結婚指輪。
自室のタンスの小引き出しの中から小さな木箱を手に取った。
ベッドに座り木箱を開け、銀の指輪を取り出しそっとかざしてみる。
私の結婚指輪……。
どうしてだろう。これだけは捨てられずにいた。
夫が出て行き、実家に戻る際全てを捨てて来たのに。色んな思いと共に。
未練なんてないのに、何故だろう。これだけは捨てられずに今もある。
夫への気持ちなどとうにないのにな。
「捨ててしまおうか。 やっぱり……」
指輪を見つめ、独り言を言った。
結婚とは他人同士が一緒に暮らし、家庭を築くもの。
結婚に失敗した私。もう一度築く事ができるのだろうか。
他人同士一緒に暮らせるのだろうか。
銀の指輪が私を苦しめた。もう一度指輪をはめられる?
子供達の母として生きなきゃいけないのに、やっぱり葉野君を想う気持ちが私を揺らす。
だけど子供達は?父親はあの人唯一人だ。
「はーぁ。 何か色々複雑だな」
親子と言う関係は断ち切れないし、でも母としての人生ではない道も歩きたいと思ってしまったり。
揺れる気持ちはまとまらない。
いや、その前に葉野君の離婚問題もあるしな。
ベッドに寝転び思いを馳せる。
親子。片想い。母。
「この先どうなる? どうしたい?」
「分からないなぁ。 答えなんて出ないよ……」
キラキラ光る指輪を握りしめた。
「結婚かぁ」
あちらが再婚すれば、私としても嬉しい話だが。会った時に何気無く尋ねた答えは曖昧だった。
父親として、再婚に踏み切れないのかな?遠慮はいらないのに。
「葉野君はどうなんだろ。 本当にいいのかな……」
葉野君の奥さんは違うみたいだけど。
「お母さん。 もう寝ようよ」
「お風呂入ってからね」
子供の幸せが私の幸せ。それでいいんだって思う。本当に?本当に……。
指輪をタンスにしまい、お風呂に入る準備をした。
「やっぱり明日捨てよう。 指輪」
そう決めてお風呂に入った。




