野外大市場1 悪徳防具屋が語ること
ゆっくりと書いてゆきたいと思います。
よろしくお付き合いください。
悪徳防具屋が語ること
いいモノを手に入れた。
冷静な顔でいようとしても、思わず口の端がにやけてしまうくらい、いいものだ。
今のところ俺の財産で一番高価だ。
俺の職業は一応魔法使いの部類に入る。
勇者様の仲間になって強いモンスターと戦ったりっていう、そんな華々しいチャンスにはめぐり会ったことは無いがね。
俺の性にもあわんしな。
命の危険を犯して戦うより、旅人や道楽人たち相手に魔法を売るほうが、俺には向いている。
魔法を売る方法は様々だ。
紙に魔法を込めて護符として売る奴もいるし、食べ物や飲み物に回復魔法や毒魔法を込める奴もいる。
俺が得意とするのは、小物に魔法を込める方法だ。
特にアクセサリーと相性が良い。
特に宝石に魔法を込める技は、ここらでは俺の右に出る者はいない。
そうそう、それで、元の話に戻る。
俺は今朝、極上の魔法宝石を作り上げた。
何度眺めても、ため息が出てくる、この可憐なピンクダイヤ。
今朝まではくもり空のような灰色の石だったのに、魔法を閉じ込めた瞬間から王宮の庭に咲く花のようなピンクに染まった。
まったく、思いもよらない幸運だ。
魔法宝石を作る方法は二通りある。
魔法使いが自らの魔法を石に封じ込める方法。
もうひとつは、別の魔法使いを捕縛し、そのまま宝石に封じ込める方法。
前者が正規だが、後者は禁じられた方法だけあってより強力な魔法宝石を作ることができる。
俺が得意とするのは、後者の方だ。
そして今朝。
俺は上級の魔法使いを一人、このダイヤに閉じ込めることができた。
俺だって最初は驚いた。
だって、魔法宝石を買いに来た普通の剣士に見えたからだ。
その女の子はまるっきり剣士のなりで、朝市にやってきた。
ふらりと俺の店に入り、
「ごめんください。こちらでお守りは扱って………」
言いかけ、そして。
商品棚にあるブローチの一つを見て、さっと顔を曇らせたんだ。
そいつは『違法な』方法で作った魔法宝石で作ったものだった。
これを見分けられるのはレベルの高い魔法使いだけだ。
役所配属の魔法使いが剣士に化けて内偵に来た、俺はそう思った。
その子が険しい顔で何かを言う前に、俺は近くにあった空ダイヤを手にとって素早く封印の呪文を唱えた。
その瞬間は、ああしまったと思ったぜ。
手に取ったそのダイヤは俺の道具の中でも一番大粒のやつだった。
もったいねえ、とその時は思ったけど。
ところがどうだ。封じてみたらとんでもない上級魔法使いだった。
これ以下の宝石で封じようとしたなら、魔法使いの力が強すぎて石の方が砕けちまうところだった。
役所の魔法使いにもこんだけの力は持ってねえから、本当にただの『剣士の恰好した魔法使い』だったんだな。
あの子には可哀想だが、俺は間違いなく幸せだ。
これはかなりの値打ちモノだ。
売れば、もうこんな商売をせずとも悠々と暮らしていける程の金が入る。
王宮の魔導師か、魔物の参謀か。金払いさえ良ければ売る客は選ばない。
もう少しで店じまいの時間だ。
店を終わらせたら、今夜でこの汚い市場ともおさらばだ。
夜のうちに大きな街に向けて旅立とう。
この素晴らしいピンクダイヤで俺の未来を買うために。
お読みいただきありがとうございます。




