なるとクラブ(1)
ピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロピロ
非常に不愉快な電子音だ。
具体的に言えば面白そうなロボットアニメが始まったと思ったら、第二話でいきなりヒロインの女の子が真っ二つになって死んで、後番組が
Toltutemo Eraku
つまらないアニメだったような、そんな感じだった。
アミーラはその不愉快の原因をフランドル衣装のスカートのポケットから取り出した。
それは辞書の半分くらいのサイズのガラケー状の物体だった。
「これは古代魔法文明の遺物をドゥエルガルの技術者らが復活させたものだ。携帯電話という」
「へ、へー。凄いねー。一体どんな魔法の品なんだい?」
だいたい予想はついているのだが、いちおー作治は尋ねてみた。
「驚くでないぞ。実はこれは魔法の品であって、魔法の品ではないのだぞ?」
自分が造ったわけでもないのに、なぜかアミーラは得意げだった。
「へーそーなのかー(棒)」
どちらかと言えば演技くさい口ぶりで作治は尋ねる。
あまりに乗り気ではない作治の態度に気分を害するわけでもなく、アミーラは頼みもせずになおも説明を携帯電話の続ける。
「この携帯電話なる道具は魔力を持たない者でも念話の術が使えるようになる便利な品なのだ!予め雷属性の魔力を内部に蓄えることにより、最長6時間、同じ携帯電話を持つなら誰とも定額魔力消費で通話可能なのだ!勿論使用後はお店か、自分で魔力を充填する必要があるがな」
「それはベンリダナー(棒)」
そういえばこの世界でどんな魔法や武器よりも強力なアイテムになりそうなスマートフォンは自分の学生鞄ごとどこかになくしていることを、作治は今更ながら思い出した。
さようなら。
試しに一万円課金して、最初の一回で出てきたアルティメットヴァルキリア。
「で、誰からの電話なの?」
「んーとだな。これはプライマリーE周波数だな」
「プライマリー、何それ?」
「緊急事態が起きた時に使われる優先回線だ。どれ」
アミーラは携帯の通話ボタンを押した。
『ザッ・・・ザッ・・・非常・・・部隊・・・迎撃・・・』
『我らに・・・太陽神・・・祝福を・・・』
『絶対に・・・下がることはない・・・ザッ・・・ザッ・・・』
「なにこれ、戦争みたいだな?」
「というより戦争をしているようだなぁ。なにやら外で誰か派手に攻撃魔法を使っているようだぞ?」
「誰と誰が?」
「通話状態が悪いからよくわからんのう。まぁよい。外の様子を見に出てみるか」