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終わらない片想い。

それから数回、葉野君とメールをやり取りした。


何気ない日常会話。


でも嬉しかった。


自分の今現在の事を何と無くメールする。


離婚した事やその理由など。


『大丈夫? 大変だったね』


優しい文面に感動する。そして再び想いが溢れる。


しかし彼には家庭がある。想ってはいけない人。


「あーあ。 あと十五年昔だったらなぁ」


言っても虚しいだけだが、つい口にしてしまう。

「まあでも、 実らぬ想いか……」



告白したとしてもきっと実らぬ想いだ。


やはり言わなくて良かったのかも知れない。



もし万が一でも上手くいったとしたら?

いやいや。それはないな。




「お母さん? どしたの?」


キョトンとした目で菜々が私を見た。


別の人生があったとしたら。

私は子供達に会えなかったかも知れない。


そんな事は考えられないな。



「どしたの?」


「おやつ〜!」


「はいはい。 おやつね? 今日はクッキー焼いたよ?」


「わーい!」


無邪気で可愛い我が子。やはり別の人生など考えられない。

離婚はしたけど、宝物を授かった。



クッキーをお皿に移しながらそう思った。



けれどやはり気になってしまう。昔々の片想いの相手。


子供だったとはいえ、長い事想った相手だ。


久しぶりに片想いの気持ちが胸に宿った。



「別の人生かぁ……」


葉野君からのメールを見ながら、何と無く呟いた。


もしも告白していたら?もしも上手くいったとしたら?


今となってはどうでもいいよな。


スマホをカバンにしまい、夕飯の買い物に出掛けた。



スーパーに行きカートを押しながら必要な物を取る。


仲良さそうな親子が楽し気に買い物をしていた。


離婚して数年。たまに会う元夫とも、昔は仲良く買い物をしていたな。


今頃他の誰かといるのだろう。


バカバカしい。


さっさと買い物済ませ、スーパーを出た。


車に荷物を積み込んだ時、メールが鳴った。


カバンからスマホを取り出し受信を押す。



「葉野君からだ。 なんだろ?」


メールを開くと 『同窓会前にちょっと会わない? 久しぶりに話がしたくて』


あの頃の私なら飛び上がって喜ぶだろう文言が書いてあった。


暫く車の中で考える。


会って良いものか。二人だけで……。


同窓会とは訳が違う。


まあでも同級生だし……。


軽い気持ちで返信した。


『いいよ。 いつにする?』



今度の土曜日、会う事になった。


積もる話は……ないな。小学校ネタかなぁ。


帰り道、少し喜ぶ自分がいた。




土曜日。夕方子供達を母に預け、私は待ち合わせの場所へと向かう。


やはり緊張するな。どれくらい振りに会うんだろ。


待ち合わせの駅の改札、ドキドキしながら待った。


やがて男の人がこちらへ向かって来た。


葉野君だ! 直ぐに分かった。


大人になってる……。当たり前か。

でも、やっぱり面影があった。



「久しぶりだね。 元気だった?」


「うん。 葉野君は?」


「ぼちぼちかな。 で、 何処行く?」


「うーん。 取り敢えずお茶する?」


ひとまず近くのカフェに入った。


コーヒーを頼み、黙ってしまう。


「何? 緊張してるの?」


「いやぁ。 何話そうかと思って……」


「昔話でもする?」


「小学校の時のね」



私達は小学校時代の話をした。





小学校六年二組。担任は女の先生。


厳しかったが、きちんと生徒と向き合ってくれた。


騒がしい教室。ふざけ合う子供達。


「静かに! 人の話はちゃんと聞く!」


事ある毎に叱られて。でも真っ直ぐに生徒と向き合い、一生懸命な先生だった。



「今時そんな先生少ないよね? 私正座させられたし」


「宿題忘れたりふざけたりしたら、 机事廊下だされたよね」


コーヒーを飲みながら、昔話に花が咲く。


こうやって好きだった人と話せるなんて。

不思議な気持ちになった。



「それにしても、 変な感じだよね。 まさか大原とこうやって話すなんてさ」


「私も。 昔は考えられなかったよ」


「今だから……?」


「そうね。 今だからかな? 私葉野君の事好きだったし、 今じゃなきゃ無理だったかな?」

「初めて聞いた。 オレが好きだったなんて」

「昔の事よ………」


「そっか。 昔か……」



今でもドキドキする。片想いが終わってないから?

違う。ただ懐かしいだけ。それだけ……。


「告白してくれたら良かったのに」


「えー? そしたら付き合ってた?」


「うーん。 分からない」


「何それ?」



こうやって言えるのも、今だから。

昔なら無理だった。


でも、ドキドキが止まらない。


「オレが結婚してなかったら、 () った? 好きって……」


「さあ……。 分からないよ」




カフェを出たら、すっかり外は夜の色になっていた。


「飲みにいく?」


「うん」



二人で居酒屋の暖簾をくぐった。

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