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愛澤春樹に平凡な日常は訪れない。  作者: 山本正純
後編 愛澤春樹の激闘
16/22

第十六話 排除

 午後八時五十五分。高層ビルが建ち並ぶ東京の摩天楼。この日の天気は晴れていて、綺麗な夜景とのコントラクトが印象的だった。

 東京にあるアユカワビルは地上五十階建ての高層ビル。その三十階に存在する部屋に黒いスーツを着た男たちがいる。四十名ほどいる屈強な男たちは部屋の中央に置かれたショーケースを囲むように立っている。

 赤い絨毯で床が覆われた部屋に神谷サツキが入ってくる。

 神谷はショーケースの回りを囲んでいる刑事たちに指示する。

「怪盗リアス式海岸の予告時間まで残り五分。予告時間が過ぎるまで一歩も動かないでください」

 神谷サツキはショーケースに入れられたルビーの指輪を見ながら、右手で握り拳を作る。

 ショーケースの回りを囲んでいる刑事たちの中には警視庁一の柔道の達人がいる。それだけではなく、ショーケースは完全防弾性のガラスが使用されている。無理矢理開けようとすれば、うるさいアラーム音が鳴り響くことになるだろう。

 刑事たちは獲物が盗まれないように必死である。


 予告時間まで残り二分。ビルが突然停電状態になる。だが刑事たちは動揺しない。怪盗リアス式海岸の仕業だろうと全員が心に言い聞かせた時、天井の一部が開けられる。そこから黒い影が降り立つ。

 その影を見た神谷サツキは黒い影に話しかける。

「怪盗リアス式海岸。やけに早い到着ですね。予告時間から二分も早いではありませんか」

 黒い影は沈黙を続ける。神谷サツキは刑事たちに指示を与える。

「そろそろ暗闇に慣れたころでしょう。それでは作戦通り怪盗リアス式海岸を逮捕します」

 ショーケースを囲んでいた刑事たちは二手に分かれる。一方はショーケースを守り続け、もう一方が黒い影を囲む。これなら黒い影が影武者だとしても盗まれる心配がない。

 神谷サツキが安心した時、黒い影は手にしていた日本刀の鞘を抜く。

 そして黒い影は回りを囲んでいる刑事たちを一人ずつ日本刀で切り付ける。刑事たちの攻撃を避けながら、黒い影は着実に刑事たちを倒していく。


 午後九時。黒い影を囲んでいた二十名の刑事たちは全員気絶した。その直後、部屋にテニスボールのような大きさの球が投げいれられる。その球からは白い煙が溢れ、煙を吸い込んだショーケースの回りを囲んでいる刑事たちと神谷サツキが眠った。黒い影は咄嗟にガスマスクを装着する。

 

 それから黒い影の前に白い仮面や白いローブで身体的特徴を隠した人物が姿を現す。その人物は怪盗リアス式海岸と呼ばれている。

 白い人物は胸元に仕込んだボイスチェンジャーで声を出す。

「お前の仕業か。私より二分も早く停電するように仕組んだのは。聞いていないですよ。私とは別の盗賊が私の獲物を狙っているなんて」

 黒い影は重い口を開く。

「勘違いしないでください。私は邪魔な警察を排除しただけ。そしてあなたも排除します」

 黒い影は素早く日本刀を振りかざし、催眠ガスを出しているボールを壊す。その様子を見た怪盗リアス式海岸は拍手する。

「素晴らしい。良いものを持っていますね」

「名刀黒薔薇。久しぶりに使ったけれど、切れ味は抜群」

「無益な戦いはやりたくないものです」

 怪盗はショーケースに近づく。そしていとも簡単にショーケースを開ける。

「あの屈強な刑事たちに紛れ込んで、さりげなくショーケースのネジを外した。ただそれだけのことですよ」

「変装も得意なんですね」

「基本技術ということで得意というわけではない。それではいただきます」

 怪盗リアス式海岸はルビーの指輪を右手の人差し指に填め、逃走する。

 その後黒い影はガスマスクを取り外す。黒い影はスマートフォンを取り出し電話をかけながら出口に向かい歩く。

「ハニエルです。ウリエルさん。作戦通り怪盗リアス式海岸と遭遇しました。私は屋上に向かいます」


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