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普通学科の劣等生(旧題魔法文明滅亡一万年後)  作者: 虹色水晶
第二章 即死魔法も銃も槍も効かぬ化け物
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なるとクラブ(2)

 廃ビルから出た直後、アミーラの持つ携帯電話から明瞭な会話が聞こえてきた。

 鉄筋コンクリート製の廃ビルから出て、青空の下に出たおかげで、電波状況がよくなったせいだからだろう。


『本部!本部!応答してくれ!!』


『こちら本部。どうかしたのか?』


『メ、メタルイーターだ!メタルイーターの大群だ!囲まれている!』


『何?よく聴こえない。繰り返せ』


『いいから早くこっちに応援をよこしてくれ!このままでは我々は全滅だ!!』


『こっちってどっちだ?』


『聴こえてるなら早く援軍を送るんだ!水源地後の古代遺跡だ!』


『申し訳ないが直ちには無理だ。転移装置が作動しない』


『俺達を見捨てる気かっ!?』


『そんなことはしない。援軍はちゃんと送る。前線基地はそこから陸路で半日、飛行竜などで二時間の距離だ。それまでなんとか持ちこたえてくれ』


『く、撤退するっ!』


『まて。撤退は許可できない。繰り返す、撤退は許可できない』


『くっそおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!』


 内容について、かなりツッコミを入れたい部分があったが、それよりも先にしなければならないことが作治にはできた。

 作治達の前を横切ったそれは、大人の象ぐらいの大きさ。作治にはそう思えた。

 皮膚の色は陽光を反射する銀色であり、金属質な質感だった。

 というより金属の塊なのだろう。

 クモか、カニに似たような姿。というか、生物学的にはこの両者は同じ種類の動物らしいのだがともかくそれに似ていた。

 脚は四本。腕は一対。ということは手足合わせて六本なので昆虫に分類されるのかもしれない。

 問題がその一対の腕で、回転するドリルの先にハサミがついたような、そんな構造になっていた。

 胴体部分の腹部に赤い、小さな眼らしきものが六個ついている。

 その下から巨大な斧を持った逞しい男性のものとおぼしき太い腕が生えていた。斧を持った腕はゆっくりと、カニだかクモだかよくわからないものの内部に吸い込まれていく。


 こきゅ・・・こきゅ・・・こきゅ・・・こきゅ・・・こきゅ・・・。


 その場で立ち止まり、開口部のみを上下運動させながら吸い込んでいく。ゆっくりと。口いっぱいにホットドッグを放り込めばこんな動きをするかもしれない。

 

 ぺっ!


 腕が突き出ていた部分から、何かが発射された。それは牛の頭部だった。


「ねぇアミーラさん。なにこれ?」


「たわけがっ!逃げるぞっ!!」


 殴り飛ばされながら作治はアミーラにそう命令され、走り出した。


 二人の後ろから、象サイズのクモアシの物体が、カニのハサミをドリルのように回転させながら追いかけてくる。

 規則正しくす唸りを上げる金属音と、断続的にハサミを打ち鳴らす音を後方に聞きながら作治は逃げる。

 そして前を歩くアミーラの、雲の切れ間から刺す陽光を反射して輝く長い銀色の髪を見ながら疑問の一つが聞くまでもなく解決した。


 ああ、これがメタルイーターとやらなのか、と。

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