紅蓮の弾丸(6)
鮮血連理草改めて蝶の模様をついたヒーターシールドを造りだした。
さらにマスケット銃を出しす。
右に4丁。左に4丁。
マスケット銃というのを知らない人の方が多いだろう。特徴としては命中精度は悪いが、構造が単純で発射さえすればどんな物でも、その気になればそこらへんの石ころでも弾丸として利用できるのが利点だ。
手に持つのではない。このマスケット銃を両肩の上に浮遊させる。
夢の中ならこれくらい造作もない。ついでに空でも浮かんでやるか。
油をグリーブのつま先から滴り落としながら、ゆっくりと飛翔。
さらに少し上に浮かべたマスケット銃が彼女の意志に遇わせて八個のフリントが一斉に叩きつけられ、八門の銃口が一斉に火を噴き、八発の弾丸が一斉に撃ちだされる。
マスケット銃は命中精度の悪さを集団運用でカヴァーするタイプの銃だ。一度に大量に撃てば撃つほど効果がある。
外れ頭外れ外れ銃を持つ右手外れ右足外れ。
生憎と胴体を撃ちぬけなかったようだ。だが、心配はいらない。鮮血連理草はエンプーサ。自分の体重以下の金属製品ならば幾らでも造りだすことができる。
両手で蝶の盾を構えてガード。これで防御は完璧だ。
マスケット銃はリロードが破滅的に遅いが、何も心配はいらない。
近付くことなく、この場で浮遊したまま一方的に攻撃し続けるのみ。
それだけで勝てる。
八丁のマスケット銃が水平から垂直に移動する。そして中空に産み出された弾丸が銃口から再装填されていく。
次の一撃で、いや8撃で。それでも駄目なら五回、40発で。それでも駄目なら10回80発撃ち込むだけだ。
「よし、生き返りましたわ」
弾丸を込めなおした8丁のマスケット銃が再び空中で前方の鋼の鎧。いや、もはや頭すらない金属塊に狙いを定め直す。
残った左手が、こちらに向かって拳を握る。
「ホホ。なんの真似ですの?最早銃はおろか頭も足もないというに?」
腕の根元から炎が噴き出た。
次の瞬間、腕そのものが跳び、鮮血連理草に向かって飛んでくる。
「な、そ、そんなものっ!!」
ヒーターシールドを前に突き出し、飛翔拳を防ぐ。
直後、彼女は轟炎に包まれた。




