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そして世界はまた進む

 もしも永遠の命があったら。

 そんなことを思ったことは無いだろうか?


 何があっても死なない。

 永遠に続く時間。


 もしも転生できたなら。

 そんなことを思ったことは無いだろうか?


 今の人生は面白くないから、誰かを助けて車に引かれて、異世界に行く。

 魔法を使って魔物を倒す?

 貴族になって姫様と結婚する?


 嗚呼、素晴らしい。


 きっと素晴らしい。


 素晴らしいのだろう。


 おっと、しゃべり方が変なのは気にしないでくれ。

 只の皮肉だ。


 何も知らない人間はそんなことを願う。

 終わらない時間の苦しみを知らないから。

 覚えている苦しみを知らないから。


 だから何も知らずにそんなことを願う。


 人に刺される苦しみを知っているだろうか?

 知らないだろう?


 目の前で大切な人が死ぬ苦しみを知っているだろうか?

 知らないだろう?


 私は知っている。


 何度も何度も、人に殺された。


 理由は様々。


 戦争だから、敵だから、気分で…。


 何度も何度も。


 火炙りにされたことも片手の指では足りない。

 あれは嫌だ。


 焼かれる途中で気絶できたら儲けもの。

 さもなくば死ぬまで痛みを感じ続ける。


 首を切られたときの喪失感はつらい。

 切り口からだんだん命が流れていく気がする。


 他には…


 おっとすまない。

 つい熱くなってしまった。


 まあ、なぜこんな話をしたかと言うと、私は死ねないのだ。


 いや、死んでも転生すると言った方が正しい。


 一回目。

 あれは何回前だったか。1524回前だったかな。

 私は地球に生を受けた。

 優しくて、少し厳しい。そんなありきたりな家に生まれた。

 少し覚えるのが遅い、そんな普通の少年だった。

 普通のサラリーマンになって。とある日に、子供を助けて死んだ。


 二回目、私はとあるファンタジーな世界に生まれた。

 貴族として。

 魔法を覚えて強くなって。

 そして寿命で死んだ。


 三回目も四回目も。


 何度も何度も死んで生まれて。


 いつの間にか私は疲れていた。

 押し潰されそうになったんだ。過去の記憶と自分の運命に。


 そして何も感じなくなった。


 喜びも、悲しみも。怒りも苦しみも痛みも。


 全てを何も感じず浪費していく。


 そしてまた私は死んで、生まれ変わる。


 何度も何度も。

 1525回目、これが最後だと祈って。

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