懐かしい思い出。
夕食後、私は卒業アルバムを押入れから引っ張り出した。
小学校の卒業アルバム。
「久しぶりだ」
少しドキドキしながらページを開いた。
先ずは先生方のメッセージ。
六年一組のページ。
六年二組のページ……。
あの頃の集合写真。懐かしい顔があった。
あどけない私の姿も。
当時は今の私など、想像すらつかない。
「皆子供だなぁ」
小学校時代、かっこいいと思った男子も、やはり小学生。今頃皆どうしてるのかな。
卒業文集。色んな事が書いてある。
それぞれの思いの詰まった卒業アルバム。
一つ一つ思い返し、ページをめくる。
『十年後の自分』
手が止まった。十年後の自分か。働いてたよ。
それから数年後結婚したけどね。
まるでタイムスリップしたかの様に、当時の思いが蘇る。
「早く皆に会いたいなぁ……」
思い出は単なる思い出。過ぎ去った過去。
しかし、集合写真の葉野君の姿を見た時、私の気持ちは小学生に戻ったかの様になった。
小学校六年生。
ざわつく教室。ふざけあうクラスメイト。
休み時間はいつもこんな感じだ。
その中で一際目立つ彼がいた。
どちらかと言えばモテるとかではないが、クラスで人気があった。
面白い人。といえばいいのだろうか。
とにかくクラスで人気のある人だった。
比較的大人しく目立たない私は、そんな彼を羨ましく思っていた。
憧れと言う物も抱き、いつも目で追ってしまう。
誰にでも普通に話し、打ち解ける彼。
接点はなかったが、彼の笑う声を聴けるだけで嬉しかった。
二十年。その間にももちろんクラス会等開かれたが、私は彼に声すらかけられなかった。
それからは、私の引越し等があったりして、そう言う物には出席しなくなった。
久しぶりに開かれる同窓会。久しぶりに会う彼は、どんな風になっているのだろう。
ふとアルバムの住所の欄が目に入った。
……。
いや。同窓会で会うし。それにいきなりは。
彼の住所と電話番号。もちろん当時の物だ。
「さすがに結婚したよな」
いい年だもの。結婚して実家にいないだろう……。
そう思うけれど。どうしても気になった。
今どうしているのかが。
昔からの悪いクセだ。気になったらとことん気にしてしまう。
「いるわけないよね……」
スマホ片手に彼の家に電話をしていた。
私って……。
数回のコールの後 『はい。 葉野でございます』
やや年配の女の人が出た。
彼のお母さんだ!
直感的にそう思ったのは、昔彼の家に電話をした事があるからだ。
声の感じは変わっていなかった。
『もしもし……。 あの大原と申します』
旧姓を名乗った。
離婚したが、子供の事を考えて名前は変えていなかった。
『あら? 大原さん? お久しぶり。 元気だった?』
やはり覚えていてくれた。
小学校時代、何回か会って少し話した事があった。
『お久しぶりです……』
妙に緊張する。
『紘斗ね。 結婚して今いないのよ。 あ! 直接電話してみて?』
え? 直接ですか……?いや。でもそれは。
『番号言うわね?』
あっさりと連絡先を教わった……。
いくら同級生でも、いいのだろうか。
まあいいや……。
私は彼のケータイの番号のメモを見つめた。