新しい世界
人気のない路地裏
魔法陣が現れ、瞬間閃光に包まれる
光が収まると俺が立っている
さて、この世界の事を知らないとな
手のひらを上に向けると、丸い機械を出現させる
機械を操作すると、ホログラムが現れ、地図が表示される
「なんかこの地形見覚えあるな・・・」
まぁ、調べれば分かるか
機械をポケットにしまい、歩き出す
・・・とりあえず酒場か。ここの通貨も稼がないと何もできないしなぁ・・・
先程見た地図を思い出しながら酒場に向かう
この路地裏も・・・なんか見覚えがあるなぁ・・・
路地を抜けると目の前に人々や自動車が往来する大通りが広がる
その光景に驚く
「!?ここは本当に魔法世界か・・・?自動車がこんなにポピュラーなのは、科学が発展した非魔法世界でしか見たことがない・・・」
「おい!そこの怪しいやつ!」
思ったことを無意識に声に出していたらしく、ちょうど通りがかった男に怪しまれて声をかけられた
男は重装備の鎧を着ており、国旗のようなエンブレムが右肩と左胸に焼き付けてある
あのエンブレムもどこかで・・・
「警備兵か?」
「そうだ。貴様何者だ?見るからに怪しいが、身分を証明できるものはあるか?」
俺のつぶやきに律儀に返答し、身分証を要求された
「怪しいってだけでしょっぴいたりしないんだな」
「そんなことする訳が無かろう!私は、このゼルストフ王国王家直属のゼルストフ警備隊隊長!ガルベス・マネキンだ!そんな事をすれば、隊長として示しが付かん」
男ガルベスは腰に手を当て、ふんす!と胸を張る
「ゼルストフ・・・?ゼルストフ王国!?」
「そうだが、何を驚いている?それと身分を証明できるものを」
冷静に手を出し身分証を催促する
「あ、あぁ今出す」
ローブの胸ポケットから白のカードを取り出し手渡す
「ほう白のギルドカード・・・本当に貴様のか?確認のため幾つか質問させてもらおう」
「好きにしろ時間はある」
無意識だが、顔は面倒くさそうになっていたと思う
「発行地は」
「ゼーリア支部・・・マスターマルフィスのところだ」
「ふむ。発行年月日は」
「今から10年前の5月4日」
「合っているな。名前は」
「ルイ・シンテック」
「はぁ・・・アンタ警備隊の隊長だろ?ギルドカードアクセスの権限持ってるだろ。そいつは【保護カード】だ」
面倒くさくなって言う
「あぁ、アクセス権限は持っているが・・・保護カードのことを知っているのか」
ガルベスはそう言ってカードを指で軽く弾く
すると弾いたところから徐々にマッドブラックに変わっていく
「なんとギルドナイトのカード・・・これを持っていて、保護カードを知っているということは間違いないな。疑ってすまなかった」
ガルベスは頭を下げる
「疑って当然だこんな格好のやつ。しかしここはゼルストフだったか。通貨は10年前から変わってないか?」
「変わっていないが、何故そんなことを聞く?」
ガルベスはカードを白色に戻してからルイに返す
「長いこと離れていたもんだからな。それなら良かった。手持ちで宿ぐらいは借りれそうだ」
「そうか。魔導車には気をつけるんだぞ」
ルイは歩き出し、背中越しにその言葉を聞きながら、手をひらひらさせその場を去る
(ゼーリア支部のギルドナイト・・・たしか殆どの情報が秘匿されていたが、10年前に行方不明になったと言うことは聞いたな・・・それが戻ってきたにしてもあんな子供とは・・・)
ガルベスは巡回に戻るのであった
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しばらく歩いていると宿を見つけた
10年前にも使っていた宿だ
「まさかとは思ったがまだ残ってたか」
中に入ってみると、世代交代したのか、見た覚えのない人が受付をしていた
「いらっしゃいませ」
受付に挨拶をされる
「部屋に空きはあるか?」
「はいございます。お泊りですか?ご休憩ですか?」
「日数は決まっていないが、しばらく滞在したい。一部屋貸してもらえないか?部屋にこれといった要望はないから適当でいい」
「それでは、身分証明のできるものはお持ちでしょうか?」
「ギルドカードでいいか?」
「はい」
そう言われてギルドカードを提示する
「失礼いたします」
受付はギルドカードを受け取って機械に通す
「はい。結構でございます。どうぞ305号室の鍵になります」
鍵を受け取ろうとして、ふと思った疑問を投げかける
「ん?日数不明で長期間滞在なのに前金はいいのか?」
以前の世界では、日数不明の長期滞在者には前金を取っている宿が多かったからだ
「はい。必要ございません。銀のギルドカード以上の保有者からは、前金を頂いておりませんので」
「支払能力有りと判断されるわけか」
「その通りでございます。それに万が一のことがあってもギルド本部から補填が出ますので」
万が一というのは、無賃宿泊というより、死亡のことだろう
「なるほど、助かる」
改めて鍵を受け取って、部屋に入った
日も落ちかけていたので、ベッドに入り、寝ることにする
さて、広いこの世界で、あいつに再会できるか・・・
明日はゼーリア支部に10年ぶりに顔を出そう。あいつのことはそれから考えるか・・・