第三話「デート」
彼、水沢くんと同棲を始めることになった私。
どきどきしながらも、なんとかやっていってる。
今日は初めての日曜日だった。
「おはよう、月美」
「うん、おはよ、浩太」
一体彼に何があったのかわからないけど、お互いを名前で呼び合うようになっていた。
最初はぎこちなかったけど、だんだんと慣れていった。……この生活にも。
「いただきます」
ご飯は私が作っている。彼には二度と作らせない。彼は全ての栄養分とかを吟味したうえで足りないものを化学薬品で補わせようとしていたのだから。こういうのは現実では絶対に亡いと思っていたが、本当にやる人がいたとは……。
私はそこそこ料理ができる方なので文句を言うことなく食べていた。……まぁ、文句を言ったら張り倒すつもりだけど。
「ごちそうさま」
彼は食事の時はパソコンをやらない。
ちなみに、彼に与えられた部屋は父親が使っていた部屋でいろんなパソコン機器が残っていた。初日には珍しくはしゃぎ回っていたものだ。
「今日はどうする? どっか行く?」
私は天気がいいので外に行って遊びたかった。好きな人とデートしてみたい。
「……そうだな。天気もいいし、パソコンばっかりじゃ飽きてくるもんな」
やっぱり飽きるんだ。
「じゃあ、どこに行く?」
「……スギ薬局」
「嫌だ」
「……じゃあ、どこがいいんだよ」
っていうか、それしか選択肢が無いの……?
「うーん……ジャスコ、行こう」
「あぁ、いいよ」
彼は私と住み始めてから少し優しくなったような気がする。クラスでは同棲していることがバレないようにしている。バレたら即退学だろう。
ジャスコまでは電車で行った。彼はきちんと私服を着ていた。私が用意したのだ。さすがに町中では自重してほしい。
入ってすぐに薬局があった。私はすぐに別の入り口から行けばよかったと後悔していた。
「すみません、塩化カリウムとアセチルサリチル酸ください」
「ちょっと!」
私は彼を引きずり出した。
「いーやーだー!」
「駄々をこねるな!」
いい年した高校生がこんなことをやっていると周りの目が痛い……。
私は彼をなだめた後、文房具売り場へ行った。服も買いたかったのだが、男性は退屈してしまうのでやめることにした。
「お、これいいじゃん」
浩太はファイル売り場にいた。資料をファイリングするのに必要なんだろう。
「買うの?」
「あぁ、そうする」
私もペンを三本買うことにした。彼と一緒にレジを通した。
「あー、腹減ったな……」
「そうだね、どうする? 浩太が行きたいところある?」
「俺は、スガキヤがいいな」
ラーメンが好きなんだ。
私は彼と一緒にフードコートへ向かった。お昼という時間もあってかなり混んでいたが、なんとか食べることができた。私は普通のラーメンで彼は台湾ラーメンだった。
「……こういうのって、俺が出した方がいいのか?」
「いや、いいよ。気にしないで」
「ごめんな。迷惑ばっかりかけて」
「いいって」
私と浩太はジャスコを後にした。
がたん、ゴトン。電車が正確なリズムで音を刻んでいた。それを聞いているうちにだんだん眠くなっていく。私は眠ってしまった。
「……おい」
「……んん?」
私は薄めをあける。浩太が目の前にいた。私はいつの間にか彼の肩に寄りかかってしまっていたようだ。
「ごめん、もう降りるの?」
「あぁ、行くぞ」
私は荷物を持って立ち上がった。
彼の顔が赤く感じたのは沈みかけた夕日のせいだろうか。
そんなことを思いながらも、私は幸せを感じていた。
いつまでも、続けばいいのに。
家に帰ってからはいつも通りだ。私が夕飯の準備をしている間に浩太がお風呂を沸かす。
「ご飯できたよ」
「あぁ、今行く」
階段を下りる音が聞こえる。そしてすぐにリビングに顔を出した。
「おぉ、ハンバーグか」
「いいでしょ」
「あぁ、久しぶりだ」
っていうか、彼は今まで何を食べていたのだろう。
「今までうちでは化学薬品で生成したものしか食べていなかったからな……。学食以外でこうやって食べれるとうれしいよ」
マジかよ……。私は深いため息をついた。よく生きていられたね。
「いただきます」
結構なできだった。私は食器を洗っている間に彼に風呂に入っておくようにと言った。
ガタガタと、浴槽の蓋が閉まる音がしたので私も行くことにした。着替えを持ってそっちへ行く。
そして、彼が出てきた。
「いいよ」
「うん」
私はお風呂上がりで髪が濡れている彼に一瞬見とれてしまったが彼がさっさと二階に上がってしまったので入ることにした。
「……ふぅ」
今日はいろいろあったけど、楽しかったなぁ。
……バタン
「……え?」
今、風呂場のドアが開いたよね? 嘘、まさか浩太が……? 一緒に入るなんて……!?
まさか、貞操の危機――?!
ガチャ。扉が開いた。
「こんばんは、月美。元気?」
どっと疲れが出た。なんだ、姉か。
「お姉ちゃんこそ……。びっくりしたじゃん」
「……それよりも……男の子がいるのね。あんた、やりたい放題ね」
「や、ちがっ! そんな、違うって!」
「うっしっしー。いいよ、お風呂あがってから話をしましょ」
私はゆっくり浸かっている暇もなく急いで出てリビングへと向かった。
浩太も先に来て姉と話しているようだった。
「――で、どこまでやっちゃったの?」
「いや……俺は何も」
「うそーん」
……何話してんだよ、お姉ちゃん。
「何もされてないよ、私」
「あら、早いのね」
「そんな、ゆっくり浸かってられる状況じゃないよ」
「そっか。で、本当に一緒に住んでるのね」
「そうだよ」
私はソファーに腰をかけた。姉は以前と全く変わらないようだった。セミロングの黒くつややかな髪がうらやましかった。
「水沢くん、それで月美のことどう思ってるの!?」
「え、ちょっと!」
「俺は……好きですよ、月美さんは優しいですし」
え……?
「いやーん! もう、両思いなんてー! お姉さんお邪魔よね-!」
姉はそういうと鞄を持って
「じゃ、またね」
と言って出て行ってしまった。
どたばたした人だ……。
私は彼の目線を感じた。私は顔を上げた。目があった。
彼はゆっくりとうなずいた。
私もうなずき返した。
こんにちは、まなつかです。
こんなペースで書いていきますが、テスト前だけあって、親がきつい……。
書いている私もドキドキです。
いろんな意味で。
それではっ!!




