山奥の村1 少年が語ること
ゆっくりと書いてゆきたいと思います。
よろしくお付き合いください。
少年が語ること
悪かったって思ってます。
モンスターが出るから入っちゃ駄目だって、大人達から言われている森に行ったこと。
友達に格好つけたかったんです。
反省してます。
でも、バチにしては大きすぎます。
神様は僕にここまで怖い思いをさせなくてもいいと思うんです。
ゴーレムに襲われて『もう駄目だ死んでしまう!』って時に、二人の剣士さんが助けに駆け付けてくれたのは、そりゃ嬉しかったけど。
でも、でも。
なんなんですか。 あの人たち。
男の剣士さんは普通に強い……いや普通よりとても強いほうだと思う。
お城の騎士団の人達だって、ゴーレム一匹やっつける為に何人かで組むって話を聞くのに、あの剣士さんは一人でも戦えてるから。
問題は女の剣士さんです。
あの人、ぶっちゃけ弱いです。
男の剣士さんのサポートが全然できてないんです。
切り込もうとして自分の足に蹴っ躓いてよろけて、結果 ゴーレムの皮と脂肪が分厚いお腹に、馬鹿みたいにまっすぐ突っ込んでいったりして。
それで剣が折れて、はじけ飛んだ切っ先が僕のほっぺをかすったんです。
かなり頑丈で切れ味鋭い剣でないとお腹への攻撃は無理だって、僕だって知ってます。
あのお姉さんは剣士としての経験が浅い以前の、運動神経とかその辺に問題がある気がします。
「ははは、スカーレットさん、その剣じゃ弱い。腕の内側とか脇の下とか内股、そのあたりなら多分あなたでもいける」
男剣士さんが楽しそうに笑ってゴーレムの攻撃をよけながら、焦る感じもなく言いました。
なんか、こういう展開には慣れているみたい。
でも笑うってどうなんですか、僕ケガしてるのに。
「ああ、皮膚の弱い所ですね!わかりました!」
お姉さんはそう言って、折れた剣を片手で高く掲げ、何かを短くつぶやきました。
すると、僕のほっぺをかすって地面に落ちた刃物の破片が、まるで時を逆戻したように、ヒューンと飛んでまた元の一本の剣に戻ったんです。
折れる前より傷みが消えた、まるっきり新品に戻ったのです。
刃物が戻るとき、また僕のほっぺをかすって行ったのがすごく痛かったけど、それより僕はお姉さんのやったことにビックリしてしまいました。
あれって、たしかすごい難しい魔法じゃなかったっけ。
武器をあっという間に直す呪文はとっても頭のいい魔法使いしか使えないって、とーちゃんが言ってました。
しかも短縮呪文に組み直してるなんて。
「わっ大変。ボク、ごめんね!」
お姉さんが僕のほっぺの怪我と血に気がついて、パチンと一回指を鳴らしました。
すると瞬く間に、僕の頬の傷は跡形もなく消えました。
呪文の詠唱を省くのもめっちゃ魔力の強い魔法使いしかできないって、とーちゃん言ってた気がするけど…。
お姉さんは再び剣を構え、あんまし腹筋なさそうな声で「やーっ」て言いながらゴーレムに斬りこんでゆきました。
お姉さんの繰り出した剣先は『さくっ』ていう感じで、なんとなーくゴーレムの腕に刺さりました。
刺さった腕の筋肉が締まったらしく、ゴーレムがその腕を振り回すと、剣はお姉さんの腕から抜けて、それで。
お姉さんは勢いで空中に放り出されて……僕の上に落ちてきました。
「大丈夫か二人とも」
男の剣士さんが、あわてて駆け寄ってきます。
その間にもゴーレムのパンチが男の剣士さんに飛んでくるのだけど、そのお兄さんはまるで後ろに目が付いているみたいに、振り向きもしないでひょいひょい避けてしまうんです。
「やっぱゴーレムはまだスカーレットさんには難しかったな。俺が片すから、その子の腕を治してやってください」
男の剣士さんの言葉に、僕は自分の腕を見ました。
いろんなことでマヒして気がつかなかったんだけど、僕の腕、肘と手首のあいだ真ん中へんの所でちょっと……。
ちょっとじゃない、ぐにゃって直角に折れ曲がってたんです。
「うわわわわわぁ!」
僕が悲鳴を上げると、お姉さんは「大丈夫大丈夫!」とニッコリほほ笑んで、また指を鳴らしました。
そしたら、そしたら。
絶対超一級の魔法使いです。あっという間に僕の腕は治ったんですから。
「ど、ど、どうして魔法でやっつけないのさあ!」
僕はパニックになりながら、お姉さんに言いました。
するとお姉さんは、真面目な顔をしてこう答えたんです。
「私、今は剣士だから。剣士は戦うときはやっぱり剣でなくては」
だから私、修復系や回復系の呪文は他に方法がない時だけ使って、攻撃呪文は一人前の剣士になれるまで使わないって決めたんだ。
そう言ったお姉さんの後ろで、男の剣士さんが鮮やかにゴーレムの首をはねました。
治ったものの、僕、腕の折り損じゃないですか。
ああ神様、ひどすぎます。
お読みいただきありがとうございます。




