表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
剣と魔法  作者: 珈琲(こひ)
13/20

13 常秋の古城 自称案内係が語ること

ゆっくりと書いてゆきたいと思います。


よろしくお付き合いください。

 常秋の森のなかにある古城は、この大陸がまだ小さい国ばかりだった頃の名残だと聞いた。

 かつての城主はほかの地域を任されて移り住んだのだったか途絶えたのだったか、どうだったかな。

 今は大聖堂として使われている。

 大聖堂はここを入れて五つあって、大陸の各地域に、大きく王都を囲むように配置されている。

 ああ、俺は大聖堂の周りに建っている商店街の案内役だ。

 荷物配送の傍らに自主的にやっているものだが、大聖堂側で雇っている奴らよりよっぽど詳しいんだ。

 大聖堂が公式に出した案内役募集に応募したこともあったが、喋り方が少し雑だとかではじかれちまった。

 高いところにいる聖職者様たちは分かってないね。言葉遣いは親しみやすい方がいいに決まってる。

 採用された奴らのあの気取った丁寧語の他人行儀なこと。

 まあいいさ。こっちは無償の親切心でやってやってるんだから、俺のほうが格が高いね。

 おっと、大聖堂の話だったな。

 五つの大聖堂にはそれぞれそこの頂点の聖職者、(ひじり)と呼ばれる役職がある。

 王都の魔導士団の中から選ばれた人だ。

 それぞれの土地の呼び名がつけられる。

 ここのお方は『常秋の聖』だ。

 あまり表には出てこない。

 この俺だってお姿は見たことがない。

 性別は男だって話だが。

 まあ奥の奥の間とかでお祈りとかなさってるのかね。


 巡礼客や観光客、旅人達で大聖堂は毎日賑わっている。

 担当している荷物を各店舗に届け終わったのは昼過ぎ。

 そこから日暮れまでは俺のボランティアの時間だ。

 正規の奴らの手が足りてない所を俺はいつも補ってやっている。

 今日も、俺は店を探してウロウロ迷ってる旅人を見つけた。

 剣士のようだ。

 黒い髪は短いが女だ。

 細々としたものを片手に抱えている。あちこちで少しづつ買い物をしているようだ。

「姉ちゃん、どんな店をさがしてんだ?」

俺は気さくな調子で話しかけた。

 女剣士は突然横に立って話しかけた俺に驚いたらしく、ビクッと体を震わせてこちらを見た。

 愛想のない格好しているから期待してなかったけど、顔は結構可愛い部類だ。

 びっくりした形の大きい黒い瞳を見ると、もっと驚かせたくなるね。

「えっ、あの」

「ふうん、まじない関係の道具を作るのかい。ずいぶんいい素材を集めてるようだが。女ってのは職業に関係なくオマジナイが好きだよな」

俺は彼女が抱えている商品をざっと見た。

「見たところお守りでも作るのかな。でもその材料は随分上等だぜ?地獄の魔王からにでも身を守るってわけ?そもそもその材料はみんな強ーい魔法使いや魔道士レベルじゃないと使いこなせねーの。アンタみたいな女剣士ちゃんは、ほれ。あとはこれかな」

ちょうど隣に魔法具材料の露店があった。

 俺はそう言いながら彼女みたいな子でも使いこなせそうな材料を籠にとってやった。

 女剣士ちゃんは困った顔になって、俺から少し離れながら頭を軽く下げた。

「ご親切にありがとうございます。でもこれでは少し弱くて………あ、これとこれあたりを探してました」

女剣士ちゃんは俺が取った材料を戻し、その上の棚にあるもっと効果の強い物を入れなおす。

 分かんねえ子だな。

 俺は商品を持っている女剣士ちゃんの手首をつかんだ。

 女剣士ちゃんがビクッと震える。

 ま、こんくらいしないとイキがった子は話も聞かないからさ。

「あのさ。厳しいこと言うけどちょっと聞いて?素人がそんなレベルの使ったって無駄なの。この素材の真の力を引き出すには見合った魔力が必要なの。おわかり?アンタって剣士だろ?魔法使いでもない子がこの素材を使うのは身の程知らずで恥ずかしい事って覚えといた方がいいよ」

俺はこの商店街のあらゆる品物の価値を知ってる。だから教えてやってるって理解しろよな。

「俺これでも詳しいから。どの商品をどんなレベルの人間が扱えるかとかな。アンタはまだ違うんじゃないかなあ?なんつーかぁ、ただ高価な素材使って自己満したいんなら?それで良いけど?そんなんじゃこの先も今のレベル超えらんないよ?」

つかんだ女剣士ちゃんの手が、とても細かくだが震えているのが伝わってきた。

 お?プライド傷ついた感じか?それとも身の程を自覚して恥ずかしくて震えてる?ま、これでちょっと成長できたんじゃねえの。

「ーーーご」

少しこわばった顔とかすれた声で女剣士ちゃんが俺を見る。

 そう言う顔はいつもするわけ?ちょっと嗜虐心が騒ぐけど、もしかして計算女さん?

 そんなことを考えながら女剣士ちゃんの顔を眺めると、彼女はぐっと表情に力を入れて微笑んだ。

「ご心配なく。ちゃんと自分のレベルにあった素材を選んでいるつもりです」

あー。素直に『はい』が言えないパターンの女さんね。

「や、だからさぁ!」

俺がもう一度言い聞かせようと顔をぐいっと近づける。

「あの、やめ………!」

女剣士ちゃんがさらに後ずさるのと同時に、俺と彼女との間に誰かが割り込んできた。

 俺より少し背が高い。

 見上げると、やたら顔の良い男が俺を見ろしていた。

「あっちの方にも面白そうな素材屋がありましたよ。俺も後で行きますから、先に見てきてください」

 男は女剣士ちゃんにそう言って聖堂内へ行くよう促した。

 連れのようだ。こいつも剣士姿。

 女剣士ちゃんが建物の中に入っていったのを見届けてから、男は俺に向き直った。もしかしてちょっと誤解されてる感じ?

 俺は笑いながら肩をすくめた。

「あんたあのコの連れ?ちゃんと勉強させときなよ。俺、わかんない奴が無駄に高いの買うのとか見過ごせないっていうか?とりあえず忠告はしたけ………」

「あなた聖堂の職員ですか?」

男は俺の話をぶった切って尋ねてきた。

「は?」

「常秋の聖から任命された、聖堂の、正式な、職員の方、ですか?」

男はにこにこしながら、一語一句ゆっくり言った。

「や、俺は地元でも一番ここに詳しいから」

「聖堂の正式な職員の方ですか?」

同じ言葉で繰り返し尋ねる男の顔を見て、俺は少したじろいだ。

 笑顔なのに目が全く笑ってなかった。

「だか、だから。俺は一番詳しいから、善意で」

「職員の方かどうかを聞いています」

男は両手の平をこちらに向けて、まるで俺をなだめるような仕草をした。

 なんだよ、まるで俺が感情的になってるみたいに振る舞って。

「いやまってまってまって、そういうのやめてくんないかなその仕草さあ。いや俺は昔から」

ちょっと焦って言葉が早くなる。

「落ち着いて。あなたがちゃんと聖堂から資格を得た案内係の方かを聞いているだけです。得ているのか確認したいだけです。違ったら犯罪行為ですからね。それと俺の大切な連れに無理矢理触れるという暴行行為についてもあなたの上の人間に聞いてもらわねばならない。聖堂からの正式な資格を得ている方ならば、意見の送り先は聖ですので」

男が落ち着いた口調のまま告げた言葉に、俺はカッとなった。

 正式な資格、正式な資格って何度も繰り返しやがって。

 しかも暴行だと?理解しない馬鹿女に教えてやろうとしただけじゃないか。

 その時、男の服の襟元からヘタクソに編んだ紐が見えた。

 女剣士ちゃんが買ってた素材と同じものだ。

 俺は男の首からその紐をつかみお守りをちぎり取った。

 想像通りだ。全くプロじゃない。全然ヘタクソな縫い目で、刺繍された紋も歪でみっともない代物だ。

 袋の端はくたびれて穴が開きかけている。なるほどこれを作り直そうとしてたわけ。

 男の表情がさっと変わった。

 プレゼントだったのか?さぞ大喜びで付けてたんだろうが、こんなの素人が作ったって効果は無いの。残念でした。

「へたに自前で作らないでちゃんと店で買うこと。これ旅人の基本よ、基本。おわかり?」

資格だ何だって俺を見下そうとしたって、知識はこっちが上なの。

 俺は誇らしい気分になり、声も上ずった。

 涼しい顔をしていた男が慌てたように見えたのが、胸がすくほど嬉しい。

 不思議なくらいどんどん気持ちが浮かれた。

 と、今度はなぜか急に憎らしくなった。

 こんなに知識を持って街の役に立ってる俺を、こいつは問いつめようとしている。腹が立つ、腹が立つ、憎らしい。

 感情の変化が嵐のように激しくて、自分でもこれはおかしいと感じた。

「そのお守りを返しなさい」

男が厳しい顔になって俺に言った。

 手を伸ばしてくるのを俺は振り払った。

「うるせえ!」

「今、気持ちが穏やかじゃないだろう。あなたがお守りを俺から取ったからだ。今すぐ返すんだ」

男の言うことに俺はカッとなった。

 言葉通りなら、俺の長年の知識に反してあんなカス女剣士が作ったもんが効果ありって話になる。

「冗談じゃねえんだよ!こんなもんに効果があるわけねえ!あるわけねえだろ!」

怒りに任せて俺はお守りを地面に叩きつけようとした。

 と、そのお守りが横からすいっと抜き取られ、俺の腕だけが下に振り下ろされる。

 誰が邪魔しやがった、と俺は横を見た。

 そこには見たことがない中年の男が立っていた。



文中に名前は表記してないけど、脳内で自称案内係の名前はマジウザス

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

お読みいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ