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Beyond the Record  作者: しおん
『サル=ヴァリド』
7/29

海外も行ったことなかったのに初めて来る日本じゃないとこが異世界かー。どうやって帰るんだろ?まぁ今はせっかく来たんだし楽しむかな。




 「うわっ……なんだこの匂い……! カレー?いや、焼き肉?いやいや、なんか甘いのも混ざってるし……!」


 屋台から立ち上る煙が、スパイスと獣肉と果実の香りを混ぜて空気を支配していた。鼻孔をくすぐる刺激に、朝から何も食べてないことを体が思い出す。


野菜?果物?すげー色だな…串焼きか。やっぱ日本の屋台だと串焼きは肉ばっかだけど野菜串も悪くないなー。けど皮が青くて中が赤いって……どういう配色だよ。


 「おい、悠真。口開いてるぞ」

 隣を歩く陸翔が、呆れたように言う。


 「いや、だってさ……これ、全部異世界の飯だぜ? テンション上がるだろ!」


 悠真は目を輝かせながら、屋台のひとつに駆け寄った。店主はやや背が低く、耳が長く尖っている。種族名は知らないが、少なくとも人間ではない。だが、言葉は通じた。


 「これ、なんて料理なんですか?」

 悠真が指差したのは、丸くて平たい生地に、赤黒いソースと刻んだ肉が乗ったもの。見た目はピザに近いが、香りは全く違う。


 「これは〈タルマの焼き餅〉だよ。ソースは〈グルバの実〉を潰して煮詰めたもの。肉は〈スルク獣〉の肩肉だ。辛いぞ、坊主」


 「スルク……? なんか強そうな名前だな。食べてみたい!けど金無かったわ…」


 カリムが横から銀貨を一枚差し出すと、焼き餅を受け取った。

 「いいんですか?あざっす!」

 「これくらいならな。」


 手に持つと、熱がじんわりと伝わってくる。ひと口かじると、まず舌に甘みが広がり、次に辛さが追いかけてきた。肉は柔らかく、噛むたびに旨味が溢れる。


 「うまっ……! なんだこれ、うまっ!ビールほしいっ!」


 「お前、声でかいって」

 陸翔が苦笑しながら肩をすくめる。


 「いやいや、これ感動するだろ! 異世界って、もっとこう……乾パンとか、謎の粥とか、そういうのだと思ってたのに!」


 「お前の異世界観、偏ってるな。そんなんで人が生活できるわけねーだろ」



 食事とか不安だったけど、全然平気そうだな。

 ビールとかもあるのかな?そもそもアルコール類って人間以外飲むのかな?

それにこんだけ色々な人種?みたいのいて、差別とかも今のところ感じないし。外にモンスターとかいるから中で争ってる場合じゃないんだろうな…。



 悠真は焼き餅を頬張りながら、周囲を見渡した。建物は石造りで、屋根には色とりどりの布がかかっている。通りを行き交う人々の服装も様々で、民族衣装のようなものから、魔法紋様が刻まれたローブまである。中には、羽根が生えた少女や、角のある男もいた。


 「剣持ってる人いる!ファンタジーだ…最初は銅のつるぎとかなのかな……なんか、夢みたいだな」


 ぽつりと呟いた言葉に、陸翔がちらりと目を向ける。


 「剣なんて鉄の塊上手く振れねーよ。んで夢じゃないぞ。試しに蹴ってやろうか?」


 「……いや、大丈夫。お前のキック痛いんだよ!いつかお前のケツ4つにかち割ってやる…」


「ははっ、やってみろ。」


 悠真は焼き餅の最後のひと口を口に放り込みながら、歩を進めた。通りの先には広場があり、中央には巨大な噴水がそびえていた。


「ここはナイアデス広場。夜になるとさらに屋台がでてかなりの者たちの台所だな。特にお前たちのような。っとそろそろ時間だろう、見ておけ。」


そうカリムが言うと、噴水から大量の水が湧き出した。

水が空中で螺旋を描きながら流れている。重力を無視したような動きに、思わず言葉を失った。


 「魔法か……すげぇな」


 「この街は交易都市だからな。ちょうど砂漠を越える者たちの中継地点になっている。だから魔法使いも多いし、技術職もいる。いろんな種族が集まってるから、文化も混ざってるんだ」


 「街から街って遠いの??」


 「そうだな。こっちでは当たり前だから近いかどうかの価値観は難しいな。あとで他の転移者を紹介してやるから奴に聞け。」


 「他にも転移者っているんだな。オレだったら色んなとこに行ってみたくなりそうだけどなー。」


 「この世界について知ってきたら、そう迂闊な考えもしなくなる。」


 ふーん、まぁ色んな人いるからなー。あんなモンスターいたら怖い人もいるかー、ん?こんな時間に実演販売やってるのか。なんだろ??


 広場の端に並ぶ屋台を眺めながら、ふと目を止めた。ひときわ人だかりができている屋台がある。何かの実演販売のようだ。近づいてみると、店主が手に持った棒を振ると、先端から火花が散った。


 「うおっ、魔法の杖か!?」


 「いや、あれは〈火花棒〉っていう玩具だ。子供向けの魔法道具だよ。魔力がなくても使える」


 「へぇ……花火みたいだね。てか、俺も使えるのかな」


 悠真が店主に声をかけると、店主はにこやかに棒を差し出した。受け取って振ってみると、先端からパチパチと火花が飛び散った。


 「おおっ! すげぇ!」


 「気に入ったかい? 一本100ゼルだよ」


 「……ちょっと高いな」


 「高いも何もお前こっちの金なにも持ってないだろ」


 「それはそれ、これはこれ!」


 陸翔が呆れたようにため息をつく。


 「ま、いいや。今日は見るだけにしとくか」


 まぁまずはおもちゃより食事を確保しなきゃ。銀貨ってどれくらいの価値なんだろーな。まずは仕事だな。



通りを抜けると、少し静かな路地に出た。石畳の道に、風が吹き抜ける。どこからか、笛の音が聞こえてきた。


 「……こういうの、いいな」


 「何が?」


 「なんかさ、全部が新鮮で、全部が未知で……俺、飛び方忘れてたのかもな」


 「飛び方?」


 「うん。昔は、何かにワクワクするだけで、心が浮いてた。今は……それを思い出してる気がする」


 陸翔はしばらく黙っていたが、やがてぽつりと呟いた。


 「負け犬”の意味を知ってるか?負けるのが怖くて挑戦しない奴らのことだよ。ここで思い出せばいい。お前の翼が、どんな形だったか」


 悠真は目を細めて、空を見上げた。青空の下、異世界の街が広がっている。人々の声、匂い、色彩、すべてが彼を包み込んでいた。


 「またなんかの映画のセリフ?好きだなー……よし。まずは、もっとこの世界を知らなきゃな。てことでカリムさん紹介よろしくお願いしまーす!」


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