第七話 解答
「難しいですね」
ウリエルとハニエルは異口同音で呟く。その言葉が気になったサマエルはウリエルの携帯電話の画面を覗く。
「そんなに暗号は難しいのか」
サマエルが聞くと二人は首を横に振った。ウリエルが人差し指を立ててサマエルに説明する。
「暗号はそこまで何回じゃないけれど問題はジョニーと日向沙織に暗号が解読できるのか。そこがクイズのポイントですよ」
ウリエルの説明にハニエルが言葉を続ける。
「ご存じのようにレミエルさんは敵の罠を見破る洞察力はあるけれど推理力は低い。だからレミエルさんは絶対にあの暗号を解読できないでしょう。ここで問題になるのは日向沙織の推理力。彼女の推理力がレミエルさんより高ければ解読可能。低ければ解読不可能。本当の問題は日向さんの推理力はレミエルさんより高いのか。ということでゲームを始めましょうか。今からウリエルさんの携帯電話に送られたメールをこの場にいる八人に見せるので、クイズの答えを考えてください。それではゲームスタート」
ハニエルが場を仕切りウリエルの携帯電話をサマエルに渡す。それから順番にサラフィエルと鴉たちに携帯電話を回され、八人はクイズの答えを考える。
五分後八人は丸いテーブルを覆うように囲む。そこでウリエルは紙を机の上に置き呼びかける。紙は縦に二つに折られている。その折れ線に合わせて縦線が引かれる。ウリエルはその線を挟んで○と×を書き込む。
「日向沙織は暗号を解読できると思う人は手を挙げてください」
ウリエルの質問を聞きサラフィエルとサマエル以外の六人が手を挙げる。
ウリエルはその結果を○と書かれた欄に書き込む。その結果にサラフィエルは不満を口にする。
「おかしいやろ。あの暗号は少し意地悪やん。せやから正解の一歩手前で間違えると思うで」
このサラフィエルの意見にサマエルが首を縦に振る。
「そうだ。こんな暗号。俺は解けなかった。レミエルより賢い俺が解けないから日向沙織に解けるはずがない」
サマエルが自信満々に答えるとウリエルは目を点にする。
「それは自慢ですか」
ウリエルが尋ねるとサマエルは首を縦に振る。
「当たり前だ。レミエルより推理力が高ければ解読可能なんだろう」
サマエルの理屈は間違っていないとウリエルは思った。だがこの時既に賭けの答えが決まっていた。そのことを八人は知らない。
その頃コンビニの駐車場に停車したポルシェ・ボクスターの車内で日向沙織が暗号メールを凝視する。そして彼女は携帯電話のインターネットサイトで検索を行う。確認を済ませた彼女は暗号解読の糸口を発見してジョニーに報告する。
「暗号が解けました」
日向沙織が唐突に声を出すとジョニーは驚く。
「それは本当か」
「アルファベットがABCDEと五種類しかない理由が分かれば簡単です。ABCDEは子音を示しているんです。そして数字は母音を表している。この法則で変換するとえふけかまえらおのえき。それを並び替えると駅前のカラオケエフ。愛澤さんの行き先はおそらくカラオケボックスです。ヒントのようにカラオケボックスは予約が必要な場所です」
日向沙織は推理を話し自分の携帯電話をジョニーに見せる。
「横浜駅の前にあるカラオケエフは二十四時間営業のカラオケボックス。ここに行ってみる価値はあると思います」
「分かった。とりあえず横浜駅に向かえばいいんだな」
ジョニーは自動車のキーを回し自動車を横浜駅まで走らせる。