表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
普通学科の劣等生(旧題魔法文明滅亡一万年後)  作者: 虹色水晶
第六章 コーラを片手に、テーブルの前で仕事に励む連中
55/81

原因

「そもそもルオセ号はなんで沈没したんだ?船に荷物を多く積みすぎたとか?」


「は?なんですかそれは?」


 パッショリは大変馬鹿にしたような視線で作治を見た。


「ははは。仕方なかろうパッショリ。おそらく作治の故郷のニホンという国には船舶安全管理法がないのだ」


 アミーラが検討をつける。


「なるほどそうですか。では念のために説明しておきますね。貨客船には非常用の救命艇をとりつけること。過剰な荷物の積載の禁止。経年劣化のため10年以上経過した船舶の商業利用の禁止などが法律で定められているのです」


「サクよ。自分の国に船での安全な航海を保証する法律がないからといってそう落ち込む出ないぞ。なにしろ我が魔王領は人類諸国連合のどの国よりも優れているのだからな」


「そうですよサクさん。私も修学旅行中の魔法学科の生徒が船の沈没事故で全員死んだなんて話聞いた事ありませんから」


「そうだ。舵を二度三度軽く切った程度で沈む船など、この世にあるかものか。のうサク?」


「・・・うん。そうだね」


 そこまでけらけら笑った後、アミーラは急に真面目な顔になって言った。


「で、だ。肝心のルオセ号の沈没事故だが。おそらく人為的な物だろうな」


「やはりそう思われますか」


 パッショリも素直に同意する。


「やっぱり魔法で・・・?」


「いや、それはないのう」


 作治の仮説を、アミーラは否定した。


「ルオセ号の船体はローズウッド製の木材でできておったらしい。ローズウッドには強力な魔力耐性があるからな。外部から攻撃魔法でドン。というのはまずあり得ん。内部から時限爆弾のような魔法で吹き飛ばすのも無理だのう。念波が届かん。が、しかし」


 フランドル衣装のポケットからコインチョコを取り出す。そして齧りながら言った。


「妾なら火薬ダルに長い導火線を用意し、火をつけるな。これなら救命艇で脱出できる」


「火薬ダル?そんなもので?」


「ローズウッドはあくまで只の木材だからのう。これならば最初に乗り込んでおれば内部から破壊可能。脱出する時間もあるから、自分だけ助かることもできる。もっとも」


 アミーラは作治にコインチョコを投げて寄越した。


「別の船が大砲を撃ち込んで破壊する方が早くて楽な気がするがな。まぁ人類諸国連合も、魔王領側にも、わざわざそのような行為をした軍艦はない。少なくとも記録の上ではな」


「となると海賊がやったという可能性も無きにしも非ず、ということになりますね」


 パッショリが一転して外部犯説をほのめかした。


「海賊?やっぱり小さな漁船に乗って体当たりしてくるの?」


「何を寝ぼけたこと言っておるのだサク?」


「そうですよ。海賊といえば大砲を積んだ軍艦に髑髏のマークの大型軍艦で突撃してくるもんでしょう?」


「まさかちっぽけな小舟で捕鯨船に体当たりした挙句、荒波に投げ出されて泣きながら救助を求め、てんぷらを御馳走になったあげく、無事帰国して満面笑顔ダブルピースしながら『魔王軍の重戦艦を大破させた。我こそは真の英雄なり!!』などと宣言する者なぞ、この世におるわけなかろう」


「・・・うん。そうだね」


 作治は力なく同意した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ