは服の修復の続きをしていた。
「髪型も可愛くしてもらったんだね。」
「はい。シューキが」
「男なのになんで髪結べんの?」
「ライラがずっと練習しているのを見てたら、
覚えた」
「へ~」
ドアの鈴が鳴り、お客さんが来た。
「あ、いらっしゃい」
「こんにちは。ミーシャ。
今日は買い取りしてもらいたくて」
「おお、きれいなワンピース。
これなら・・・300キルだね。はい」
ミーシャさんは女性が持っていた袋の中からワンピースを取り出し、お金を渡す。
「ありがとう。
そっちの子は?
新しい店員さん?」
「うん。そうだよ。
カエデ、おいで」
「は、はい」
ミーシャさんの横へ行く。
「カエデです。
よろしくお願いします」
「ええ、よろしくね。
ミーシャ、こんな可愛い子どこで拾ったの?」
「はは、秘密」
「あら、そうなの?
あ、私もう行かなきゃ。
それじゃあね」
「またのお越しを~」
ドアが閉まる。
「接客のこと詳しく教えていなかったね。
まず鈴の音がしたらいらっしゃいませって
言うこと。私は省略してるけど。
それから買い取りの値段だけど、
これは私がやるね。
逆に買い物の時は服に値札が付いているか
ら、計算してお金をもらう。
その後に値札を切って、袋に入れる。
分かった?」
「はい」
「さて、そろそろ来る時間だね。」
「来る?お客さんがですか?」
「う~ん。客は客なんだけど、朝に言った
変なのがね」
変なの・・・。
「いったいどういう人なんですか?」
「いや、人っていうか・・・妖精」
・・・妖精?
あの背中に羽がある?
「ここに妖精が来るんですか?」
「そう」
「というか妖精っているんですね」
「まあ、伝説上の生物って皆思っているけど、
いるんだよね」
さすが魔法のある世界。
妖精もいるのか。
「あ、来た」
「え」
『ミーーーシャーー!』
鈴のような高い声がした。
ドアの方を見ると3つの光が向かってくる。
「いらっしゃい。
今日は何の用で?」
『いつもと同じ!』
「はいはい」
ミーシャさんのそばに来ると、光はだんだん
変化して妖精になった。
それぞれパステルカラーのピンク、黄緑、青の服を着ている。
服とおそろいの色のきらきらしている羽。
小さな体。
整った顔。
「きれい・・・」
『あら、ありがとう。
ま、当然だけどね。
ミーシャ、この子は新しい子?』
「そうだよ。カエデっていうんだ」
『へ~。
良いのを雇ったわね』
『この子、魔力の量すごいわよ』
『転生者・・・ううん。
なんか違う』
「地毛は黒だからね。
転生者って?」
『たまに違う世界から生まれ変わってくるのが
いるの』
『でも、この子何か違うわ』
『今まで会ったのと違う』
「へ~」
妖精達とミーシャさんがテンポ良く会話する。
私は妖精を見て固まっていた。
というか、転移者なのばれそうじゃない?
「あ、あの!」
『わ、びっくりした』
「え、えと・・・」
どうしよう。
口挟んだけれど何も言うこと思い付かない。
「・・・そういえばカエデ。
妖精達の姿はっきりと見えてるの?」
ミーシャさんが助け船を出してくれた。
「はい、見えてますけど」
「へ~。珍しい」
「珍しい?」
『私達の姿が見えるのは波長が合った人間だけな
のよ』
「波長?」
なんだそりゃ。
『魔力にもそれぞれの質や波長があって、
私達を見るには、かなり高い質と波長が合う
ことが必要なの』
『どちらかが揃っていればぼんやりと見える』
「へ~」
『だからほら、ミーシャは波長が合って、
シューキは質が高くてぼんやりと見えるの』
「そうなんだ」
つまり、はっきり見えるのは珍しいと。
「ほらできたよ」
さっきからなにやらごそごそしていたミーシャさんが何かを持ってくる。
妖精達が興奮してキャーと言いながらミーシャさんの周りを飛び回る。
「これ・・・クッキー?」
「そう。こいつらクッキー目当てで来んの」
『だってミーシャのクッキー美味しいんだもの』
『最高』
「そうなんだ」
確かに美味しそうな匂い。
『カエデも食べてみて』
「あ、ありがとう」
ピンクの妖精がクッキーの1つを渡してくれる。
食べてみるとサクッとして美味しい。
「美味しい・・・」
「ありがと」
ミーシャさんは嬉しそうに笑う。
「クッキーをあげるなんて、気に入ったんだね」
シューキも横から勝手に取って食べる。
『ええ、私達のことをはっきり見れるのは珍しい
から』
『勝手に食べるな』
「俺も食べたいんだよ。別に良いだろ」
『良くない』
「良い」
『ダメ』
青いのとシューキが喧嘩を始める。
ピンクのが私の方を見て、
『カエデ、私を使い魔にしない?』
と言った。
「使い魔?」
『ええ、呪文は知ってる?』
「うん。」
数日前にライラに教えてもらった。
『私、あなたのこと気に入ったわ。
使い魔になってあげる。
その方が便利でしょ』
「たしかにそうだけど・・・」
使い魔は魔法のサポートをしてくれる。
魔法を使うのが格段に楽になる。
「でも、良いの?」
『良いの!
ほら、さっさとしなさい!』
「え、えぇ」
本当に良いのかな。
シューキとミーシャさんを見る。
「ん?良いんじゃない?」
「そうそう。本人が良いって言ってるし」
『そうよ!ほら!』
「う、うん。じゃあ・・・。
あ、名前は?」
契約には名前が必要だ。
『ああ、私、名前ないの。
カエデがつけて』
「えぇ・・・」
『ダサくないのにしてよね』
ダサくないのか。
ピンク、きれい・・・。
ピンクはさすがにそのまますぎるし、
フェアリーとかエルフとかもちょっと
なぁ・・・。
『まだ?』
「え、う~ん・・・ペンタスは?」
『ペンタス?』
「うん。ピンクの花の名前」
『・・・ふん、まあまあね』
お、なかなか嬉しそう。
『名前決まったんだから早くしなさいよ』
ペンタスはふわっと私の手の甲に座る。
「うん。
『我、そなたと使い魔の契約をしよう。
我、カエデと、そなた、ペンタスの
名に誓い、裏切ることなかれ』」
赤い光が輝く。
あ、ミーシャさん・・・シューキが目を塞いでる
から大丈夫か。
赤い魔方陣が現れ、光が強くなる。
優しい風がペンタスの羽や服、私の髪をなぞる。
やがて、光は私達を包み、体に吸い込まれるように消えていった。
「これからよろしくね、ペンタス」
『ええ、カエデ』
ペンタスはすごく嬉しそうに笑った。
「・・・ちょっと何すんの!?シューキ!」
「ごめんごめん」
ミーシャさんがシューキの手をどけて怒ってる。
「カエデ聞いて!
こいつ私の目塞いだんだよ!
契約しているところ見たかったのに!」
「え、あ、えと、なんかすみません」
「カエデは悪くないよ!
なんで見せてくれなかったの!?」
ミーシャさんはシューキの胸ぐらをつかみ、
今にも殴りそうだ。
「い、いろいろ事情があって」
「はあ?」
「あ、あのミーシャさん。
ちょっと力を緩めて・・・」
「良いからなんで目を塞いだか言う!」
「それはちょっと言えなくて・・・」
ペンタス
カエデの使い魔となった妖精。
パステルカラーのピンクの服と羽で、
妖精3人のリーダー。
ツンデレ。
黄緑の
おっとりしている。
黄緑の服と羽。
青いの
パステルカラーの青の服と羽。
よくシューキと喧嘩する。
他の2人と違って、口数が少ない。
「〜だわ」「〜よ」という語尾は使わない。




