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普通学科の劣等生(旧題魔法文明滅亡一万年後)  作者: 虹色水晶
第六章 コーラを片手に、テーブルの前で仕事に励む連中
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船2

「船の形状は商用ガレオス船でしたね」


 パッショリが書類を確認しながら言った。


「ガレアス?」


「大型の商業用帆船の側面部に漕ぎ手が握るオールが無数に突き出しているんです。風のないときでも人海戦術で船を動かします」


「人力で?」


「魔王領ではこのタイプの船が一般的だそうですよ。なにしろ船体に魔法の効果を阻害する木材をわざわざつかっているものですから風の魔法を使って帆に好きな風を送る。といったことができないらしい。ですから大勢の人間の奴隷、大概は正規遠征軍、あるいは冒険者として魔王領に渡って、捕虜になった方々ですね」


「ルオセ号に関してはそうでもないぞ?」


 アミーラが疑問を呈した。


「そうでもない、って?」


「船舶には船大工、船医、水夫といった様々な職種の者達がのりこんでおる。が、ルオセ号に関しては極端に魔王領の住人が多いな」


 アミーラが名簿らしきものを見つめながら言う。


「でも、オールで船を漕ぐのは人間の奴隷なんでしょ?」


「それも魔王領の住人達が主だったようだな」


「おや?意外ですね。オール漕ぎは純粋な肉体労働と聞いておりますが」


 パッショリは心底意外そうな様子で尋ねた。そんなにきつい仕事なのだろうか?


「労働環境の激変が大きいかのう。もともと魔王領は就業率可能な限り100パーセントに近付けるという政策をとっておってな。即ち自発的無職者を減少させることにより、特に何もせずとも国が豊かになっていくのだそうだ」


「自発的無職者?」


 よくわからない単語だったので、作治はアミーラに尋ねてみた。


「不死公曰く、経済学用語でニートと言うのだそうだ。即ち国内のニートの総量を減少させ、職を与え、給与を与え、食事を与え、家を与え、婚姻の面倒までみてやると国力がびっくりするほど上がっていくのだそうだ。5000年前の他国の戦争犯罪をネチネチ文句を言って、、謝罪と賠償金を要求したり、他国に戦争をふっかけて領土や財産を奪ったりしなくても国が幾らでも富んでいくそうだ。しかも魔法を使わずに!」


「・・・すげぇ、よくわかります」


 どういうわけか、作治には理解できた。


「ちなみにサクの故郷のニホンとかいう国ではニート対策は何かしておるのか?」


「・・・してないですね。なんにも」


「それはいかんな。国王も役人も貴族も軒並み無能なのだ。庶民はその日食べる米にも苦労しておるであろう。今すぐ魔王領の植民地になれ。すべての民が毎日暮らしに困らなくなる必要最低限度の生活を保障しよう!」


 正直、そのほうが日本のためになるかもしれない。作治は一瞬そう考えてしまった。

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