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剣と魔法  作者: 珈琲(こひ)
9/10

パトリックの元同僚が語ること 前編

ゆっくりと書いてゆきたいと思います。


よろしくお付き合いください。

パトリックの元同僚が語ること 前編


 パトリックという名前の、仲間であり幼馴染でありマブのダチである休職中の同僚から贈り物が届いたのは三日前のことだ。

 門番から知らせを受けて駆けつけてみると、小汚い男が一通の手紙を振りかざして、息巻いていた。

「俺はここの騎士団員パトリック殿から王女付きの宝石商になれるとお墨付きをもらったんだ」とか、なんかそんなことを言っとった。

 手紙にはパトリックの字で男の罪状と『適当に言いくるめたからあとは頼む』という内容が書いてあった。

 詰め所に引っ張っていって尋問したんだが、まあ出てくる出てくる。魔法使いを閉じ込めた宝石アクセサリーがゴロゴロ。

 上へ報告とともに、宝石は王宮魔道士達へ任せて魔法使い達を救出、男はひとまず牢獄に放り込んだ。

 それにしてもだ。何年も行方知れずでいて、ようやくよこした便りがこれとは。

 いったい何年経ったと思ってるのか。

 俺は一つ決心して団長室のドアをノックした。

 招き入れた団長は俺の顔を見るなり頷き、言った。

「行け」

 同じ事を考えていたというわけだ。

 俺はすぐ旅の荷物をまとめて、違法アクセサリー商が店を出していた市場へ向かって馬を駆った。

 パトリックの奴と話したいことは沢山あるが、優先的に伝えなければならないことが二つ。

 一つは、とりあえず一度隊に顔を出せってこと。

 あいつが隊を出てもう何年も経っている。

 いつまでも顔見知りがいるわけがない。

 今回は門番も詰所にいた団員もパトリックを知っている者だったから事が滞りなく進んだけれど、今やあいつを知る人間は当時より減っているのだ。

 今後また同じように連携した捕物をする可能性があるなら、完全に隊に戻る気はなくても、一度こちらに顔を出してほしい。

 もう一つは、うん、これを最重要で言わなければならない。

 ―――パトリック、お前呪われてる。



 数ヶ月前のことだ。

 とある地方貴族の屋敷で、複数の使用人達が発狂したり行方不明になるなどの出来事があった。

 報告を受けて王都から派遣された魔導士団は、違法な呪術を使ったとしてその貴族の一人娘を連行してきた。

 取り調べに対し娘は、我流の呪術を何度も特定の人物に使った事を白状した。

 が、その呪術のほとんどは相手にかかることはなく、娘に跳ね返ってきた。

 それでも娘は使用人を自分の身代わりにして、呪いをかけ続けていたという。


 娘の経歴を調べると、彼女は過去に王都の学園に通っていたことが分かった。

 第一志望は王都一の魔法学校だったが面接で不合格になり、魔法を専門としない中の上レベルの学校に進んだようだ。

 入学はしたものの性格にいささか難があり、ほかの生徒と馴染めず半年ほどで地元に帰っている。


 娘が呪いに手を出すきっかけとなった出来事は、その短い在学期間中に起こっていた。


 行政について学ぶ授業の一環で騎士団見学があり、そこで娘はとある団員に一目惚れをした。

 王都に出るまで乳母日傘で育ち自惚れの塊だった娘は、異性が自分になびかぬ筈がないとばかりに、その団員に猛烈に付きまとった。

 ―――その団員が他でもない、わが団が誇る優しく親切でちびっ子からお年寄りまで王都老若男女のハートを鷲掴みにするアイドルお兄さん、パトリックだ。


 娘の供述から出てきたあいつの名前に、俺を含め当時の顛末を知る者たちは思わず、

「あの女か!」

と声に出して言っちまった。


 

 俺も奴から「どうにも困ってる」と愚痴られたことがある。

 詰め所の前で遅くまでもずーっと出待ちをする。

 朝や夜、下宿に食事を持って押しかけてくる。

 仕事の警備先にも来て傍に立っている。

 どのパターンも、注意しても中々帰らない。

 娘のこの露骨なアピールをパトリックはいつもやんわりと断っていていたが、執着は実に二ヶ月以上続いた。

 いよいよ耐えられなくなったある日、また詰所にやってきた娘に、奴はきっぱりと拒否の言葉を伝えた。

 俺はその時、娘が錯乱したら取り押さえるよう頼まれて詰所の物陰から様子を見ていた。

 パトリックが

『迷惑なのでもう止めてほしい』

『君に対して特別な好意は無いし今後も持つことは無い』

という内容を辛抱強く何度も繰り返し言い聞かせると、最初は、

『私が好きでやってますから、お気になさらないでください』

『好意がないかどうかは、もっとお互いを知って決めればいいと思います』

などと答えていた娘も、七度目くらいでようやく言葉の意味を理解したらしい。

 ほわほわした笑顔が歪み、震える唇をへの字のまま尖らせてなんか低く唸ってパトリックを睨んだあと、走り去っていった。

 俺たちと娘との接点は一旦ここで終わる。


 娘の分かりやすい落胆ぶりで、失恋した話はすぐにクラスメート達に広がったようだ。

 誰かから面と向かって揶揄われる事はなかったらしいが、プライドが高い彼女は耐えられず、まもなく学校を辞め故郷に戻った。

 その後、『自分に恥をかかせた』としてパトリックに呪いをかけたという。


 そんな簡単に呪いってかけられるもの?って思うだろ。

 その地方貴族、先祖をたどってゆくと遠い遠い遠い所で魔女の一族と血の繋がりがあったらしい。

 魔女といっても何か悪い事をしているわけでもなく、今は魔法力に大変優れた家系という認識になっている。

 知る人は知る、みたいな。何だったかな、ルミ………ルミネなんとかって姓だった。まあどうでもいいけど。

 そのルミネナントカ家と地方貴族の家は今は全く交流もないし、向こうもその地方貴族を親戚と見なしていない。

 豊かな魔法力も地方貴族の血筋の中には大して遺伝しなかったらしい。

 とはいえ通常より少し魔力を強く持って生まれた娘は、いくつかの呪術は使えたようだった。

 王都魔導士団によって、娘の部屋から古い魔法書が押収されている。

 魔女の血筋の女性が先祖のもとに嫁入りしてきた際持参していた物のようだ。

 娘はその本の読める部分だけ読んで、不明な部分は自分の憶測で埋め、無理やり我流の呪いにした。

 呪術に必要な小道具は、小間使いだった子供に言いつけて集めたようだ。

 そうそう、呪い返しの最初の身代わりはこの子供だったそうだ。

 行方不明になっているんだって。かわいそうに。



 俺の語りは長くなりそうなので、前偏と後編に分けるよ。すんません。もうちょっと付き合って。


お読みいただきありがとうございます。


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