表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法  作者: 珈琲(こひ)
2/10

始まる旅路2 旅の剣士が語ること

ゆっくりと書いてゆきたいと思います。


よろしくお付き合いください。

旅の剣士が語ること


 俺は仲間を作らないことにしている。

 そう決めてかれこれ五年くらいかな。

 自惚れてはないけど、剣の腕前はそこそこ良いほうだ。

 一人旅でもよっぽど無茶をしなければ死ぬような目にはあわない。

 でも別に一人が好きという訳じゃない。

 自分で言うのも情けないけれど、どちらかというとちょっと寂しがり屋のほうだ。

 いや、かなり寂しがりかもしれない。

 なので本当のところ、一人旅は大嫌いだ。

 大嫌いだが、人間関係のゴタゴタはもっと大嫌いなのだ。

 仲間と歩くと俺はそういう所謂ゴタゴタ状態を引き起こしてしまう。

 そしていつも微妙な空気でパーティを解消することになる。

 だったら寂しくても最初から疲れないほうがマシだと思う。

 なぜそんな状態になるかというと、俺というやつは惚れっぽいのである。

 昔はそうでもなかったはずなんだが、まだ二十代とはいえ歳を重ねると性格も変わってゆくのだろうか。

 ここ数年でずいぶん惚れっぽくなったと感じる。

 仲間の一人を好きになってしまったり、仲間の女の子から好かれたり。

 そして告白しては毎度断られ、まれに告白されては俺も毎度断り………と、そうやってまずい空気になってゆくのだ。

 告るなと言われれば、それは最もな意見なのだけれど、ついつい我慢できなくて好きだと伝えてしまう。

 なぜか我慢できずに伝えてしまうのだ。

 で、逆に告白されたなら、それを受け入れれば良いというのもそれはそうなのだが、俺も譲れない部分があったりなんだりで。

 俺に告白された人も、俺に断られた人も、気分を害して離れてゆく気持ちはとてもわかる。

 早く離れたいだろう、気持ちが悪いだろう。


 俺はどうやら同性に恋心を抱くタイプの男なのだ。


 三年前のある日のことだった。

 例によって一人旅をしていた俺は、ある森の中で少年を助けた。

 近くに魔法学校があったらしく、その少年は戦闘魔法の実習で森の中に入っていたようだ。

 その森ではめったに出ないドラゴンに、運悪く遭遇してしまったらしく、仲間たちは薄情にも逃げてしまったらしかった。

 気づいた俺が攻撃可能な距離まで走りついた時、その少年はまさに鋭い爪の二撃目を受ける直前だった。

 ドラゴンを二太刀で仕留め、俺は攻撃を受けた少年に手を貸そうと振り返った。

 そして、その少年が俺の顔を見上げた瞬間に。

 ああ、そう。久々に俺の持病が出た。

 一目惚れだ。

 瞬く間に。俺の目の中に。頭の中に。その子が焼き付いてしまった。

 ひたむきで真っ直ぐそうな、澄んだ黒い瞳。

 瞳と同じ深い黒髪。木漏れ日に透けて溶けそうな白い肌。

 うん―――いや、これが恋とか何とかいうのなら、俺が今まで誰かに感じた『好き』は恋とは別物のなにかだと思う。

 そのくらい強烈な感覚だった。

 声が出なくなってしまって、近づきたい気持ちと『だめだ目を覚ませ』という気持ちがいっぺんに混ぜこぜになった。

 俺は結局、その子に向かって不愛想に薬草を一袋放り、その場を逃げ出してしまった。

 だって今まではまだ旅の仲間だったから、まだアレだけど。

 あの子は生徒だろう。

 まだ子供だろう。

 駄目だろうそれは。俺の良心的にも、それ以前に常識的にも。

 駄目だ駄目だ。絶対駄目だ。


 でもあれ以来、ずっとあの少年が俺の中に住み着いてしまっている。

 旅の仲間を求める酒場で登録名簿を見るたび、気が付いたら新人魔法使いがいないか探してしまう。

 二年前も一年前も、一昨日も昨日も。

 そしてきっと今夜も明日も、俺は酒場の名簿を見るんだろう。

 あの魔法学校出身の魔法使いが登録されていないか。

 きっと、探すのだろう。

お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ