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逆説裁判(5)

「ちょっとまってくださいよっ!!なんで殺人罪なんですかっ!??僕誰も殺してませんよっ!!」


 激昂した作治は自分の味方であるパッショリに掴みかかった。


「お気持ちはお察しいたします。この件に関して、サクさんに冤罪をかけられていることが濃厚です」


 そしてそれをやんわりと諭す。こちらは慣れっこのようだ。よく依頼人に殴られるようなこともあるらしい。


「そもそも誰を殺したって言うんですかっ?!!」


「遺跡の発掘隊と、警備にあたっていた兵それを虐殺した。それがお主にかけられた容疑だ」


 アミーラがコーヒーに牛乳を混ぜながらぼそり、と言う。


「え?なんで?!」


「遺跡の警備にあたっていた者がメタルイーターに食われたところをお主も見ていたであろう?」


「あ、うん」


「そのメタルイーターをお主が魔法で操って襲わせた。それが検察の主張だ」


「そんな!僕魔法なんて使えませんよ!」


「サクさん。貴方渡航許可証を持っていますか?」


「渡航許可証?なにそれ?」


「不死公が支配する魔王領に入国する人間は渡航許可証を取得しないといけないんです。そうでなければ不法入国と見なされます。まぁ、陸路で来る正規遠征軍の兵士や、冒険者の方々は大概不法入国者ですが」


「まぁ戦争している相手の国の兵士に入国許可証を普通は発行しないよなあ」


「問題はそれだけではなく、サクさんが身分証の類を所持していないという事なんです」


「身分証?あ、そういえば・・・」


 パッショリに言われ、作治は自分がスマフォやら財布やら教科書やらと共に、学生証の入ったカバンをなくしていることを思い出した。

 まぁ日本のさいたま市立大宮普通科高校の学生証がこの世界で身分を証明することができるかどうか、疑問ではあるのだが。


「それで、サクさんは渡航許可証もない。身分証もない。そしてこの国は魔王領で、サクさんは人間なわけですね」


「うん。まぁそうだね」


「私もメタルイーターを操る魔法なんて聞いたことありません。おそらくでっち上げでしょう」


「なんでそんなでっちあげするんですか?僕関係ないですよ」


「おそらくスケープゴートという代物ですね。発掘調査隊に犠牲者が大勢出たことにより、本来なら警備にあたっていた軍部のみならず文部魔導庁といった関係各省に国民の不満が行ったはずです。ですが偶然遺跡盗掘をしていた貴方が現場の古代遺跡にいた。彼らに都合がよかったんでしょうね。敵国の人間である貴方がテロ活動としてメタルイーターを使い、民間人を虐殺した」


「いや、僕は日本の普通学科の生徒だよ?メタルイーターを操る魔法なんて使えないから」


「役人というのは既得権益は大事にしたいのですが、自分達の責任は絶対にとりたくない非常に困った生物なんです。たとえ1000%自分達が間違っていてもね。彼らの書いたシナリオではサクさんは旅行者ではなく凶悪なテロリストでないと困るんですよ」


「魔王領というのはそういう国なのか・・・」


「いえ、国を問わず役人はそういう生き物です。サクさんの故郷のニホンもそうなのでは?」


 言われてみればそうであった。


「それで、実際の裁判の戦い方ですが」


「敵国の裁判だよ?軍法会議だよ?最初から判決とか決まってない?」


「仕方がないので司法取引をすることにしましょう」


「司法取引?なにそれ?」


「つまるところ、魔王領の役人にとって真犯人などいてもいなくてもどうでもよいのです。重要なのは『自分達の代わり』の、責任者がいればいい。ただそれだけなのですから」


「なんですか。それ」


「それが役人ですから」


 酷い理由である。


「逆に言えば責任取ってくれれば彼らは文句は不満はないんですよ。そもそも彼らにも国民の安全管理を怠った疑いもありますし。必要以上に痛くもない体を調べられたくもないでしょうね」


「じゃあ僕に大人しく死刑になれと?」


「そうならないようにそこで司法取引というのをするんです。つまり法律上の商売、といえばいいでしょうか」


「法律上の、商売?」


「サクさん。貴方は魔王領の国にいた。そして古代魔法文明の遺跡にいた。それは事実ですよね?」


「確かにそうだけど?」


「ではそれを認めてしまいましょう。代わりにメタルイーターの襲撃に関しては『純粋な自然災害』として裁判で主張します」


「自然災害?あれ明らかに誰かが造ったもの、っていうか大昔の魔法文明を滅ぼした戦争で使われた兵器の生き残りって聞いたけど?思いっきり人工物じゃないか」


「ですから役人にとっては公文書に記す適当なもっともらしい文言があるだけでいいんですよ。事実と異なろうが現実とそぐわなくても一切問題ないのです」


「それでいいの?」


「いいんですよ。役人にとっては」


 パッショリは笑顔のままだった。作治はだんだんこの男に感情があるのかどうか疑いたくなってきた。

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