第2編。俺のための!
「はあ…」
夕方になり、たくさんのショッピングバックを持ち自分の部屋に帰ってきたシナは、荷物を下ろしたばかりにそのまま入り口に崩れてしまった。この部屋に始めて入った時もここまで多くなかったのにと思い、思わずため息が漏れてしまう。
幸いに、所長さんが仕事の時間を調整して、下着以外の服たちの買い物にも手を貸してくれた。一人だったら、これくらいでは済まなかったのだろうとシナは思っていた。
シナは一息した後、体を起こして研究所から貰った紙封筒を取り出してみた。
『シダロク研究所の新入研究員となった皆様に歓迎の言葉を申し上げます。
「漢信我」様のコードネームは「黒き百合」となります。後、研究所に訪ねてもらう時、コードネームを提示してもらうと研究所内を自由に出入りすることが出来ます。また、貴下は研究所からの全ての福治をもらえるようになります。
お揃いのカードは研究所から提供する法人のクレジットカードになります。
研究の間、発生するの費用と必要な生活の全てを決済の際、こちらのカードをご利用頂けるようになります。
ただし、個人の都合で研究を中止する場合、消費してもらった全ての費用の三倍以上の違約金を返却してもらうことになりますので、カードのお使いの場合と中止の意思を伝えることは慎重にお願いいたします。』
じっくり読んでみると、相当恐ろしい意味になる。これって、法律的に出来ることなのかと眉をひそめたシナはま、中止しなければどうでもいい事でしょと思い読み通しただけだった。一緒に添付されていたカードには黒き百合の印がかなりゴージャスな形で描かれている。そして、その印の下にはシナの名前が英文で書かれていた。
実は先、ATMでカードの残りの金額を確認してみたが、余りにも大きい金額にびっくりしてしまい、その足でカードだけ取り出して帰ってしまったのだ。いつもの物足りない生活費で悩んでいた彼女にその金額は、まさに何の神の仕業のようなものであった。
「別の意味でびびってしまったな。これって、マジなの?見違いじゃないよね?うわ、0が何個だったっけ?」
リアリティーを忘れてしまった0の数は、どんな人でもその誘惑から手易く逃れないよう、しっかりと書かれていた。改めて、研究の参加が怖くなるほどの…
まるで、初めからボランティアの思いで提供しているようで、この程度なら、中止する時の三倍の違約金だって当たり前なものだと感じてしまう。自分が研究所の偉い人だとしても、これくらいの投資なら、どんな研究でも中止したくないだろとシナは思った。
『我が研究所では貴下の研究と日常生活のどちらも両立できよう、不便の無い福治を提供する予定であります。オリエンテーションの個人面談と提供してもらったの情報は、研究員の個人に必要な物の把握と、これからの福治の種類の選定などに使われます。
添付の2ページには研究への集中を助けるために提供する福治とサービスの詳細が書かれております。
黒き百合様には、貴下の進学予定のQ大学校の周りの空家リストをお送りします。予めに訪問し、お望みの空家のナンバーを選んで報告してください。そのナンバーに該当する空家を研究所から購入し、貴下に提供する予定でありますので、慎重に選んでください。』
その文を読んで、シナは空家リストに書かれていた場所を訪ねた時を思い出した。
リストの家たちは全部、チラッと見ても高い、学校から遠くない所に位置している高級住宅で、不思議なほどに全ての家が特定の条件を満たしていた。
「部屋は3つ以上で、水もガスも完璧。周りにノイズなしで庭があり、適当な位置には繁華街もある…」
全く、恐ろしい経験だったと言い切れる。一体、どんな研究でここまでするのか、どうしても理解が出来ない。
もし、自分の見間違いじゃないかと思い研究所に問い合わせしてみたが、研究所では「お望みの家はお決まりでしたか」とか先に聞かれてしまい、まだですっと言ったら「少なくとも一週間以内にお願いいたします」とか言われてしまった。しかも、電話に出たのは例のあの双子みたいな監督官だった。
「これって、人生最大のチャンスよ!そう、そう」
お陰でシナはいつもよりもはやっていた。
ようやく現実に戻った彼女は、片付けの暇もなく荷物だらけの、自分の部屋を見渡した。結露を何とかしようとちゃんと運転したことも無かったボイラー。一人暮らしは不安だからって玄関口に備えてあるアルミの野球バット。冷蔵庫に貼り付けた紙は磁石を使うと、電気代を増やすって聞いたので、テープで貼っておいたんだ。
短い間だとしても、もうあちこち手を加えた部屋も、もうすぐ引越しすると思うと、なんか寂しい思いもした。この部屋をじっくり見る暇だって彼女には許されなかったのに。仕方ない事だった。高校時代から伯母ちゃんに隠してバイト掛け持ちしながら稼げてきた。それでも伯母ちゃんからの生活費まで合わてもいつも足りなかった。
服と下着はトタルで30枚にも足らず、選択代の節約のためだってカラーも白と黒服ばかりで碁石みたいだ。今までの節約の身についた日々を思い出しながらシナは決意した。
「そう。あくまで支援金で、自分のお金じゃないもん。真面目に貯金して、研究が終わっても暮らせる自分の家を備えなきゃ」
実の夢は伯母ちゃんとてっきりした家で、ずっとずっと一生に住むのだった。でも、伯母ちゃんは結婚準備をすることになり、彼女の夢にも修正があった。そう、今は自分の時間をたっぷり楽しめる家を手にすることが夢になった。
としても、シナ自分もその夢は叶えにくいというのは心のどこからで予感していたので、諦めるのが早かった。そして、今回の研究所への就職はささやかな夢でも叶える絶好のチャンスであった。だから今、彼女は人生の中で一番幸せなひと時を過ごしていた。
「よっしゃ!」
頑張ろうと呟いた後、シナはまた後ろのページへと視線を移した。
『添付3には、黒き百合様への1番目の課題となります。記されているいるのはある人物の身体サイズです。このサイズを確認した後、下着と日常服、外出服と征服などを購入してください。』
「全く、苦労したんだよ」
一生、ジンヘの二人きりで生きてきたシナにとって、男の服は道の領域と同じ。
中老年の男と、娘ではなさそうなまだ学生の気配を全部消していない少女。二人の男性服探し組は普通に見られないから、周りの視線を感じるしかなかった。お兄ちゃんの誕生日プレゼントだと誤魔化すと、店員はどこかはしゃいては色々聞いてきた。
「あら、お兄さんの?お兄さんって、もしかして歌手?それとも運動選手とか?すっごくハンサムそうな数字ですね」
ただのすれ違う褒め言葉なのかも知れないが、彼女の言葉によると、服の持ち主になる人物は凄く引き付いた体つきをしているとか。所長の反応も大体同じだった。
身体建長だけではなく、体つきもいい男か。シナは説明会のときの内容を再び思い出した。
「シダロクプロジェクトというのは、特定の国の留学生たちを観察することで、彼らの文化と経済などを理解し、我々たちとどの違う所を調査することを主目的にしているプロジェクトでございます。異国の調査に研究所まで備えている理由は時期、理解してもらえるだろうと思っております。基本的には一人の留学生に一人の研究員という形で二人一組として行動してもらい、これにより発生する費用の一斉はこちら研究所から支援金として提供されますので、経済的な部門ではご心配しなくても宜しいかと思います。しかし、留学生が正式にこちらに到着するまでの事前の準備と基本的だ手続きは皆さんの手助けが必要になりますので、どうか、ご協力をお願いいたします」
とか言われたっけ。
その通りなら、ここまで準備してきたことは全部、あの実験対象というある中学生のためのものだろう。これからの課題たちの難易度もそう簡単に想像がつかないけど、結構難しくなりそうな予感は消せない。
「ああー知らん!」
ただ、今はまだ貰ってもいない課題への心配より、今の幸せを存分感じてみたかったシナは直ぐに立ち直した。そして買ってきたばかりの服たちをバックのままたんすに押し込みながら、独り言で覚悟を決めていた。
「そうね。死ぬわけでも無いんだもん。何とかなるって!」
* * *
一月は瞬く間に立ち去っていた。肌に鋭く刺さる木枯らしが訪ねてくる2月の中旬の頃、シナは研究所からの課題が締まっている封筒をもっらていた。ちょうど、Q大学校の新入生オリエンテーションの二日前のことだった。
『毎度お疲れ様です。黒き百合様。最後の事前課題のお知らせです。』
「やっとね……」
最後って単語にシナは感動の溜息をついた。この一ヶ月の間、シナは見たことの無い男のため、外国人登録証―名前も結構長く、覚えるにも時間がかかったーと信用の確認やその他の様々な複雑な手続きを一人で何とか解決してきた。
新しい家を決めることだけではなく、その家の中に入る家具や小物も自分の物と彼の物、両方を購入しなければならなかった。それどころじゃない。自分の入学手続きでも精一杯なのに、彼の分まで二人の入学手続きを成し遂げた時には、もはや限界だと思われるくらいだったーしかも、留学生の手続きの方が一般の入学手続きよりきついと始めて知ることになったー。
その他にも、留学生として韓国の生活に不便さがないよう、必要なものならなんでも、シナの基準で考えて購入しなければなれなかったけど、女性であるシナには男性が普通、どんな物を必要とするのかもさっぱり分からない状態だった。男性用品のコナーの前で一人で立っていると、恥ずかしい場合もしばしば出会うことも何度かあったのだ。その中にはどこに使うのか、何で使うのか、全然理解できない物も何個か含まれていた。
「黒髪の鬘と、茶色のコンタクトか……こっちは選択事項だし、別に買わなくてもいいでしょうね」
そのつもりは無いけど、もし中止の場合には、今使った費用の三倍も返却することになるから、購入にも慎重になるしかない。そんな訳でシナは、選択事項に書いてある鬘とコンタクト、サングラスなどのものは一つも買っていない。
『今までの忠実なご協力に感謝の言葉を申し上げます。明日からは本格的な研究が始まります。添付に含まれている耳栓は、今夜必ず着用してからお休みになってください。もし、着用せず発生する場合の起きる事故に対しては研究所では責任を取りませんので、ご注意ください。』
「耳栓?」
シナは封筒の奥から両方の赤い耳栓を取り出した。レッドワインの色に、形も結構かわいい。耳栓の昨日だけでなく、耳飾でも使えるそうなデザインだった。
「なんて派手な耳栓……」
勿論、必要以上の贅沢はしない主義のシナには、別に良かったけど。
でも、着用しない場合起きる事故に対しては研究所では責任を取らないというから、一応両方着用しといた。でも何か変な感覚に首を傾げたシナは両手をパチと叩いてみた。
「え、何?全然聞こえるけど。これって、防音機能全然駄目じゃん?」
もし壊れたんじゃ…とか思い出しながら、彼女は封筒の中で別も物があることに気づいた。
濃い紺色の長いリボン。何の模様も無いけど、高級に見える布で作られていたが、触ってみると触感も一般の布では無い感じがした。
見慣れてない素材の感覚にシナはそのリボンをじっくりと見つめた。
「…髪飾りのリボン…かな?」
それからシナは研究所からの課題手紙を読み続けた。
『一緒に同封されている物は担当の留学生と人目に分かるための徴のものでございます。留学生と出会えるまで、体に付けていてくださるようお勧めしております。相手もまた黒く百合様の物を一つお持ちですので、ご参考にしてください 』
それを読んでやっと、いつか研究所に自分の物を一つ提出してくださいといわれて、ちょうど持ちかけていたシャープペンを出したことを思い出した。なら、これもあの留学生のものであるはず。リボンで結ばなければならないくらいに長い髪を持っているのかなと思ってしまう。
しばらく考え込んでいたシナは、そのリボンで自分の髪を結んだ。
「これなら、いつも体に付けてるってことよね?」
『指定された耳栓と標識を体に付けるのが最後の事前課題となります。明日からは本番の研究が始まりますので、同日到着した指示の通に研究所を尋ねてください。今までの研究事前課題のご協力に再び感謝の言葉を申し上げます。また、黒き百合様の健闘を祈ります。』
ちょっと最後の部分が怪しい手紙だった。耳栓をしないかも知れないのに、どうやって課題の成果を判断するつもりなのかなとか思いながら、シナは全ての準備を終わらせてからベッドの上で横になった。
明日はいよいよ研究の始まりもあるけど、同時に新しい家への引越しも予定されている。だから、彼女の部屋は一日を過ごせる簡単な用品以外には荷物だらけであった。
横になったシナは何だか寂しい気持ちがして、自分から直接行って発給貰ってきた外国人登録証を取り出した。写真も国籍も付いていないやけに怪しい登録証には、明日で会える留学生の名前は大きい文字で書いてあった。
「ダストミヤ・ゼン・アティルタ…か」
聞いたことの無い形で覚えにくいと思った名前。色んな手続きの中で課題のせいでやっと覚えるようになった名前だった。
「結構長いんだよな、なんか、怪しい感じもするし。何する人なんだろう?」
シナは自分の髪を結わんでいる彼のリボンを弄りながら呟いた。
留学生の物らしいのも貰っちゃうと、やけに実感がしてくるような感じもした
あれこれ考え込んでいたシナも、忙しくなる明日に備えて目をつぶって眠りに付いた。明日やってくる台風のことは予想もつかないままで。
いよいよ次にはもう一人の主人公の登場ですね。
そのまま韓国語を翻訳しておりますので、
本場の日本人の日本語に比べると下手かもしれません。
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