逆位置の死神(2)
天井に、紫色のローブをまとった白骨死体が立っていた。
湯気立つ、ミルクティーを持って。
「ふ、不死公・・・!」
「アイエエエエエエエ?!!!テンジョ、ニ、ハリツイテ、ル?ナンデェ??!!!」
「面白い魔術を使うのう。なんだそれは?」
「これか?元々人間を処刑するために使われていた魔術だよ」
不死公はそう答えながら手に持っていたミルクティーを飲んだ。
不死公は白骨死体のため、消火するための胃袋も栄養を吸収するための腸もない。飲んだミルクティーはそのまま骨盤をすり抜けて不死公の足元、即ち天井に向かって『落ちて』いった。
「う、上に落ちるミルクティーですって?」
「パッショリさん何をそんなに驚いているんですか?魔王城ではミルクティーが上に落ちるなんてごく普通のことじゃあないですかぁ」
「それもそうですね。さぁすがサクさんは普通学科だ!」
「ははは、そうだぁ俺様は天下無敵の魔法学科の劣等生様だぁ!」
「たわけが」
アミーラはコーラの空き瓶で男二人の後頭部をぶん殴った。
「あー。すまぬ。不死公よ。こやつ等はお主の力の一端を見せつけらた恐怖で一時的な狂気に陥っている様じゃ。後で妾が説明するゆえ。で、実のところこの術はなんなんのだ?」
「我が不死の怪物になった際、古代魔法文明の連中が我を葬るために使った魔術の一つだ。そのものにかかる大地の力を反転させる。天地がひっくり返るわけだな。この場所は屋根があるからよいが、平原や海で使われば天空高くどこまでも『落ちて』いく。そして、5分。あるいは一時間後に天空から再び地面に落ちてくるわけだ」
言った次の瞬間、不死公は天井から床に落下した。衝撃で全身の骨がバラバラに砕け散る。
砕けた骨が床一面に散らばっていった。
「このような我を殺すための魔術を古代魔法文明の魔術師たちは無数に試した。が」
砕けた骨が紫色のローブの辺りに集まり、ほぼ完全な全身骨格になった。
ところどころひび割れているが、おそらくは時間と共に治っていくのだろう。
「どの方法を試しても蘇ってしまうのでな。故に古代魔法文明の連中は我を殺す以外の処分方法をすることにした」
「コンクリート詰めにして海にドボン、か」
「誰の案かは知らんが、評価に値する策であったと思うぞ。なにしろ、古代魔法文明の連中が同士討ちで滅びるまで平穏に暮らせるようになったのだからな」




