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普通学科の劣等生(旧題魔法文明滅亡一万年後)  作者: 虹色水晶
第二章 即死魔法も銃も槍も効かぬ化け物
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なるとクラブ(7)

「ともかくそこから脱出しよう」


 作治はアミーラを彼女が創り出した長大なハルバードの下から引きずり出そうとした。が、できない。

 ハルバードが重過ぎるのだ。アミーラをハルバードの下からずらすことも、長槍を持ち上げることもできない。


「くそ、駄目だ。全然動かせない!」


「情けないのう。これだから魔法学科の生徒は」


「いや僕は普通学科の生徒だから。そもそも君が造ったんだからアミーラさんなんとかしてよ」


「うむ。よかろう」


「そうそう。そうやって・・・えっ?」


 アミーラはポケットから厚紙に包まれた物体を取り出した。それは小さな石で、青白い光を放っている。


 彼女はその淡い光を放つ小石を迷わず自分の口の中に放り込んだ。


「フヘエエエエアアアアアアアアアアアアアアアアアッッツッッツ!!!!!!!!!」


「うおおおおっ!!!!な、なんだこれはあああああ!!!!!」


 作治は日本の埼玉県のさいたま市にある、大宮普通科高校に通う学生だ。魔術の修行はもちろん、運動系の部活に所属しているわけでもない。

 その作治ですらはっきり感じ取れるほどの凄まじい波動がアミーラから放たれ、同時に長大なハルバードがつまようじのように転がっていく。


「ふぅー。疲れたー」


 そしてその波動はすぐに収まった。


「あ、アミーラさん。今のはいったい?」


「ああ今の石ころか。フロライトと言ってな。一かけら口にするとどんなヘボ魔法使いでも10秒程度超一流魔術師と変わらない魔力なるという触媒だ。希少品だし劇薬に値するから滅多に口に出来んがな」


「そういうのがあるのなら最初から使ってよ!」


「むー?そうは言われてものう」


 アミーラは作治に言われ、スカートのポケットをまさぐった。そして群青色のガラスのような小石を取り出す。


「それはなに?」


「ラズライトだ。宝飾品に加工すると自然治癒力が向上する魔法の品が出来上がる」


「冒険者の多く通る街の入り口で売ったら高い値段がつきそうだね!でもこの場で役に立ちそうなもっと即物的なものを頼むよ!」


 アミーラは赤燈色の樹脂光沢を持った石を取り出した。


「これは鶏冠石といって、ありとあらゆる毒を治療可能な魔石なのだ」


「メタルイーターが毒攻撃をやってくるとは思えないよ!」


「奇遇だな!妾もそう思う!」


「次!」


 アミーラは紅く光る、水晶のような小石を取り出した。


「これはスピネルだ。世界各地にいる武器商人が高く買い取ってくれるぞ!」


「お宝を売って武器を買うんだね!でも肝心の武器商人がいないと意味がないよ!」


「奇遇だな!妾もそう思う!」


「次!」


 アミーラは黒褐色の、金属質な小石を取り出した。


「これはクロムだ。単なる鉄と混ぜることで電気・熱・摩擦に強い合金を創り上げることが可能だ!」


「ワルプルギスの夜でも切れそうな剣が造れそうだね!でもそれって武器に加工しないと意味がないんじゃない!」


「奇遇だな!妾もそう思う!」


「次!」


 アミーラは光沢のある黒いダイヤモンドのような小石を取り出した。


「これはチタンだ。重さが鉄の40パーセントしかないにも関わらず金属アレルギーを起こさない性質を持つ」


「凄い金属だ!でもそれって鎧とか盾に加工しないと意味がないんじゃないかな!」


「奇遇だな!妾もそう思う!」


「次!」 


 アミーラは白色の光沢のある小石を取り出した。


「これはウイルマイトといって、紫外線照射装置の材料になるのだ!」


「吸血鬼と戦うの是非とも必要だね!でもメタルイーターは人間の血は吸わないと思うよ!」


「奇遇だな!妾もそう思う!」


「次!」


 アミーラは見る角度によって色が変わる、虹のような小石を取り出した。


「これはコランダム。ファンシーカラーサファイヤという魔法石だ。妾が口にすると髪の毛、服が七色に輝きながら触れるものすべてをなぎ倒し、目からビームを出せるようになるのだ!」


「まるでスターを取った後のスーパーマリオみたいだね!採用!」


「ただし周りにいる人間、今回の場合サク、お主が無事でいられるかどうかの保証はない!」


「はい却下!次!」


 アミーラは、鉛色の、尖った小石を取り出した。


「シビナイトか・・・」


 アミーラは取り出した小石はすぐに引っ込めた。


「それはどういう石なの?」


 尋ねる作治の学生服を、アミーラはまじまじと見た。


「サク。お主魔法学科の生徒だったな?」


「え?いやだから僕は普通学科の生徒だって」


「これはあまり役に立たない石だ。少なくともメタルイーターを倒すには使えん」


 そう言って。アミーラは鋭利な鉛色の小石をポケットに仕舞いなおした。

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