逆説裁判(1)
「知らない、天井だ・・・」
パチンコのおかげでわりと有名なロボットアニメの名台詞を作治は口にした。
酷い夢だ。悪夢と言っていい。
白骨死体だらけの廃墟の中を歩き回ったあげく狂った殺人機械に襲われ、首輪をつけられドラゴンにネックハンギングされるとは。
「だいたいなんなんだ。あのアミーラって娘は?」
「妾がどうかしたのか?」
すぐ隣を見れば円形の椅子に白いクッションを乗せ、ちょこなんと座るアミーラがいた。
「い、いえ。あんなことがあったのでアミーラさんの御身の無事を案じていたので・・・」
「それはまことありがたいな。お主こそ首も手も大丈夫そうでなによりだ」
指摘され、作治は自分の首と、手を確認した。
黒い金属製の首輪をつけられ、瞬翔竜の脚に繋がれ、天高く不死鳥ラーミアの如く舞い上がったところまでは覚えている。
その後は天国か、あるいは地獄に飛ばされたかのような心地であったが。
作治の首はヴィクトリーガンダムの主人公の母親、或は魔法少女まどか☆マギカの三話で大活躍した中学三年生の少女のような状態にはなっていない。
ただ、手のひらにミイラ男のように包帯が幾重にも巻かれ、そこには血が薄っすらと滲んでいる。
「元々手を差し込めるように細工して造った首輪だ。上手くいったようだな」
「上手くいかなかったら?」
「上手くいくに決まっておろう。妾は瞬翔竜の性質を考えた上でお主の首を鉄の鎖で繋いだのだからな」
「どんな考えですか・・・」
「瞬翔竜は飛ぶドラゴンだ。これがどういうことかわかるか。サク?」
「いや、ドラゴンの脚に片っぽの輪つけられて、もう片っぽの鎖の端を僕の首につけられたら僕の首がマミりそうな気がしますけど?」
「今は砂漠地方特有のアンデットモンスターの話はしておらんぞ?」
「あ、マミるって言うのは僕の故郷の方言です。気になさらないでください」
「そうか。空を飛ぶドラゴンと言っても永久に飛び続けることができるわけではないのだ」
「そりゃまぁ確かに」
「専門用語で、『制海権』だの、『制空権』だのゆうらしいのう」
「あ、それ聞いたことありますね」
「従って、空を飛ぶドラゴン、翼竜の類は地上に必ず降りる。自分の巣に降りる。そこには何があると思う?」
「うーんと。金銀財宝かな?」
「それもあるかもしれんが、生物学的には卵。そして雛竜だな」
「そりゃデカい蜥蜴だから卵で増えるでだろうね」
「雛竜にはエサをやらねばならん。よって親竜は空を飛び、野山を回り、時には家畜を襲い、それを巣で待つ雛に与えるのだ」
「まぁそうでしょうね」
「ところで、親竜は雛竜に狩りの練習をさせるため、捕えた獲物を生きたまま巣に放り込むことが多いのだ」
「僕エサですか」
「竜の性質を理解しておらぬラティルスは悔しがっておったぞ。空を飛んだ瞬間サクの首が跳ね飛ぶと思っておったようだからのう」




