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普通学科の劣等生(旧題魔法文明滅亡一万年後)  作者: 虹色水晶
第二章 即死魔法も銃も槍も効かぬ化け物
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なるとクラブ(8)

「そういえば先ほどより妙に静かではないのか?」


 振り返れば入り口にドリルのついたハサミを突き入れ、穴を押し広げようとして鋼鉄の鋭利な兇器の姿がなくなっていた。

 作治達は恐る恐る出口へと向かい、慎重に外の様子を伺う。周囲にメタルイーターの姿はない。危険はなさそうだ。

 かなり離れた場所の空。上空に、何か、飛行機のようなものが十機ほど飛んでいる。

 その飛行機らしきものが地上にある一万年前の魔法文明の遺跡めがけて何かを黒い物体をバラバラと撒いていた。


「爆弾かな?」


「いや。違うであろう。爆発物なら地上で相応の爆風が起こるはずだ」


 そしてアミーラは作治に望遠鏡を差し出した。

 大海原で海賊が獲物を探す時に使いそうな、細長いものだ。


「それも造ったの?」


「うむ。妾らエンプーサにとってこの程度の物を造ることなど造作もないことだ」


 作治は空を飛んでいるものを見た。

 爬虫類の特有の頭。コウモリの羽。そして背には人影が見える。


「ドラゴン?」


「瞬翔竜だな。飛行竜のうちでもより速いもの、はやいものを掛け合わせ速く飛べるように品種改良したものだ」


「品種改良?」


「ジャガイモは本来寒冷地の作物だ。だが、病気に強い種類を選び、それを育てていくと熱い南方地でも育てられるようになるのだ」


「なんでジャガイモなの?品種改良なら普通競走馬とかじゃ?」


「妾は母から、『魔法学校の生徒は馬の話よりジャガイモの話の方が大好きだ』という話を聞いたぞ」


「・・・あり得るかもしれない」


 作治は再び瞬翔竜の方を見た。

 瞬翔竜に乗っている人間が剣や鎧。盾や兜。斧や槍などを地上に向けて放り投げている。


「一体何やっているんだ?」


 武器防具の雨が降る光景を見る作治達の脇を一匹のメタルイーターが通り過ぎていく。

 真っ直ぐに瞬翔竜が飛ぶ方向へ。

 正確には武器防具の雨が降るという、珍しい天気の場所へ。


「成程。そういうことか」


「成程、ってどういうこと?」


「メタルイーターはその名の通り金属を食う性質がある。故に銅山、鉄鉱山などがよく奴らの襲撃を受ける。また金属製の鎧などを着けておれば丸ごと人間を食らう。だが基本的に肉は食わない」


「え?人間を食べるのに肉は食べないって矛盾してない?」


「野生の獣は金属製品など持ち歩いていないからメタルイーターは食わん。だが、お主は人間。そうでもあるまい?貨幣を持ち歩く商人から料理に使う包丁を持つ主婦まで皆メタルイーターに襲われる。故に人はメタルイーターと戦わねばならならい」


 そして、アミーラは地面の右手で泥と、左手に石ころを持ちながらこうも言った。


「もっとも、すべての人類が石包丁を使い、土器を使って煮炊きするならばメタルイーターと戦わずに済むがな」


 作治は苦笑いした。


「僕らに原始人になれってことかぁ。そいつは厳しいなぁ」


 頭をかきながら作治はメタルイーターが集まっていく方向を見た。


「でもあの人たちは一体何をしようとしているんだ?」


「簡単だ」


 空を飛ぶ瞬翔竜から、雷撃が十数本。地上に向けて放たれる。しばらくしてその場所から黒い煙が上がった。


「落とした鉄製品はすべてメタルイーターをおびき寄せるためのエサだ。奴らは金属を食うからな。適当に集まったところで皆で雷属性の魔法を叩き込む」


「雷属性?」


「メタルイーターは全身が金属でできておる。故に炎も無効。氷も無効。毒も無効。心臓を止める即死魔術も無効。槍など無意味。剣は狙って振るわねばならん。あ、槌や棍ならわりと有効かのう」


「無効と耐性ばっかじゃないか・・・」


「だが雷属性の魔術はよく効く。冒険武譚で田舎の少年が覚えたての雷術を駆使し、小さな村をメタルイーターの猛威から救う。というのはあながち絵空事ではないからな。雷撃を浴びたメタルーイーターの内臓はそれこそ焼きすぎたサンマのように真っ黒焦げになっておるのだぞ」


 一万年前古代魔法文明の遺跡。半壊したコンクリートビルディングの向こう側から掛け声が聴こえる。

 そして今度は地上から雷の光が見えた。どうやら発掘調査隊にいた魔術師たちが生き残りのメタルイーター達に目がけて雷撃の魔術を放っているらしい。

 稲光が光る都度、黒い煙が一つ。また一つと増えていった。

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