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愛澤春樹に平凡な日常は訪れない。  作者: 山本正純
前編 愛澤春樹の会合
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第一話 仕事

 平成二十五年四月五日の午前八時。警視庁で緊急記者会見が行われた。その会見場の席には不満そうな顔をした千間刑事部長が座っている。

 ことの発端は二時間前のことだった。その日の早朝警視庁の刑事部長室を喜多参事官が訪問した。

 刑事部長室に入室した喜田参事官の顔はどこか脅えているようだった。椅子に座っている千間刑事部長は心配そうに彼に声を掛ける。

「何だ。そんな顔をして」

「怪盗リアス式海岸から予告状が届きました。ご存じですよね。怪盗リアス式海岸」

「捜査二課が追っている盗賊だろう。そいつがどうした」

「ですから予告状が届いたと言いましたよね。本日の午後九時アユカワビル屋上に展示しているフォーチュンルビーリングを盗むそうです。世間では怪盗リアス式海岸の動向に注目しています。だから一度刑事部長として怪盗リアス式海岸に関する記者会見を行ってほしいというマスコミの要望が届いています。どうしますか」

「そんなことはどうでもいい。記者会見なら捜査二課の課長にでも任せればいい」

「捜査二課を蔑ろにしていますよね」

 喜田参事官が思ったことを呟くと、千間は机を叩く。

「俺は記者会見が嫌いだ」

「お言葉ですが刑事部長としての仕事をやっていませんよね。刑事部長は捜査一課を纏めるのが仕事ではありません。刑事課の刑事たちと纏めるのが刑事部長の仕事です。ということで記者会見への出席をお願いします。世間では捜査一課絡みの記者会見しか顔を出さない刑事部長としてあなたは有名になっています。そのイメージを脱却するためにも記者会見に出席してください」

 

 そして現在に至る。その会見はテレビで生中継されている。沢山のテレビカメラや新聞記者たちが集まっている中、千間刑事部長の隣に白髪交じりに前髪を七三分けにした短髪の男が黒いスーツを着て座った。

 その男の到着と共に緊急記者会見が始まる。

まずその男が椅子から立ち上がりマスコミ関係者に頭を下げた。

「私は警視庁捜査二課課長の坂上源次です。本日は朝が早い中お集まりいただきありがとうございました」


 坂上が挨拶を行うとベージュ色のミディアムカットの女が手を挙げて発言する。その女は腕に『東都新聞社』という腕章を付けている。

「坂上捜査二課課長。なぜこのタイミングで怪盗リアス式海岸絡みの記者会見を行うのですか」

 その新聞記者の質問を聞き坂上が咳払いする。

「質問は最後です。皆様に今回集まっていただいたのは怪盗リアス式海岸についての正しい知識をお伝えするためです」

 この会見目的に多くのマスコミ関係者がヤジを飛ばす。

「盗賊一人逮捕するのに何か月かかっていると思う」

「そういう会見は怪盗を逮捕してからにしてよ」

 次々と飛んでくるヤジを聞き千間がマイクを握る。

「静粛に。ヤジを飛ばしたマスコミ関係者は会見場から退室していただきます。それでは坂上捜査二課課長。会見を続けてください」

 刑事部長の活にマスコミ関係者たちが黙る。


 静寂な会見場で坂上は会見のために用意した原稿を読む。

「怪盗リアス式海岸は平成二十四年の十一月十三日に東都美術館から宝石アダムス・サファイアを盗んだのを皮切りに、次々と宝石を盗んでいき、平成二十四年十二月二十八年東都ホテルに展示されたブルースカイ・エメラルド・ペンダントを盗んでからしばらく活動停止。そして平成二十五年四月二日。インフィニテット・オパールを盗み再び行動を開始しました。怪盗の犯行は海外で複数確認されています。逃走方法はバイクという現実的な方法ですが怪盗のドライブテクニックはプロのレーサーと互角かそれ以上の実力を兼ね揃えています。日本国内で発生した怪盗による窃盗事件の被害総額は十億円を超えています。我々捜査二課は半年の期間怪盗リアス式海岸について捜査活動を行いましたが、何一つ分かりませんでした。怪盗の目的や正体。全てが謎です。以上がこれまで捜査二課が掴んだ怪盗リアス式海岸の情報です」

 

 淡々と記者会見が進みカメラのフラッシュが会見場を照らす。坂上は息を整え会見を続ける。

「ここからが本題です。実は本日早朝警視庁に怪盗リアス式海岸からの予告状が届きました。今度こそ怪盗を逮捕します」

 

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