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逆説裁判(12)

 パッショリが試合開始直後の強烈なアッパーカットを受け、戦闘不能になった様子を見て、ラティルスは止め指す事にしたようだった。


「それでは裁判長。被告人サクが私を強姦しようとした決定的な証拠を当法廷に提出させていただきます」


「強姦しようとした証拠だと?!そんなもの出せるわけがないっ!!」


 法廷内で、作治は吠えた。


「あら?随分な自信ですのね。その根拠のない勇気はどこから出てくるのかしら?」


「てめぇが『俺の精液のついたコンドーム』だろうが、『血液のついた下着』だろうが、証拠をいくらを提出しようがそんなものはまったくの無意味、無駄なんだよっおおお!!!なぜならはその不死公が造った嘘を見破る魔法陣の上に立っている!偽物の証拠なら『それ、僕のじゃあありません』この一言で立証できる!よってあんたがどれだけ偽物の証拠を用意しようと俺を有罪にすることはできないっ!!」


「おお、流石はサクさんっ!!?」


「魔法学科は伊達ではないのっ!!」


「普通学科だっ!!」


 パッショリとアミーラは作治を持ち上げる。


「成程。貴男を偽物の証拠で有罪にすることをできない。確かにそうおっしゃいましたわよね?」

「ああ。大事な事なので二回言うぜ?なんなら5回、いや10回言ってやろうか?!!」


 ラティルスは黒い鞄を出した。それは作治が見た事あるものだった。

 作治がこの世界で紛失したはずの、学生鞄である。


「これ、貴男の鞄ですわよね?」


「あっ・・・」


 さらに鞄の中から手のひらサイズの手帳を取り出す。めくると写真が貼ってあった。


「言語はわかりませんが、この写真から察するに貴男の身分証ですね?」


「・・・はい、僕の学生証です」


「それで、これからが重要なのですが」


 ラティルスが作治の学生鞄の中から一冊の雑誌を取り出す。


 その名も、『PC 悦楽天』。


 ラティルスはエルフの女剣士が不釣り合いな大剣を振るうその雑誌の表紙をめくった。

 そして、それを法廷内の聴衆に見えるようにゆっくりと掲げる。


 内容は、古代魔法文明の遺跡でアミーラに見せてもらった古代魔法文明の書物よりも、はっきり言って酷い。


「検察はこれを証拠品として提出いたします」


 裁判長である不死公は『PC 悦楽天』(CD付1080円)を受け取った。


「被告人。確認するがこの書物は検察の言うの通り貴公の物か?」


 違います。

 と、言いたかった。


「・・・はい。僕が隣町の本屋で買いました」


 魔法陣は蒼く光っている。


「ふむ。実に興味深い内容だな。検察。証拠品は以上かね?」

 

 裁判長は『PC 悦楽天』のページをめくりながらラティルスに訪ねた。


「いいえ。決定的な証拠が御座います」


「見せてもらおう」


 ラティルスが取り出したのは、作治のスマートフォンだった。

 そう。通常ならば異世界に飛ばされた現代日本人の切り札となるべきアイテムだ。

 ラティルスがスマフォの電源を入れた。


『くっ!この身にどれだけの傷を受けようとも、我が魂だけは決して奪う事は出来ないぞっ!!』


 一万円課金して最初の一回で出てきたレジェンドヴァルキュリアが表示された。

 美しい鎧が半分壊れ、『重症』の二文字が画面に表記されている。


「被告人」


「はい」


「とりあえず有罪でいいかね?」 


 作治は思った。

 現代日本から異世界に持ち込むアイテムって、ほんとチート級の威力なんだなぁ、と。

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