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逆説裁判(9)

「裁判長。検察。陪審員。弁護人。そして被告人が入廷いたしました」


 一番最後に入って来たはずのラティルスが妙に偉そうな態度で裁判長である不死公に報告した。


「うむ。確かに。それでは特別上告による最終審理を行う」


「お待ちください!」


 パッショリが思わず席を立った。


「魔王領、いえ。人種諸国連合では三審制を採用しているのは承知しいます。ですが本日は第一審のはずです!」


「おや。そうだっか?」


「いえ。既に一審二審は済ませております」


 不死公が尋ねると、ラティルスはそう事務的に答えた。


「ふむ。一応これが本日の裁判に関する書類だ。被告人、何か問題のある部分があれば訂正を」


 不死公は書類の束を宙に放り投げた。何かの魔法なのだろう。その紙はひらひらとまいながら作治の手前で静止して停まった。

 手に取ってみる。読めない。読めるわけがない。この世界の文字で書いてあるのだから当然だ。

 それどころか作治は先週英語の中間テストで赤点を取ったばかりなのだ。


「サクさん。どうせでっち上げの偽造書類です!即興で造ったものですから何かしら矛盾点があるはずです!そこを指摘するんです!」


「くっ・・・!駄目だ、僕にはできない・・・っ!」


 英語ならまだしも、異世界の文字。さらに日常会話からかけ離れた難解な法律用語を読解できる普通の高校生が日本にどれだけいるのだろうか?

 作治は読めない、その他大勢に入る。


「よくわかぬが問題はなさそうだな。では裁判を始める」


「被告人が法律の素人である事を狙ってきたか。だがまだだ・・!元々こちらも一発勝負のつもりでいた!司法取引をして、それ以前にこちらには切り札がある・・・!」


 パッショリは諦めてはいなかった。


「ではサク氏の人種連邦合衆国に対する不法入国に関してですが」


「ああ。そんなことはどうでもいいのですわ」


 ラティルスはあっさり流した。


「ええ。どうでもいい・・・えっ?」


 パッショリは作治に確認することにした。


「今、検察が不法入国に関してどうでもよいと発言したような気がするのですが」


「うん。金髪ドリルの人が言ったね」


 聞き間違いではないようだ。


「で、では遺跡盗掘の件に関してですが」


「すみません。わたくしの説明不足でしたわ。今回の公判において立証困難案件に関してまして、検察は一切追求しない許可を裁判長に頂きたいのですが」


「検察。それは司法取引という事でよいのかね?」


 裁判長が検察官の頭ドリル女に確認する。


「はい。迅速な裁判は社会の利益です」


「許可する。本裁判において被告人は不法入国及び遺跡盗掘おいて無罪」


 裁判長の発言に法廷内がざわめく。


「なんだ。僕を無罪にしてくれるのか。意外といい人じゃないか」


「安心するのはまだ早いです。検察サイドにこちらが使おうとしていたカードを横取りされました。さらに裁判長の心象もよくなったはずです。さて、この次はどうでてくるか・・・」

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