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普通学科の劣等生(旧題魔法文明滅亡一万年後)  作者: 虹色水晶
第七章 悪夢の中へ、悪夢の中へ、逝ってみたいと思いませんよ
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俺TUEEをおしつける奴は多いが、他人とってそれは悪夢でしかない(1)

 船酔いのような感覚だった。

 上空がグルグル回る。

 いや、実際にまわっていた。

 赤、黒、紫、蒼。水面に寒色系の気分の悪くなる油絵の具をぶちまけたような空が広がり、それが留まる事無く動き続けている。

 生臭い風が感じられ、どこかでそう遠くないところで火事が起きているようにも思えた。

 プラスチックやビニル袋などの石油化学製品をを火にくべたような、そんな悪臭だ。

 周囲の光景はコンパーネの室内などではない。作治とアミーラがこの世界で最初に出合った、古代魔法文明の廃墟。そう呼ばれる高層ビル群の跡に似ていた。


「な、私たちはコンパーネのイスカンドリア支部内にいたはずでは・・・?!!」


 まったく魔術の知識がないパッショリはただただ驚くばかりだ。


「なんだろう。転移魔法で三人共飛ばされたのかな?」


 なんだかこういう現象には慣れてしまった感じがある。この程度のことでは作治は最早驚かない。


「いや。それはないな。魔術の類をかけられた形跡はない。仮にここが妾とサク。お主と最初に会った古代遺跡ならば湖向こうの魔王領のはず。転移術で飛ばすなら相応の魔力が必要なはず。それだけあれば妾達三人を殺した方が早いわ」


「じゃあこの光景はなんだっていうの?」


 作治は足元にあるコンクリート片を拾い上げた。その手触りは日本の工事現場で拾えるものと同じだ。

 だが空は相変わらず不気味にグネグネうねっている。黒色系の不気味な空模様は苦悶を浮かべる人の顔にも見える。


「良いかサク。仮にこの場所が妾とお主が最初に出合った古代魔法文明の遺跡だとしよう。するとその場所はイスカンドリアから遠く離れた湖の向こう、貨客船で二ヶ月かかる場所だということだ」


「うん。だからそれは転移魔法で一瞬に・・・」


「サク。お主魔王領からイスカンドリアにくるまで何回、転移魔法で跳んだ?」


「え?そりゃまあ一回、あ、いや二回か」


「ということは少なくとも転移魔法二回分以上の魔力が使われたという事だ。具体的には船で二ヶ月の距離、5000キロだが1万キロあるかは知らんが、その距離を一瞬で移動したという事になる」


「うん。だから転移魔法でさ」


「それだけの長距離を人間三人という重量物を『失敗せず』転移するなら、相応分の魔力を消費するとは思わんなだが?」


「ん?それってどういうこと?」


「だから仮に1万メートル先から相手を粉々にできる魔術を使える者がいるとしよう。当然ながら相手は放たれた膨大な魔力を防ぐ事などできず、なすすべなく倒される」


「そりゃ1万メートル先から攻撃魔術を叩き込めるんだからよっぽど凄い魔法使いじゃないかな?」


「攻撃魔術を放つ、という事は何らかの術式や詠唱をする。ということだ。つまりそのそのアレだ。魔術師の周囲にパパーンって中空に魔法陣が出てくる奴」


「あーあれねー。無意味に派手に目立つ奴」


「うむ。あれを出した瞬間にどのような種類の術か、どれくらいの威力の術か。一瞬でわかるわけだな。つまり」


「つまり?」


「1万メートル先に相手を葬れる術式を詠唱したのならば、その魔力の大きさから半径一万メートルで検知できるような魔力残差が発生するとは思わなんだが?」


「魔力残差?」


「船で二ヶ月、一万キロ先の大陸の国で大きな戦略魔術が炸裂する。直接人間が死んだり、建物が壊れるのはその場所だけだ。だが魔力の波動は残る。殺傷力を伴わない魔力の衝撃波は30センチ程度津波、震度2程度の地震を伴い、大陸向こうの国にも届く」


「あ、日本でもそういうことがあったような・・・」


「つまり強力、強大な魔術を行使すればするほど、その者がどこにいるか、その者が誰であるかがわかりやすい。それこそ、魔法学科で一日しか授業を受けておらず、教科書のページを1ページしか読んでおらん、『正真正銘の劣等生』が気づける程度に、な。」


「じゃ、じゃあどうして僕らは古代魔法文明の遺跡にいるんだよ?!」


「妾が魔力の使用した気配を感じ取れなかったのだ。少なくともイスカンドリアの街の中で転移魔法をかけられたわけではない」


「ええ。だって貴方達は魔法なんてかかっていない。魔法なんて事前に気づかれたり、途中で無効化されてしまうではなくて?だからもっと確実な方法を取らせていただきましたのよ」

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