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剣と魔法  作者: 珈琲(こひ)
5/10

山奥の村2 オヤジが語ること

ゆっくりと書いてゆきたいと思います。


よろしくお付き合いください。

オヤジが語ること


 いやさ。

 ありがたいとは思ってるよ。

 思ったけどさ。

 頼む相手を間違ったとも思ったな。俺は。

 うちのハナッタレが意気がって魔物の出る森に入って行ったって聞いたときは、そりゃ俺でも驚いたからよう。

 通りがかった剣士の二人連れに助けを求めちまったのが、うん。

 ――軽率だったかなァ。


 その二人は若い男女の剣士だった。

 俺はてっきり夫婦ものか、あれよ。アベック……今はカップリってえのか?

 そのカップリって奴だと思ったのよ。

 そうでなきゃ、剣士だけのパーティなんて珍しいものな。

 顔は似てなかったから、兄妹ではねえと思ったけど。

 ま、仲はよさそうだったぜ。

 雰囲気もいいし人当たりも良いし、だから信用したわけよ。

 いや、二人は倅を助けてはくれたんだけどな。

 なんてえんだ?

 倅がな、森から帰ってきた倅が……。

 最近さっぱり言うことを聞かなくなって、生意気なことばかり言ってたあのハナタレが、わんわん泣きながら

「とーちゃああああん」

ってな。

 抱きついてきたのよ。

 最初は魔物に遭遇して、それで怖気て泣いたんだと思ったんだが、違うのな。

 よくよく話を聞いたら、あの女の子の剣士が倅を随分まあ怯えさせたってえじゃねえか。

 剣術音痴な第一級の魔法使いが、剣しか使わないでゴーレムを相手にしようなんざ。

 俺も笑っちまったね。

 まあまあ、なんだね。

 倅は腰ぬけになっちまったが、また鍛えてやりゃいいことだ。

 頼む相手としてはアレだったが、なんだか面白い二人組だと思ったぜ。



 倅を森から連れ帰ってくれた頃はもう夕方だったから、その二人は家に泊めてやったんだが……。

 変な奴らでよ。いや、悪口じゃねえよ?

 変てかさ。面白い奴らでさ。

 女の子はスカーレットってんだが、明るい素直そうな子でな。

 夜には倅と仲直りして、あいつの遊び相手になってくれてよ。

 カードゲームとか、ボードゲームして遊んでいたな。


 男の方……パトリックとは、まあ、飲んだわけだ。

 女房や倅や、スカーレットが眠ったあとに少しな。

 とっときの酒を用意しながら、ふと、俺はパトリックが首に下げてる物に目が行った。

 麻で編まれた紐の先に小さな袋が付いているシンプルなものだった。

 その袋にはパトリックの瞳と同じ色の糸で何かの印が刺繍されていて、袋の口は赤……緋色の糸で幾重にも綴じられていた。

 あまりに飾り気がなさすぎるそれは、防具屋のものではなく、効き目重視に個人が作ったように見えた。

 そいつは何だい、お守りかい?

 そう聞くとパトリックは、ああ、と袋をつまんで見つめながら、

「―――この赤いの、良い色だろ。あの子の名前はどこか異国の言葉で赤色という意味らしい。これを貰ってから気持ちがとても楽なんだ」

って笑いやがった。

 惚気かい?


 お互いの色を付けたお守り袋まで作ってよ。

 ―――でも、パトリックの目の色に合わせるなら、異国呼びの名前色ではなくて、同じく瞳の黒にすればいいのにな。

 それでは配色が地味になりすぎるのかな。

 まあいい、素人にはよく分からん分野の話だ。

「あの子とはどういう関係なんだい」

だって、気になるだろ?

 色男と可愛い娘さんが、二人旅なんだぜ。

 それにしてもあの男は酒に強かったな。

 かなりきつめの酒なのに、顔が赤くもならねえ……目元が少し赤かったくらいさ。

 しっかりとした声で、笑って言った。

「複雑だな。説明するにはあまりに複雑だ。だが悪い関係じゃない」

「気になるぜえ、その複雑って何だい。もったいぶらずに早く言え。女房にも倅にも言わねえよ」

あんな言い方されれば、気になるだろう?

 パトリックのヤツは口を閉じたまま、なんってのかな。

 凄く、凄く、なんだろう。なんて表現していいのか解らねえ……。

 目を細くした。

 嬉しそう?いや、……楽しそう?ううん。しっくりくるのは、幸せそう?

 困ったな。

 どれも違うような気がするし、全部あっている気もする。

 全部混ざって、最後に少しだけ寂しそうな、そんな表情で酒の入ったグラスを見つめてやがった。

 癪だがそれが絵になるんだなあ。

 あいつは結局、スカーレットについては何も言わなかった。

 でも、あの表情が答えなんだろうなぁ。

 そう思うぜ。

 スカーレットといるのは、きっとこの上なく楽しくて嬉しくて幸せで、少し寂しいんだろうぜ。


 

 また来いよ。

 そう言って俺は翌朝、二人を家から送り出してやったけどな。

 歩き出しながら、まだ姿が見えてるうちに二人はもう何かお喋りし始めてた。

 仲よさそうな感じでな。

 あれは、あれだ。

 うん。

 あれは良いカッポルだと思うぜ。

 俺が言うんだから間違いねえよ。


 ……なあ、やっぱりアベックって言葉使っていいかね?


お読みいただきありがとうございます。

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