始まる旅路1 魔法学校の生徒が語ること
ゆっくりと書いてゆきたいと思います。
よろしくお付き合いください。
魔法学校の生徒が語ること
私が魔法高等学校附属中に入ったのは十歳の時でした。
はい、本当なら十三歳から入学する学校なのですが、飛び級で。
同年代と比べ魔法力が抜きんでているとかで、親や初等学校の先生たちが相談した末、私が知らないうちにそのように決まっておりました。
色々おだてられて居心地が悪かったものです。
でも自分でも、年上のクラスメート達より少し魔法が得意だ……という自覚はありました。
クラスメート達からは何人も、なんというか、強く当たられました。
今思えば、そりゃそうですよね。
てんで年下が一番上手に魔法を操って、いつも先生に褒められてるんだから。
周りは優しい人ばかりじゃないという事を、この頃に学びました。
寂しくて―――ええ。ちょっと折れそうになったり………いいえ、ちょっとだけですよ。
それでもやっぱり意地悪に負けたくなくて、授業は休みませんでした。
魔法以外の教科も頑張って勉強しました。
あ、苦手過ぎた体育はなかなか思うようになりませんでしたけど。
時々『こんなに頑張って何になるんだ』と自分に聞きたくなることもありましたが、『絶対に負けてはいけない』と意地になって勉強し続けたんです。
高等科の上級生になった十六歳(通常で進めば十八歳ですが)の今年、モンスターを倒す実習試験がありました。
五人一班で森に入り、時間内にモンスターを倒して戻るというものです。
ところが運の悪いことに、振り分けられた班のうち三人が私を良く思わない人たちでした。
残りの一人はちょっと気が弱い性格で、その三人に逆らえないという様子で。
この班の顔ぶれだけで嫌な予感はしたのですけれど………。
ほら、ついてない時って更についてない事が起こるものでしょう。
森に入った私たちが遭遇したモンスターって、何だったと思います?
その森では強い部類に入るドラゴンだったんです。
いつもは森の奥にしかいないのに、その時に限って奥深くもない場所に出てきたのです。
実習で定められていたのは下級〜中級モンスターの生息範囲だったので、先生達だってきっと予想もしなかったと思います。
班の意地悪な人たちは、最初はモンスターが出たら私一人に相手をさせるつもりだったようです。
そして私が負けそうになったら助けに入る………私に『助けてください』とみんなに懇願させてから、そんな企みを持っていたらしいのですが、出てきたのがこのドラゴンですからね。
助けに入るも何も、彼らはあっという間に逃げて行きました。
足が遅い私は逃げそびれてしまったんです。
いままで倒してきた授業用の疑似モンスターとは全く違うと思い知りました。
ドラゴンが発する魔法は封印術でなんとか無効にしいくらか攻撃魔法も使ったのですが、足止めさせる程のダメージにはならず、私の残りの魔法力もこの場を逃れるには足りませんでした。
物理攻撃を受けたら、おしまいという状況でした。
ドラゴンの振り上げた爪が額をかすめ、避けきれなかった私は地面に打ち付けられました。
起き上がれなくて、次の爪が振りかざされるのがぼんやりと見えて、
「ああ。最期だ」
と思いました。
その時です。
鋭い音と光が閃いて、その恐ろしい爪が地面に転がり落ちたのです。
何が起こったかわからず唖然としている私の前に現れたのは、逞しい影(逆光だったのです!)でした。
その方は次の一撃でドラゴンにとどめをさしていました。
ドラゴンを鮮やかな剣さばきで倒したその剣士は、額から血を流す私へ上薬草を一袋投げ渡してきて、そのまま何も言わずに去っていったんです。
ええ、逆光だったから顔はよく見えませんでした。
見えませんでしたが、私はその時その瞬間に決めました。
―――もういい!
目が覚めたというか、なんというか。
こんなに意地を張り続けてきて馬鹿だったってこと。
意地悪に負けたくないから魔法使いにならなければ、と思っていたこと。
意固地になっていてほかの選択肢があることに思い至らなかったこと。
それらに気が付いたとき、魔法使い以外の未来がもう私の中にありました。
私の世界が突然広がったのです。
ええ。
額の傷を治すのも忘れたまま薬袋を握りしめて森から戻った私は、先生に魔法学校を辞める意思を伝えました。
まあ結局少しもめて数カ月後の卒業までいることにはなったのだけど、今の両親は同じく飛び級している弟のほうに熱心なので、私の進路について興味は薄くなっていたようでした。
進学する予定だった大学での高度な魔法術に未練はありません。
改めて決めた進路は剣士育成専門の短期学校です。
はい。
剣士になると決めたのです。
私を助けてくださったあの剣士のようになりたいのです。
体つきはまだ―――逞しくないけど、鍛えてゆけばきっと少しはどうにかなります。
ほかの教科だって頑張れたのです。体育も倍がんばったら追いつくと思うのです。
私はあの方のようになりたいのです。
生まれて初めて自分から『なりたい』と思ったのです。
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