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普通学科の劣等生(旧題魔法文明滅亡一万年後)  作者: 虹色水晶
第六章 コーラを片手に、テーブルの前で仕事に励む連中
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幕間5

 冒険者はいろいろあって魔王城から無事に帰還した。

 道中は割愛する。

 そこは港町だった。

 人足たちが二人一組で木材を担ぎ、大型の貨物船に運び込んでいる。

 その傍らでは船から降ろされた積荷を確認している女がいた。

 冒険者はその女に見覚えがあった。


「お前、洞窟商人じゃないか。こんなところでなにしてる?」

「あ、冒険者さん。お久しぶりですねぇ?また洞窟や砂漠でお会いしたら、薬やお水を金貨1000枚くらいで買ってくださいね♪」


 軽くいつもの挨拶を交わすと洞窟商人は商品の検品に戻る。


「こんな街中で薬草や食料を品を相場の十倍、百倍で売りつけるつもりか?」

「いえいえ。そんなことはいたしませんよぉ~♪ただちょぉ~と、新しい商売を始めようかなと」


 洞窟商人はそう言って、一枚の茶色い葉っぱを見せた。


「これは紅茶と言いましてねぇ~♪お湯をかけるとコップ一杯の水がびっくりするくらいおいしくなるんですよぉ~♪」

「ああ。それ魔王の国でお前らの仲間が飲んでいる奴だよな。市場で十枚銅貨百枚くらいで売られている葉っぱだろ」

「しっ!!!」


 洞窟商人は慌てて冒険者の口に手を当てた。

 そして周囲に警戒する。辺りを見渡し、こちらを見ている人間が誰も見ていないことを確認してから、洞窟商人は冒険者にこう言った。


「そうですね。冒険者さん。あなた私たちの仲間になりませんか?」

「お前急に口調変わってないか?」

「私たちは魔王領からこの紅茶を船で二ヶ月かけて輸入しています。そこで、その紅茶を人間の国で売ってくださる方が必要なのですが。船賃を込みであなたに銀貨一枚でお売りますので、金貨一枚で人間の皆さんに売っていただけないでしょうか?」



それから20年ほどが過ぎた。



 イスカンドリア・コンパーネ。人間の国には商人の組合は幾つかあるが、その中でも魔王領との貿易行う事でここ数十年で急速に業績を伸ばした会社だ。

 その立派な仕事机のある事務所の一室に一組の男女がいた。


「羊毛・木材・真鍮と」

「はい。こちらが主だった買付依頼品のリストになります」

「ありがとう。船に積み込む関係上現金払いではなく現物の方がいいというのはある意味納得ができるがな」


 中年男性は洞窟商人にそう語り掛ける。


「ところで、君たちエンプーサの若さの秘訣はなんだね?君と同じように砂糖入りの紅茶やコーヒーを飲んでも私は肥るばかりなのだがね」

「種族的体質ですからねぇ♪老化が遅くて寿命が長いとしか。あ、不老不死じゃなくて首切られたりとかすればちゃんと死にますよ♪」


 洞窟商人の笑顔は中年男性が彼女と初めて会った頃とまったく変わらない笑顔でそう言った。

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