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愛澤春樹に平凡な日常は訪れない。  作者: 山本正純
後編 愛澤春樹の激闘
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第二十一話 始末

 その頃レミエルは百ヤード離れたコンビナートの四角い屋根の上からライフルのスコープを覗きながら不満を口にする。

「本当は七百ヤードから狩りを楽しみたかったが狙撃に適したスナイプポイントがここしか見つからないとは。面白くない」

 一方右肩を撃ち抜かれた戸川は怒号を叫び銃口を怪盗に向ける。

「怪盗リアス式海岸。証人なんて必要ない。だからお前をこの場で殺す」

 戸川は躊躇することなく拳銃の引き金を引く。その直後愛澤が怪盗の体を押し倒し、戸川が放った銃弾を受けた。銃弾は愛澤の右頬をかすめ、そこから数滴の血液が落ちる。

 

 それから一秒後コンビナートにパトカーのサイレンの音が鳴り響く。戸川は舌打ちして信者たちに呼びかける。

「撤退。怪盗の暗殺は日を改める」

 戸川の指示に従い信者たちが闇の中に消えていく。一方怪盗もパトカーのサイレンの音に驚き、愛澤の体をどけ盗んだルビーの指輪をその場に捨てる。その後で怪盗は再びバイクに跨り逃走する。

 怪盗リアス式海岸が運転するバイクとパトカーがすれ違う。すれ違った一台のパトカーは怪盗のことには目をくれず、白いヤンボルギーニ・ガヤンドが停車している第六コンビナートの手前に停車する。

 そのパトカーの運転席から現れたのは一人の警察官。その警察官は愛澤の目の前で変装マスクを剥がす。夜空の月に照らされ本来のサラフィエルの素顔が現れた。

「作戦通りやな。まさかパトカーを盗んであいつらにサイレンの音を聞かせ撤退させる。中々面白いわ」


 サラフィエルが作戦を称賛するとうつ伏せに倒れていた愛澤が立ち上がる。

「はい。まさかこんなに上手くいくとは思いませんでした」

「ほんで当初の目的は達成できたんか」

 愛澤は先ほど怪盗が捨てたルビーの指輪を拾いながら答える。

「大丈夫でしょう。依頼人の鮎川源一郎は大量の活動資金を渡すことになるでしょう。怪盗の獲物は取り返したから。これが本物なんかは鑑定しないと分からないことですけど」

「怪盗には『神の右腕』の連中とのドンパチで逃げられたちゅうわけやな。せやから俺らの目的は達成できんかった」

 サラフィエルの言葉にラグエルが首を縦に振る。

「そうですね。怪盗との対決は次の機会に持越しですか」

 それから数秒の沈黙が流れ、パトカーの助手席からハニエルが降りラグエルに駆け寄る。

「ラグエルさん。大丈夫ですか。頬から血が出ていますけど」

 ハニエルが心配するとラグエルは笑顔を見せた。

「大丈夫ですよ。少し銃弾がかすっただけですから。運転にも支障がありません」

「ほんならそろそろ俺らも撤退しよか」

 サラフィエルはパトカーに視線を向けながらラグエルが運転する自動車の後部座席に乗り込む。それに続くようにラグエルが運転席にハニエルが助手席にそれぞれ座る。


 数秒後ラグエルがキーを回し自動車が走り始める。自動車のバックミラーにサラフィエルたちが乗り捨てた一台のパトカーが映る。

 一瞬バックミラー越しにパトカーを見るとラグエルはハンドルを握り呟く。

「後始末はお願いします。レミエル」

 レミエルは百ヤード離れたコンビナートの四角い屋根の上でライフルのスコープを覗いている。スコープからラグエルが運転する自動車が消えたのを確認すると彼は銃弾でパトカーを撃ち抜く。銃弾によって自動車のエンジンが破壊され、パトカーが突然爆発した。

 夜空の黒煙が昇る。その様子を目に焼き付けながらレミエルはスナイプポイントから姿を消した。


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