幕間2
「太陽の光、だ・・・!!」
冒険者はまる二日ぶりに太陽を目にした。
ようやく生きて地上に戻ることが出来たのだ。
ただし、それは彼の生還を必ずしも保証するものではない。
「よく来たな。愚かな人間よ。歓迎するぞ」
冒険者の前に牛の頭をした獣人が現れた。
オークやスケルトン、さらには骨でできたドラゴンなど、かなりの大物もいる。
「な、どういうことだ?!」
「お前が出てきたのはマジノス迷宮の東側。つまりここは既に不死公様の支配なさる領土なのだ。我々は貴様を迷宮をくぐり抜けた勇者として全力をもって、歓迎しよう!」
牛頭の獣人は戦斧ではなく、言葉で冒険者の命を削り取る。
「なんてことった。せっかく、生きて洞窟から出られたと思ったのに・・・」
冒険者は絶望に打ちのめされた。
そんな彼に巨大な戦斧を持った牛頭の獣人は語り掛ける。
「ところで貴様。あそこにあるものが見えるか?」
獣人の指し示す先には神殿のようなものがあった。
その中心部には魔法陣があり、青白い光が人の二、三倍の背丈ほどの高さまで伸びたり、消えたりしている。
「コンパーネが管理している転移装置に似ているが・・・」
「あれは不死公様のお造りになった特殊な転移陣だ。我々がお前たち人間共の領土に攻め込む際に使う。いちいちマジノス迷宮を通って進軍するのは面倒なのでな。ただし、お前たちの方から軍を送られては困るので、こちらからは一トンでもどれだけ大きなものでも飛ばせるが、お前たち人間の領土から来られない。完全な一方通行というわけだ。これをワンウェイゲートと呼んでいる」
「一方通行・・・」
「ところで、金貨千枚を出すならあのゲートを使って人間の国まで帰っていいぞ。どうする?」
「全部持ってけっ!!!」
冒険者は有り金の入った小さな袋を地面に叩きつけた。




