長く道のりを安置を求めて幾億光年(1)
「それで、不死公さんが捕まえてほしい人ってどんな奴なんですが?」
作治は尋ねた。ここは魔王領。そして頼み事からして、おそらくは勇者の首を取って来いということなのであろうが。
「そうだな。名前や罪状などを知らねば探しようもない。そ奴はサーベラ・デプリメントという者で、我が国の住人数十人を亡き者にし、逃亡を続けておる。それと、我の魔法で捕まえることも殺すこともできぬ。では頼んだぞ」
それだけ言うと、不死公は作治に背を向け去っていく。
「・・・ちょっと待ってよ。あの人の魔法で捕まえることも倒すこともできない相手ってどんな奴なんですか?」
「あのう。サクさんちょっとよろしいでしょうか?」
パッショリが作治に声をかける。
「サクさん。新聞はお読みになる方でしょうか?いえ。たとえ読んでおられても隅々まで確認なされる方でないでしょうね?」
「なに?新聞にそのサーベラとかいう奴の倒し方が書いてあるの?」
「いえ。記載されてはおりますが、一般の方はあまりきになさらないかと」
「どういうこと?」
作治は尋ねた。
「まずサーベラ・デプリメントというのは、人格は認めらておりますが、如何なる意味で人間はありません」
「じゃあ魔族だね。捕まえる、あるいは倒すのめんどくさそう」
「捕まえることも倒すことはこの世界を創られた神にだって不可能ですよ。だって法人格ですから」
「法人格?」
「書類上の財産保有権を認められ、裁判を起こす権利などを認められた企業のことです。脳味噌も心臓もありませんから即死魔法も爆発魔法も無意味なんですよ。戦略級魔法で本社を丸ごと吹き飛ばしたとして、銀行からの預金を引き下ろす、保険金が出る、新しい社長が来る。よって魔法では絶対に倒せません」
「なるほど。でも、そいつを捕まえろってどういう事なんだろう?」
「おそらくはルオセ号事件の事を言っているのかと思われます」
「ルオセ号事件?」
「同社が保有する貨客船で、人類諸国連合と魔王領の間を定期運航しいます。あ、正確にはしていました。それが三か月ほど前沈没事故を起こしたんです。乗員乗客はほぼ全員死亡したそうです」
「それって会社の責任問題になるんじゃ?」
「ですから、私たちに社長に掴まろって暗に言ってるんじゃないでしょうかね。サーベラ・デプリメントは魔王領の企業です。被害者遺族に魔族が大勢いるからといって、魔王直々に会社を潰すとなると立場上問題があるのでしょう。そこで人間である私達に事故があった後、行方不明の社長を探し出し、なんとかしろと」
「なんとかしないとだめなのね」
「被害者遺族が納得しませんからね。潜伏先の畑で一ヶ月経った腐乱死体で発見。そんな結末を遺族は望んでいないでしょう。おそらくは生け捕りを望んでいるはずです」
「でも、どうやって探すの?」
「会社の名前はわかっていますからね。まずは役所で登記簿を調べてみましょう」




