逆説裁判(8)
検察側席の扉が開き、作治が見た事のある人物が法廷内に入って来た。
白いウエディングドレスを思わせる洋服を着た、左右に縦に巻かれた美しい金髪を持った女性だ。
「検事を務めさせて頂くラティルスですわ。そこにいる人間共が如何に罪深き存在か、この法廷の場において明らかにさせて頂きます」
どうやら古代遺跡でも裁判所でも、二本のドリルが作治の命を狙ってくるらしい。
「それでは陪審員の皆さん。入廷を」
ラティルスの入廷したドアから、5人ほど新たな人物が室内に入って来た。そして不死公が座る裁判長席の前に座る。
「妙ですね」
陪審員のメンツを見て、パッショリは眉をひそめた。
「何が妙なんです。パッショリさん」
「陪審員制度は多数決です。つまり検察サイドが要求する有罪判定を素直に出してくれそうな者ばかりを揃えてくるとばかり思っていました」
「それってインチキじゃないですか」
「ある国の魔術大会で、『ルールに規定されていないから』と、魔力を増幅する下着と靴とマントを装備して大会に見事優勝した魔術師がいたそうです」
「それって卑怯じゃないですか?」
「ルールに、『魔力を増幅する装飾品は禁止』としか書いてなかったんですよ。服は問題ないという理由で彼は違反行為にならなかったそうです。ですから」
パッショリは陪審員席を見た。
「当然それ相応のことをしてくると考えるべきなんですが」
陪審員席に座るのは人間の女騎士らしき人物。
同じく女魔法使い。
同尼僧。
街の市場から買い物帰りにそのまま着たような少女。
ボディスタイルがよくわかる布を軽く巻きつけただけの服を着た、首から上が蛇の女性。
「あの陪審員の方たちがどうかしたんですが?」
「5人中3人中が人間の女性です」
「3人?4人じゃなくて?」
「右から二番目、ディザトリアンの隣の方はエンプーサです。アミーラさんと同じ種族の方ですよ」
「よくわかったね」
「まぁ私も民族衣装で見分けているだけなんですが。彼女たちの服を褒めて差し上げると喜ばれます。その後の商取引も順調にいきます」
「そうなんだ。で、何が問題なの?」
「サクさんを有罪にするなら、彼女の色香でなんでも命令を聴きそうな、発情したオーク五匹を陪審員にした方がすれば完璧です。なぜそれをしないのでしょう?」
「そういえば、どうしてなんだろうね?」
作治は首を捻った。




