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非リア同盟参加企画

ただ空を見上げるだけで

作者: スライム紳士

 突き抜けるように空は高い。


 どこまでも染め上げられたように空は青く、どこまでも続くかのように空は広い。


 冬の空。遥か高みでは凍てつく風が雲の領分を犯し、日の光を地上へとまっすぐに降り注がせる。青以外の色を映さない空が光が通ることを容認し、地上の虜囚に暖気と冷気を与え続ける。


 見上げているのは届きたいから。どこにもないのに確かにそこにあると分かる、自由な空の高みへと登ってみたいから


 見上げていたのは辛くなったから。目を細めて眺めていても、遠すぎるその道程に歩けないと心が挫けるから


 見上げようと思うのは自由になりたいから。小さなものが寄り集まってできた地上では、矮小な身を縛るしがらみが多すぎるから



 伸ばしても、未だ手は届かない。伸ばしたそこは虚空そらだけども蒼天そらでは無い。


 憧れる、しかし触れない虚像。


 包み込む、されど気付けない形。


 空が高ければ高いほど、遠ければ遠いほど、広ければ広いほど、それは地上もまた空の一部であることを忘れさせるのだ。


 いつか青の頂に至った時、空は下界を総べる青の海となる。


 その絶景は、今はまだ閉じた瞼に映る光景としてしか存在しない。

 幽玄のように捉えられない、探せば探すほど見失い、されどどこかしらには存在する。


 いずれ、空は夢幻だと気づくだろう。

 どんなに否定したくて縋っても、どこかにはあると探し続けて願っても、実体が無い砂上の楼閣と知る日は決して遠くない。


 確信にも近いその想像は、空を見上げるたびに泥のように纏わりつく。


 ただ、


 今はまだ、空に憧れていられればそれでいい。


 冷たい蒼が映る、冬の空。

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