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シュガー君の彼女

今日はハロウィンだ。

まわりの子達は自分で作ったお菓子を配り歩いている。

ぼっち人生が長かった私は、大学生になってもやはりぼっちで騒がしいキャンパスの中、1人静かな所を探すのであった。


*****


やっと見つけた場所は、あまり使われていない校舎の近くにあるベンチだった。そのベンチの汚れ具合は人が使っていないことを物語っている。私はベンチにハンカチを敷き、腰を下ろした。

今の時間は空き時間なため、次の講義が始まるまでここに居ることに決定した。

手提げに入っている本を取り出そうとするが、今日買ったお菓子が邪魔して取り出すことができない。


(……大きすぎちゃったかな…。)


このお菓子はシュガー君にあげるものだ。ハロウィンの度シュガー君はあの決まり文句を言ってくるので、朝お菓子を買うことがハロウィンの日課になっていた。毎年、お菓子をあげているが、シュガー君はお気に召さないようで、いつも微妙な顔をする。そのため、お菓子を買うときはどれが喜んでくれるのかと真剣に悩む。

本当は手作りを渡したいが、料理が苦手過ぎて渡せない。レシピを見て作っているはずが、何故か何度作っても危険物になってしまう。解せぬ。

私は重いため息をついた。


何気なく視線を遠くに向ければ、丁度シュガー君か歩いているのが見えた。シュガー君も空き時間なのだろうか。シュガー君の元へ行こうとして腰をあげると、可愛らしい女の子がシュガー君に駆け寄って行くのが見えた。隣に並び、愛嬌のある可愛らしい笑みを浮かべている女の子は、ふわふわとした髪にクリッとした大きい目、全体的に細く守ってあげたくなるような美少女だった。

シュガー君は、中学校を卒業した時から身長がぐんぐんと伸びた。私より頭一つ分低かったシュガー君は、あっという間に私を追い越し、私より頭一つ分大きくなってしまった。顔つきはまだ幼さを残していたが、周りの人々がはっと注目するほどの美貌だ。

そんな二人が並んでいる姿は絵になっていて、とてもお似合いだと思った。

つい、その姿に見入っていると、二人の顔は近づいていった―――


「あっ……。」


見ちゃいけないはずなのに身体がいうことを聞かない。動け身体、私の身体でしょ。

気づけば、そこには誰も居なかった。

きっと二人は寄り添い、どこかに言ってしまったのだろう。

いつも以上に心臓の音が煩いが、それは恋愛に免疫がない私にとって刺激的であったものを見てしまったからだと言い聞かせる。

落ち着くためにお気に入りの本を読もうとするが、内容がまったく頭に入ってこない。文字を追うとすると心臓の音が邪魔するのだ。

私は読むことを諦め、本を手提げに仕舞おうとすると、シュガー君にあげようと思っていたお菓子が目に入る。


(彼女が居るなら、これは要らないよね。)


きっと二人は仲良くハロウィンを過ごすだろう。


私は豪快にそのお菓子を口に流し込み、むせた。


「ごふっ!!」


目に涙が溜まる。

この涙はむせたために生理的に出てきた涙だ。

何の感情も含んでいない涙のはずなのに、どうして止まらないんだろう。


私の周りを甘ったるい香りが包み込む。その香りはシュガー君のようだ。

ただ甘い、甘すぎる。

私には甘すぎた。



私は初めて講義をサボってしまったのだ。




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